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第二幕 十九話 The Second Act Start/傷ついた仲間たち

11/5 一部改稿しました。

「それで、これは一体どういうわけだ?」


 スーペリアーズ・マンションに戻って来た鮮夜の最初の一言がそれだった。

 鮮夜たちとは別行動をしていてたダブリン組のメンバーが、包帯やら何やらでボロボロの状態になっていたのだ。

 顔の下半分が見えていてもマスクを被り続けているスプレッドレイザーなど、最早、意地としか言えないだろう。


「どうもこうもないさ。ボクたちはドクターと一緒にダブリンで見つけたインシデンツの痕跡を追っていたんだ。そこで見つかるのは抉られた巨大な傷と大量の血痕……」


 スプレッドレイザーの説明を鮮夜が受けている反対側では、カウチに座る傷を負った桜花の前にセタンタが立っていた。


「また、随分とやられたもんだな。桜花」

「……言われると思ってた」


 腕を抑えながら答える桜花。

 その仕草から自然と彼女の胸が寄せられる。

 ちゃっかり視界の端にそれを捉えつつ、セタンタは話を続けた。


「お前の能力ならあの獅子野郎に後れを取ることはないだろうに」

「わたしが一体、誰といたと思うんだ?」


「スプレッド・レイザーはこちらの指示を待たずに攻撃を開始するし、ドクターは防御しかできない」

「けど、ドクターなら機転で何かするだろう?」

「それは周りに利用できるものがある場合。わたしたちがあのヴィランと遭遇したのは、何もない広場だったからな」


 なるほど、とセタンタはそこまでの内容で納得したようだ。

 獅子のような男――エティエンヌ=ド・ヴィニョルのことは実際に遭遇したセタンタもできる、と感じた相手だった。

 あの巨大戦斧と腕力に目が行きがちだが、彼の身体能力自体がずば抜けて高いのだろう。


「ちょろちょろ動くスプレッド・レイザーは簡単に捕まって地面に叩きつけられて気を失い、わたしはドクターを守りながら防戦一方になってしまった」

「そりゃ、災難だったな」


 おまえと一緒なら、そう桜花は小さく呟いた。

 セタンタが小さく微笑む。

 桜花の頭にそっと手を置いて優しく撫でてやる。


「な、なんだ?」

「いや、よくやったよ。ドクターがやられたら俺たちにとって大打撃になっていたわけだからな」


 うるさい、と言いながらも何だか嬉しそうな桜花だった。


「あのー、お二人さん?」


 そんなセタンタと桜花にスプレッド・レイザーが話しかける。


「それって僕に失礼なんじゃない? 僕、かなりやられてたんですけど?」

「お前は何だかんだ言って、いっつも窮地を乗り越えるだろ。しぶといからな」

「何だか褒められてるような気がしないけど」


 実際褒めてはいないだろうと鮮夜は会話を聞いて思っていた。


「で、肝心のドクターはどこにいるんだ?」

「それがさ、戻って応急処置を受けたらすぐにラボに行って閉じこもっちゃってさ。僕も何か手伝おうかって声をかけたんだけど、すぐに戻ってくるからいいって言われて」


 鮮夜はドクターが何かを掴んだのかもしれないと予想する。

 そこへドアーが開き、頬に大きめのバンドエイドを張ったドクターが入って来た。


「ドクター……大丈夫ですか?」


 部屋の隅でアリアと座っていたカルナが気遣う。

 ドクターは手で平気だ、という合図を送ってメンバー全員を見渡せる位置につく。


「みんな、今回は大変だったね。そして、桜花、それにスプレッド・レイザー。君たちのおかげで僕はほとんど無傷だった。本当にありがとう」

「気にしないでよ。ドクターが戦闘タイプじゃないってのは、僕たちちゃんと理解してるからね」


 フォローするスプレッド・レイザーに対して、桜花は、相性は今一つだったけど、と付け足した。

 ドクターもその皮肉に間違いないと返した。


「それで、何かわかったのかドクター?」

「ああ、鮮夜。君たちの方では神隠しの犯人に会ったんだね?」

「おう。確か、ジル……何とかって名前だったよな?」

「ジル=ド・モンモランシ・ラヴァルだよ、クー・フーリン」


 カルナの言葉にそれだと指を鳴らしたセタンタ。


「そして、あのエティエンヌ=ド・ヴィニョルにも会ったと」

「そうだ。オレとクー、カルナにアリアは言葉を交わしただけだったけどな」


 本当なら戦いたかった。

 あの場で始末はできなくとも、せめてさらわれた子供の居場所を知る必要があったからだ。

 思い返すと悔しさがこみ上げてくるのだろう。

 鮮夜は拳を強く握りしめていた。


「うん。みんなももう気づいているだろうが、今回のインシデントの犯人は神現者だ。しかもエティエンヌ=ド・ヴィニョルとジル=ド・モンモランシ・ラヴァルという本来なら栄光ある騎士であるはずの二人だ」


 騎士という言葉にアリアが反応する。

 時代は違えど同じく騎士道精神を胸に戦ったのだろうことは理解できたからだ。

 ドクターの言うように本来なら人々を守る者たちが何故、あのような凄惨な行いをしたのか。


「僕は鮮夜から報告を受けてすぐに《JASMINE》と調べた。彼らがこの二〇三六年の地球で何をしようとしているのかを」

「何かわかったのか?」


 鮮夜の眼をしっかりと見つめて、ドクターは頷いた。


「エティエンヌが発したという〝彼女〟というワード。それが鍵だ」

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