表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/290

幕間――III Villains Side/For My Lady

10/14 一部改稿しました。

 鮮夜たちとの邂逅の後、エティエンヌとジルは転移を行い、彼らが拠点としている廃墟へと戻ってきた。

 人工的な明かりなど何一つ無い暗闇の部屋には、すすり泣く声や助けを呼ぶ声がこだましていた。

 何の声かは聞くまでもない。

 彼らの起こしたインシデンツを考えれば、自ずとその正体は明らかだ。


「エティエンヌ。良かったのですか? あそこで彼らを殺しておかないと、後々面倒なのでは?」

「ジル。奴らに言った通り、何よりも優先されるのは彼女の救済だ。奴らが面倒なのは理解している。だが、奴らにかまけて彼女の救済が遅れては意味がない。そんなことになれば、一体何のために俺たちは蘇ったんだ」


 ジルはエティエンヌの話を噛みしめて、ゆっくりと頷いた。


「それもそうですな」


 前を歩いていたエティエンヌが足を止め、ジルへと振り向く。


「ところでジル。生贄の方は十分なのか? 奴らに邪魔をされたのだろう」

「問題はないですよ。質より量に変更しましたが、数ならば御覧の通りです」


 泣き声、嗚咽、助けてほしいという懇願の声が部屋に響く。

 それをまるで、クラシックの名曲を聴いているかのように、ジルは酔いしれた表情で聞いていた。

 しかし、とジルは口を開いた。


「〝器の問題〟がまだあります」


 エティエンヌが唸る。


「それについてはダブリンを探し回ったが駄目だった。さっきの奴らの仲間らしき者とも戦ったが、期待外れだった」


 けれど、とエティエンヌが付け足す。

 心から探し求めたものに出会ったのだ、と突然喜び出したのだ。


「随分とごきげんですね。器がなかったら、私たちの目的は果たせないと言うのに」


 すまない。そうエティエンヌは言って安心するがいい、とジルに断言した。


「奴らの中に見つけたんだ。お前は気づかなかったのか?」

「それは?」

「奴らの中に一人いた。あの女だ」


 ジルは口に指を当ててうーん、と少し考えた後、ああ、と気づいた。


「あの女ですか。確かに美しかったですねぇ。とても嬲りたい衝動をそそられるほどに。しかも魔術の素養もあるようでした」

「俺の眼に狂いはない。あれこそ完璧な器だ。あの女を手中に収めれば、必ず彼女を……。ジル、あれを手に入れる必要がある」

「フフッ。それなら、奴らの相手をするのは思ったよりも早そうですね」


 ああ、と頷くエティエンヌ。


「待っていてくれ。俺たちが必ず、今度こそ君を救ってみせるから」


 どこまでも、どこまでも。

 高く、高く伸びている空間。

 天井がまるで見えない。

 エティエンヌは遙か彼方。

 かつて信じた彼女のことを想い、そんな言葉を紡いだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ