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第一幕 十六話 戦闘開始/鮮夜とセタンタ

一部改稿しました。

ようやく体調不良が回復してきたので再開します。

「カルナ! 何があった!」


 視線は黒ローブを見据えたまま、鮮夜はカルナに状況を確認した。


「それがわからないんだ。アリアがいきなり震えて――」


 しがみつくアリアを抱きしめているカルナ。

 カルナの温もりに安心し、落ち着きを取り戻したのかアリアの震えが収まっていく。


「当てられたか」

「どういう意味だ、クー」

「鮮夜、お前も奴から嫌な感じはするだろう?」


 明確に説明することはできないが、セタンタの言うように、鮮夜も黒ローブに対して言いようのない嫌悪感を抱いていた。


「たぶんアリアは、あの野郎に俺たちが感じている以上の感覚を叩きつけられたんだろうよ」

「そうなのか? アリア」


 鮮夜とセタンタ。二人の話を聞いていたカルナがアリアに問う。


「大丈夫だから。何も怖く無いからな」


 優しい言葉をアリアに伝える。

 カルナの想い。温もり。その全てがアリアから不安と恐怖を払拭させる。

 そうして、カルナに抱き着いたまま、アリアは口を開いた。


「あの人はとても危険な人物よ。いえ、人物というよりも邪悪な〝何か〟よ」

「一体どういう意味?」


 アリアは説明する。

 本当に一瞬の出来事だった。

 黒ローブと視線が交錯したのだとアリアは言った。

 刹那、アリアの脳裏に、彼女が見たことのないはずの光景がフラッシュバックした。

 黒ローブによって連れ去れた男の子たち。どの子も恐怖で泣きわめいていた。

 暗く、暗く、とても暗い建物の中。

 壁にはたくさんの檻があり、子供の姿は見えはしないが、中から泣き声が聞こえていた。

 黒ローブに連れられて魔術陣のようなものの中央に立たされる男の子たち。

 右手に持つ本の呪文を唱えて、左手には剣を持っていた。

 呪文が経過していくごとに、魔術陣の中では男の子たちが無残に殺されていく。

 それも様々な方法で。

 

 見ていられなかった。

 助けたかった。

 救いたかった。


 けれど、これは現実ではない。黒ローブがアリアに見せている幻影。

 アリアはただ、成す術もなく、凄惨な光景を永遠と感じさせられていたのだ。

 彼女は長い、長い時間、その光景を見ていた気がすると告げて――。


「アイツは……けだものよ」


 アリアの話を聞き、悪趣味が、と鮮夜は心で吐き捨て、黒ローブはここで何とかしなくてはならないと再認識する。

 鮮夜はカルナに対して騎士王様をしっかり守っていろと指示を出した。


「クー、いけると思うか?」


 鮮夜の言葉にセタンタは眉を上げる。


「捕まえるって意味なら答えはノーだ。だが、殺せるかという意味ならイエスだな」


 ただし、とセタンタは付け加える。


「奴は黒魔術を使う。初撃を防がれた場合はまずいな」

「なら、オレが奴の注意を引きつけるその間にお前の槍でならどうだ」

「難しいな。戦闘中ならまだしも、ここは住宅街の路地。一本道だ。奴には俺たちの動きが見えてる。逆もまた然りだけどな。俺が『ゲイ・ボルグ』を呼び、奴に放つまでの間に魔術を行使される可能性も高い」

「つまり、槍じゃなくて剣で殺すってことだな」

「そうなる」


 なら、それで構わないと鮮夜は言い放つ。

 最早、目の前の敵を野放しにしておくことなどできはしない。

 左手に持つ刀の柄のみの物体を力いっぱい握りしめて詞を唱える。


「リベラ・エンゲイジ!」


 鮮夜の声が闇夜のカーディフに木霊する。

 黒ローブも何かが起きるのだろうと判断したのか一歩後ずさった。

 鮮夜の左手に握られていた柄状の物体に変化が現れた。

 鍔から無数の破片が次々に放出され、瞬く間に形を成していく。

 鮮夜が力強く振り払うと、彼の左手には一本の見事な造りをした刀が握られていた。

 月明かりに照らされた刃は妖しく輝きを反射する。


「『ナハト・ノエル』!」


 これこそアヴェンジャーである鮮夜の武器『ナハト・ノエル』。

 見た目は普通の日本刀のように思えるが、これはドクターによって造りだされた対神秘用の刀。

 悪しき神秘の存在と対等に戦える鮮夜の相棒だ。


「これはこれは。今のは魔術ではないですねぇ。それも科学だと?」

「人間の技術と異星人の技術の集大成さ」


 黒ローブに言い放つ鮮夜は自信に満ちている様子だ。


「おしっ、じゃあ俺もいきますかっ!」


 鮮夜に続き、セタンタは右手で空中に文字を描く。

 文字は淡い青緑色の光を帯びているのか闇夜でもはっきりと見えた。

 オガム文字。

 今や現代ではどんな魔術士でも使うことができない始まりのルーン。

 セタンタはルーン・オガムを描くと右手でそれを握りしめる。

 そして、再び手を開くと文字は星のような輝きを放ち形を変えていく。

 セタンタが光を掴んで薙ぎ払うと彼の右手には一振りの刀。いや、剣が握られていた。

 鮮夜の『ナハト・ノエル』のように片刃だが刀ではなく剣。

 一般的な剣よりも刀身は長くまっすぐで、柄を挟んで柄頭からも短いがこちらは両刃の刀身があった。


「『カサド・ドヴァッハ』!」


 正式名称、恐槍剣『カサド・ドヴァッハ』。

 この剣で斬られる。或いは貫かれた相手は自身が抱く恐怖に心が支配されてしまい、思うように戦うことができなくなるという恐れの槍剣だ。

 また、斬られれば斬られるほど。貫かれれば貫かれるほど恐怖は増大していく。

 武器を展開した鮮夜と、『カサド・ドヴァッハ』をくるりと逆手に持つセタンタの纏う空気が一瞬で変わる。

 後ろで見守っているカルナとアリアにも十分伝わるその感じは、まさに幾多もの戦いをくぐり抜けて来たと戦士と言っても過言ではないだろう。

 いいや違う。


 彼らは――ヒーローだ。


「ふむ。これは少々本気でいかねばならないというわけですね」


 鮮夜とセタンタが臨戦態勢に入ったのは黒ローブにもはっきりと見えていて理解できているはず。

 なのに、敵はまるでこの状況に対して微塵も自分が不利とは思っていない様子だ。

 それどころか、まるで楽しんでいるのか。


「それでは――」


 左腕を天に翳す黒ローブ。

 鮮夜たちがついに神隠しの元凶と戦闘を開始する。

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