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双神八天と九花(ここのか)の騎士  作者: 亜桜蝶々
機壊と星屑の降る丘
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潜入と応戦・下

 その部屋で八人の目にまず飛び込んできたのは、おびただしい数のモニターと中央にある巨大な赤い人型の物体。いや、人型というより肩幅(?)などからしてゴリラの方が近いとも言えるのだが。


「……親玉!?」

「わかんねぇ……動かない……か。もうすこし近づこう」


 ジリジリと巨大な影に近づく八人。ふと、アリサが点滅する周囲のモニターを見る。


「……これは……機壊達の、設計図……!?」

「……え!?」


 無数のモニターに表示されているのは複雑な図面。その中にイルミンスールので戦った敵の図面なども表示されていた。斧を持ったような機壊、獣型の機壊。見覚えのあるモノが非常に多い。

 アリサは見渡して他のモニターを見る。様々な数値や文字が入り乱れるなか、とある結論に至った。


「まさか……ここって……機壊達の生産工場……じゃねぇか……?」

「「はぁ!?」」


 アリサの推理に思わず呆れた声を漏らすレオン以外の六人。特に機械オンチを広言しているようなマオウに至っては、どうしようもないモノを見る様な目つきまでおまけされていた。


「何を馬鹿なこと……」

「いや……アリサの言うとおりだ。ここは工場だ。今まで戦ったやつとおんなじ姿の図面もいくつかある」


 ドワーフとして機械図面などの知識もある程度保有しているレオンは、一人アリサの意見に同意を示す。


「んな、馬鹿な……」


 アルマスの至極最もな呆れの声である。機械という性質上、どこかに敵を生産している工場があるとは思われていたが。こんな辺境の地の下にあったというのだから。地上にドドンと巨大な工場があってそこに乗り込んでいく……というような展開を想像していたものだが、拍子抜けも良い所である。

 今まで見つかっていなかったのだから地上ではなく地下というのは至極当然の話ではあるが。


「だ、だったら、はやく止めないと!」

「つっても本当にあるのか……止める方法とか……」

「あ、あそこ!」


 マロンが指さした方向には、様々なボタンや計器が付いたコンソールがあった。八人はそこに向かって走る。すると、


「 緊急事態発生。緊急事態発生。工場内部に侵入者。ただちに機密データの消去、及び侵入者の排除を開始します。 」


 と、どこからともなくアナウンスが流れた。


「し、侵入者!? て、てか、データを消すって……」

「良いから! ひとまず走れ!!」


 全力疾走でコンソールへと駆ける八人。すると、視界の端で赤い物が動きだしたのが見えた。マオウを中心として一度立ち止まった瞬間、目の前を赤い大質量が通りすぎていった。


「うわ!」

「……最強の敵のお出ましってか?」


 赤い機械はギギギと音をたてて数メートル離れた場所に止まり、そしてゆっくりと花の騎士達に振り向く。頭部のような場所から蒸気が勢いよく飛び出し、熱気が漂ってくる。


「どうする……? あいつが親玉なら倒せばいいが……相手をしてたらそのぶんデータを取り出すのが難しくなるぞ……」

「アリサは情報をとりに行って……! アイツは私達が……」


 そう、リリアが言った瞬間の事である。部屋の奥の扉が開いた。そこから飛び出してきたのは見た目が真新しい機壊達。挟撃するような形で現れたため、アリサがクラッキング作業に集中していてはやられてしまうのは必至であろう。


「うっそ……」

「「……あの赤いやつは俺(私)に任せろ(て)!!」」


 見事に声がハモるマオウとシャルロッテ。ムッと互いに顔を見合わせる。しかし身長差のせいで見下し、見上げる形となるためシャルロッテは首が疲れると、すぐに顔を逸らした。


「わかった! 頼んだわ、マオウ。シャリー」

「早く倒すから! 持ちこたえてね!」


 仲間を信頼した六人は、一斉にそれぞれの場所へと駆けだす。

 赤い機壊の方のような部分から伸びた触手が、二人のもとに迫ってくる。


「こなクソが!!」

「邪魔!!」


 二人は息ピッタリに攻撃を繰り出して触手を破壊した。またムッと睨みあうが一瞬で止め、それぞれ得物を構えなおして赤い機壊と向き直る。


「早く倒しちまうか……」

「どっちが先に倒すか勝負!」

「そうだな。お前と俺のどっちが強えか決めてねぇからな」


 そう言って武器を呼び出すと、二人は駆けだした。


 赤い機壊は両腕を二人に向けた。指の先端が空洞になり、そこから銃が発射される。マオウはハルバードの腹を巨大化させて盾のようにして防ぎながら突き進み、シャルロッテは軌道から避けて赤い機械に迫る。


 二人と機壊の差、およそ十メートル。機壊は効果が薄いと見るや戦法を変え、全身からおびただしい数の触手を出して二人に攻撃した。


 流石の二人も立ちどまって触手を迎え撃つ。


 触手の先端には鋭い刃がついており、当たればただでは済まないと判断したのだ。二人はそれぞれの得物を乱舞して、迫り来るそれらを撃ち落としていく。


「はぁ! やぁ! えい!!」


 シャルロッテが『風槍エアーランス』を発動させながら戦う。横ではマオウが『毒斧ポイズンアックス』を。


 突き、突き、叩きつけ。順調に触手を破壊していくシャルロッテ。だが、迫ってくる一本の触手を破壊し損ねる。


(しまっ……!)


 シャルロッテが傷を受けることを想像した瞬間、触手が横から叩き斬られる。シャルロッテが横を向くと、目の前の触手を攻撃したマオウの姿。そして、そのマオウを狙う赤い金属の触手。

 シャルロッテは自身の持つ最速をもってその触手を突き壊した。

 マオウが驚嘆の表情でそれを見る。


「……どうやら、俺が助けたってのはチャラになった見たいだな」

「そう簡単に私に借りは作れないよ!」


 二人は顔を見合わせるとニヤリと笑った。そして、自分の目の前の触手を破壊する。


「チビに負けるわけにゃいかねぇからなぁ!」

「筋肉馬鹿になんて負けないもんね!」


 ◆◇◆◇


 地面に寝転がる七人。皆が肩で息をしていた。アリサは例外として、全員が十分間ほど全力で動き続けていたのだから無理はない。


「す、すげぇな……結局……マオウと、シャリー……二人だけであれを倒した挙句、こっちの手伝いまでするとか……」


 体力に自信のあるアルマスですら、半分呆れて半分驚く体力の二人。シャルロッテとマオウである。


「おい……チビ女。お前、何体倒した」

「にじゅうろくー……」

「っち……同じ数かよ……」

「でも、あの赤いやつのとどめ刺したの私だから27で私の勝ちねー……」


 マオウは飛び起きて怒鳴り声をあげる。


「なに言ってやがる! 倒したのは俺だ! テメェ人の手柄を奪ってんじゃねぇぞ!」

「絶対私だし!!」

「俺だ!!」

「……は、ははは……まだ、喧嘩する余力もあんのかよ……半端ねぇな……」


 二人がギャンギャンと喧嘩するなか、アリサは一心不乱にパソコンとコンソールを行き来する。徐々にモニターから図面が消えていき、もう残っているのはほんの少しだけになった。


 そして、モニターから図面の一切が消えたところでアリサは伸びをした。


「アリサ、何か情報はとれたの……?」


 地面に仰向けでぐったりと寝転んでいたゼルレイシエルが、


「……親玉の情報は真っ先に消されたみたいで、分からなかったが……かなり有用な情報は手に入れた……と思う」

「おぉぉ……!」


 アリサの成果報告に手放しで喜ぶ七人。そこに、大きな声……が響いた。


「 情報消去完了。これより、自爆へと以降します。研究員の方は可及的すみやかに脱出してください。繰り返します…… 」


 凍りつく八人。数瞬の間を置き、同じセリフで八人の声が重なった。


「「……はぁ!?」」

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