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記憶障害

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「おい、美菜子」



良雄が、右隣の美菜子を、揺さぶり起こした。



「うーん、もう少し寝かせて……」



「なんでお前が、ここにいるんだ」



「だって、何もしないから寝ていいって……少し期待していたんだけど……」



美菜子が残念そうに呟いた。




「ところで、俺が連れてきた女は何処だ」



問い詰めるような口調で、良雄が呟く。



「女って誰よ」



怪訝(けげん)そうな顔を、隠しもせず美菜子が、そう言った。



「何を言ってるんだ

昨夜一緒に、食事をしたじゃないか……」



「ねぇ、まだ寝ぼけているの」



「進に聞いてみる」



良雄は、そう言いながらベッドから起きて、ドアを開けて出て行った。



部屋を出て進の部屋へ行こうとして、何気なくポケットに手を突っ込んだ。



良雄は指先に触れているシールを、ポケットから出して眺めた。



すると突然ロックが解除されたみたいに、

昨日の屋上での出来事が、まざまざと脳裏に蘇る。



「なんで女生徒がパンを……俺達に」


進と女生徒6人を交互に見遣りながら、俺は呟いていた。



「そ、それはよぉ。

あ、あれだよ。

俺達のファンに、いや友達になりたい。

来る者拒まずという……」



しどろもどろの進の返答に、

「解った。

一緒に食べよう」


それで俺は、


「個人的に付き合う気はない。

友達としてなら話は別だ。


俺の友達は現在、進しかいない。


俺の友達になるには一緒に行動しなければならないが、君達に出来るか?」


って、突き放した言い方をしたな。



「例えば、どんな?」



女生徒の一人が尋ねた。



「ゲーセンに行こうかとか、カラオケに行こうぜという話になった時に、

全ての用事をキャンセルして、ついてこれるかどうかだ。


それから、よく進とは抱き合って背中を叩きながら、

頑張ろうぜとかやるけど、それに抵抗がないかだ。


それには男女間の感情が介在すれば無理な話だからな。


それはそうだろう、自分の好きな人が、他の人と抱き合ったりキスしたりするのは嫌だろう」



良雄が女生徒を見回して言った。



「キ、キスですか?」



一人の女生徒が、素っ頓狂な声を出した。



「そんなにビックリするなよ」



進を抱き寄せて、わざとほっぺにキスをした。


進も悪のりして


「うーん、好きにして」


と、身をよじらせて悶えていたから、


「いい加減にしろ」


って頭をゴツンとした感触を右手が覚えている。



女生徒達は、呆れ返ってぞろぞろと去って行ったが、一人だけ残った女生徒がいた。



隣のクラスの橘明美。



一週間前の放課後、進を捜して、たまたま通りかかった音楽教室。



教室から漏れてきたピアノの音に魅せられ、ドアを少し開けた。



心を揺さぶるような、幻想即興曲を奏でていた女生徒の横顔は、

ちらっと見ただけだが、何故か心の片隅に残っている。



その女生徒に、明美が何となく似ているような気がした。











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