ハロウィンへようこそ!
空にたくさんの星が煌き続ける。そんな夜の日、
――子ども達の楽しげな声と共に長い長い列がゆっくりと前へと進む。
「パーティ!!」
「遅いぞ~」
「むぐっドーナツ美味しい……」
「アォーーーーーーン!!」
「ボロボロこぼすなよ!!」
「待ってよおおおおおおっ!」
「おーいっあんまり走るとお化けに食べられちゃうぞー?」
「ハロウィン♪ハロウィン♪トリックオアトリート♪」
お菓子を目当てに家を訪ねて歩く彼らの表情はとてもニコニコとして楽しそうだ。
子ども達が一軒目の家を訪ねた後、
一つの影が列に加わった。
その影の主は一人の少女。
少女の手には一冊のスケッチブック。
もう片方には色取り取りのクレヨンが入った袋を持っていた。
その少女は、
列に並んでいる子ども達とは違って、
静かに辺りを見渡した後、
賑っている町並みやランタン、
お菓子を求める長い列を楽しそうに真っ白な頁へと書いていく。
そうしている内に子ども達は二軒目の家を訪ね終わって居て、
気付けば少女の後ろには、
永遠を求める黒い青年、
死を恐れゆく少女、
忘却の水底に揺れる少年、
ピコピコと踊りながら呪文を唱える可愛らしい魔神
丘で微笑む将軍と最愛の人、
互いに唄う二人の詩人
海辺で歌い踊る美しい人魚
繋いだ手に勇気の印を持つ二人の少年と少女、
白い鴉と魔獣の役をしながら微笑む三人の家族、
娘の誕生日に大きな絵本を贈る仮面を付けた父、
絵本を手に取り嬉しそうに微笑む白髪の娘、
二つの人形と幸せそうに世界を巡る冬の青年、
手を取り合いながら星座をなぞる紫の狼と星の巫女の兄妹、
暖かい光をを浴びながら母親と恋人への愛しさを胸に微笑む一人の青年、
一度は息絶えながらも蘇生し大切な人と一人の天使を愛でる青年。
機械の身体で有りながら笑顔で愛する事を知った少女。
その他にも片手に松葉杖を持ち、
もう片方で最愛の女性の手を握り狼の衣装を着る少年を優しく見守る青年や、
オレンジ色の髪を持つ少年の優しそうな両親も居た。
長い列の中で最後尾に黒い影を見つけた、
オレンジ色の少年は、
その影に笑顔で向かって走り出す。
黒い影が晴れて一人の男性の姿が見えた時、
ぱあっと咲いたまんべんの笑みのまま少年は彼にこう言った。
「ハロウィンへようこそ!
お菓子をくれないとたべちゃうぞおおおおっ!」
少年は男性の手を握って駆け出し、
男性はにこりと笑い付いて行く。
ハロウィンはまだ始まったばかりなのだから。