「お隣さんに年賀状なんて、郵便屋さんの手間も考えなさい。」
「年賀状送りたいから住所教えて!」
春香が今年も律儀にクラスメイトに聞き込みをしている。
彼女の家は今年も年賀状を作るようだ。
「ええ〜。私もう年賀状作ってないんだけど〜。」
なんて言いながら聞かれた女子は、春香に住所を書いて渡していた。
「ずっと仲良くしたい人には送りたいんだよ。」
そんなことを言葉を恥ずかしげもなく春香は言い、また別の女子に聞き込みを続けている。
春香とは家も隣で幼馴染だというのに一度も年賀状なんてもらったことがないと、大賀は毎年この時期になると思う。
以前、春香に「俺には年賀状くれないの?」なんて聞いたときには、
「お隣さんに年賀状なんて、郵便屋さんの手間も考えなさい!別にいらないでしょ。」
なんて言われてしまったことがある。
別に年賀状がほしいわけではないのだが、何故か彼女の先程の言葉が耳に残っていた。
そうして二学期最終日が終わり、あっという間に年が明けた。
家族に新年の挨拶を済ませた大賀は神社まで日課のランニングをして、そのまま初詣をしようと家を出た。
神社には多くの人がいて、ピークは過ぎているようだが、初詣の行列ができていた。
大賀は列がもう少し落ち着いてから詣ることにし、参道の途中にある屋台で甘酒を買った。
屋台の脇で甘酒を飲みながら、通り過ぎる人を眺めていると突然横から声をかけられた。
「や。あけましておめでとう。もう初詣は済ませたの?」
声の主は寒さのせいか頬を紅くした春香だった。
それになんとなく少し息を切らしているように見える。
「あけましておめでとう。いや、少しすいてから詣ろうとしてたからまだだよ。」
「じゃ、一緒に詣ろうよ。」
二人は並んで賽銭箱に向かって歩き出した。
走って上がった脈拍がなかなか治らない。
「さっき大賀のお母さん達からね、大賀は神社に走っていったって聞いて、私も走ってきたんだよ。」
「うちからだと程良い距離だし、新年早々いい運動になったろ。」
「うん。毎日走ってる大賀は偉いと思うよ、、、そういえばさ、前に年賀状の話したの覚えてる?」
「郵便屋さんが可哀想とか言ったやつだろ。とか言いながら、クラスの女子には送ってるじゃんか。」
「まあ、みんなとは多分元旦には会わないからね。大賀とはさ、郵便屋さんが来るより早く挨拶できるでしょ。あらためてさ、今年もよろしくね。」
「こちらこそ今年もよろしく。」
今年も良い一年になりますように。
大賀は賽銭を投げ入れ、静かに願った。




