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【第二章完結】悪の貴族は美しき散り様を望む〜もしかして、君たちループしてる?〜  作者: 綾丸湖
第二章

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48. 迷宮探索


 剣を振り、狼型の魔獣を屠る。

 周辺には複数の魔獣の亡骸が転がっている。


 迷宮都市に到着してから数日が経過し、都市での情報収集をあらかた終えた僕は迷宮に潜っていた。まあ、情報収集を終えたといっても、すでに知っている知識の確認をしていただけだ。


 セブファンでは、身体の異常を全て回復するアイテムが存在していた。神秘の霊薬というもので、その霊薬を作るために必要な素材が迷宮にいる魔獣から採れる。僕の状態に効果があるのかはわからないが、ひとまずは目指してみようと思っている。


 探索者から聞いた話では、僕が探している魔獣は迷宮で確認されたことがあるらしい。しかし、ゲームと同じく深い階層で稀に出現するといった感じなので、今は地道に迷宮探索を進めているところだ。


「……あった」


 見つけたのは、迷宮のだいたい五階層ごとに設置してある転送陣だ。この転送陣に一度登録すれば、入り口の転送陣と行き来できるようになっている。これは探索者組合が管理しているそうだ。ゲームでは便利だなー、くらいにしか思っていなかったが、これがなければ迷宮探索なんて無理だと思う。まあ、深層までいくと転送陣の設置は困難となっているらしいが。


 現在の階層は十五階層だ。

 迷宮は十階層ごとに環境や出現する魔獣が変わっていく。今のところ順調だが、焦りは禁物だ。特に今は一人しかいないのだから、万全を期して今日は帰還しよう。もうすぐ外は夜になるころだ。


 ……


「よーぅ、サリファ! 今帰ってきたのかー?」


 組合へと入る直前。

 声をかけてきたのは、B級探索者のカイサ。僕が探索者として登録した時に、推薦人になってくれた一人だ。剣と盾を持った長身の男性で、いかにも探索者といった格好をしている。たぶん年齢は同じくらいだと思う。


「……うん。カイサも?」


「そーなんだよ! いやー、聞いてくれよ実はさぁー……」


 どうやら探索でミスをしでかしたらしい。

 確認不足で転移トラップを踏み、一人だけ別の階層に飛ばされたのだとか。なんとか戻ってはこれたものの、パーティーメンバーにめちゃくちゃ怒られたのだそうだ。


「サリファは一人で潜ってるんだろー? 気をつけとけよー。それか、パーティー組むとか、どっかのクランに入るのでもいいと思うぞ! ウチに入るなら歓迎するぜー!」


「……うーん、考えとくよ」


 クランというのは探索者たちによって結成される組織で、メンバー同士で協力して迷宮探索を行っている。クランに入ることによる恩恵はたくさんあると思うが、しがらみもできてしまう。僕としては自由に動きたいので、今のところ入る予定はない。


「そうかー。まあ、入る気になったらいつでも言ってくれよなー!」


 そう言って、カイサは去っていった。

 なんというか、とても気さくでいい人だと思う。組合で出会ってから、何かと気にかけてくれている。親しみやすく人望があり、その上若くしてA級間近の実力者ということでとても人気があるらしい。彼がマスターを務めるクランは、新進気鋭の有力クランとして注目を集めているそうだ。


 

 さて、立ち話をしてしまったが依頼達成の報告をしてしまおう。そう思い、組合へと入る。

 

「おぉ、サリファくんじゃないかぁ。ちょうどいいところに来たねぇ。ちょっと話を聞いてくれない?」


「……どうしました?」


 建物に入ったところで、また声をかけられた。椅子にだらっと座って手招きしているのは、A級探索者であるミリーシャだ。カイサと同じく、僕の推薦人になってくれた人でもある。ゆったりしたローブを着て、大きな魔晶石をはめ込んだ杖を持っているので、一目見て魔術師だとわかる。


「それがねぇ、ウチのクランの前衛の子が怪我しちゃったんだよぉ。それで、人手が足りなくなっちゃってねぇ……」


 最高位のA級探索者であるミリーシャは、迷宮都市でもトップクラスのクランのマスターを務めている。そのクランはかなりの実力者揃いであるのだが、女性だけのクランというところでも有名だ。なんでも、ミリーシャの趣味なのだとか。


「それで、サリファくんに助っ人をお願いできないかと思ってねぇ」


 ……ん?

 聞き間違いだろうか。


「……僕が、助っ人を?」


「うん、そうだよぉ。クランに入ってほしいとまでは言わないからさぁ、ちょっとだけ手伝ってくれないかなぁ? 報酬は弾むよぉ?」


 聞き間違いではなかった。

 いや、しかし……。


「……僕、男なんですけど」

 

「あ、そこを気にしてたのぉ? サリファくんはお人形さんみたいに綺麗な顔してるから全然問題ないよぉ」

 

 めちゃくちゃいい笑顔で言い切られてしまった。いや、ミリーシャがいいなら、いいのだけど……。それにしても、助っ人か。二、三日くらいなら、別に構わないかな。トップクランの人たちを見られるのは今後の参考になりそうだ。


「……僕でいいなら、構いません」


「おぉ? ほんとにぃ? 言ってみるもんだねぇ。それじゃあ、また連絡するからよろしくねぇ」


 そう言うと、ミリーシャは手を振って組合から出ていった。もしかして、わざわざ僕を待っていたのだろうか。ここの人たちには実力を過大評価されている気がするのだが、気のせいだろうか。


 さてさて、またお喋りしてしまったが今度こそ依頼達成の報告をして帰ろう。さっきからお腹が空いている。今日はどこで食べようかな。


 ……


「お! サリファじゃねぇか!」


「……こんばんは、ジャネル」


 報告を終え、良さげな料理屋に入ろうとしていたところで声をかけられた。今日はよく人に声をかけられるな。


「サリファも今から晩飯か? この店を選ぶとはなかなか見る目があるな! 俺はここの常連なんだ! 奢ってやるから入ろうぜ!」


「……ご馳走になります」


 奢ってくれるらしいので、連れ立って店に入る。筋肉質で快活な見た目通り、兄貴分的な立ち振る舞いは頼もしさを感じさせる。面倒見のいい彼はA級探索者であり、組合長の弟子なのだとか。流石の筋肉だ。


「この店はなぁ、肉が美味いんだよ! サリファはもっと肉を食え! 筋肉がつかねぇぞ!?」


 ハッハッハッ、と豪快に笑いながら巨大なお肉を勧めてくる。オススメしてくるだけあって、とても美味しそうだ。ちょっと量がアレだけど。


「最近どうよ? ずっと一人で潜ってんのか? 一人だと危ねぇと思うんだがなぁ」


 お肉を頬張っていると、ジャネルがそう聞いてきた。なんだかみんな僕のことを心配してくれているみたいだな。その心遣いは素直にありがたい。


「……今度、ミリーシャのクランを手伝うことになりました」


「おぉ!? 意外な名前が出てきたな!? そうか、あいつ別に男でもいいのか……」


 しげしげとこちらの顔を見ている。

 うーん、そんなに女性っぽい顔立ちではないと思うんだけどなぁ。


 そんなことを思っていると、ジャネルが笑い出した。


「クハハハハッ! いやぁ、面白ぇなぁ! お前さんを最初見た時は、御伽話の魔王でも現れたのかと思ったがな! 他の奴らとも上手くやってるみたいだし良かった良かった!」


 本当に嬉しそうにしているあたり、人柄の良さが見てとれる。探索者ってもっと荒々しいイメージだったが、そうでない人もたくさんいるようだ。というか、魔王って……。やっぱり魔神の力が原因なのかな? 今後は力の制御にもっと気を配るとしよう。


 その後もジャネルと喋りながら食事を楽しむ。近々迷宮深層への大遠征が計画されていてるらしい。複数クラン合同での遠征ということで、都市全体が活気づいているのだとか。ジャネルも参加するそうで、各クランとの調整が大変だとぼやいていた。

 


「ん? なんか騒がしいな」


 食事もひと段落といったところで、ジャネルがカウンターの方を見て呟いた。そちらを見てみると、確かに店主と客が言い合いをしている。


「ごめん! ほんとごめんって! どっかでお金落としちゃったみたいなの! 必ず返しにくるからさ!」

「いやいや、あんたもわかってんだろ? そんな言い訳は通用しねぇって……。大人しくしょっぴかれな」


 客の方は女性のようだ。

 肩くらいの長さの黒髪で、二本の剣を装備している。後ろ姿しか見えないが、どこか見覚えがあるような……。


「穏やかじゃねぇなぁ。あっちの客の方は、なかなかやるぜ? 暴れ出したら止めるしかねぇな」


 ジャネルはいつでも動けるように腰を浮かせている。その気配を感じ取ったのか、女性客がこちらをパッと振り返った。そして、ジッと僕の方を見る。


 その顔にはめちゃくちゃ見覚えがあった。


「お? おぉ!? ちょっとそこの美人なお兄さん!! お願いだから助けてくれない!?」


 動揺していると、女性客がこちらをみて声をかけてきた。ジャネルが変な顔をしてこちらを見てくる。


 あ、美人なお兄さんって僕のことか……。

 なんだか釈然としないが、放っておくわけにもいかない。


「知り合いか?」


「……いや、知り合いではないけど、ちょっと行ってきます」


 ジャネルにそう言って、女性客の方に向かう。


「お兄さんお願い! お金貸して! 必ず返すから!」


 両手を合わせて、可愛らしい女性が懇願してきた。


 間近で見ることで確信する。

 まさかこんなところで出会うとは。




 セブファン主人公の一人、ウィンロル。

 [お祈り姫]と呼ばれる彼女は、特徴的な金色の瞳で僕のことを見ていた。


「……うん、いいよ」


 まあ、僕が主人公の頼みを断るわけもなく。

 

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