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【第二章完結】悪の貴族は美しき散り様を望む〜もしかして、君たちループしてる?〜  作者: 綾丸湖
第一章

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3. 美しき剣術


 魔術の方は三日に一回教わることができることになったので、次は剣術だ。これに関しては、この屋敷の護衛に頼むしかないと思っている。グライエンツ公爵家としては、僕に対して禁術を使用していることがバレるのは避けたいいし、奪われるなんて論外だから質のいい護衛をつけているはずだ。


 数日観察して、目星はつけている。

 まだ若いが護衛のリーダー的ポジションの人物だ。時折、僕の方を悲しそうな目で見ていることがあったので、サリファの境遇に同情していると踏んだ。これは、つけ込むしかないだろう。


「……剣術、教えて」


 どうでもいいが、サリファは口数が少ない。

 それに、表情筋が全然動かないので、大体無表情になっている。顔は整っているのに、地味に怖い。


「サ、サリファ様!? えっと、剣術ですか?」


 そう答えたのは、体格のいい茶色い短髪の男。名前は、フィライだったと思う。


 ゲーム内でこの男を見たことはないはずだ。まあ、記憶も曖昧になっているから確信はないけど、物語で絡むキャラなら会えば思い出すはずだから本当に知らないと思う。


 だけど、僕にとってフィライは逸材だった。


「その、なぜ剣術を?」


「……カッコいいから」


 急に話しかけられて戸惑っているみたいだな。だけど、僕はどうしてもフィライから剣術を教わりたい。


「ま、まあ剣はカッコいいですよね。サリファ様の年齢くらいだと、そう思うのも不思議はないですね」


「……違う」


 なにか勘違いしているようだ。

 僕は別に剣がカッコいいとは思っていない。


「……フィライの剣術が、カッコいいから」


 そう、フィライの剣術はカッコいい。

 他の護衛と訓練をしているところを見たことがあるが、なんというか華があるのだ。その上で、強い。


 美しく散ることが目的の僕にはうってつけの剣術だ。どうせなら、カッコよく助けて死にたい。


「あ、ありがとうございます……!!その言葉は、とても嬉しいです」


 なんかめちゃくちゃ嬉しそうだな。

 あれだけ強かったら褒められることも多いはずなのに、不思議だ。


「……そんなに、嬉しい?」


「それはもちろん!田舎から出て剣一本で生きてきましたが、見栄えなど剣には必要ないだの、無駄が多いだの言われ続けてまして……。まあ、そんな輩は叩きのめしてやりましたがね」


「……そう、なんだ」


「そうなんですよ!思い上がった平民と悪態をつかれることもありますが、そんなもの剣には関係ないでしょう? 人を惹きつける、美しい剣術があったっていいじゃないですか!」


「……うん、そう思うよ」


 フィライは思っていたよりもお喋りな男だった。まあでも、この調子なら教えてくれそうかな?

 

「あ、すみませんサリファ様に話すようなことではなかったですね……。それで、剣術を教えてほしいのでしたか。本当に私でいいのですか? 本家に頼めば、正統派の剣術指南役を派遣してくれると思いますが」


「……フィライが、いい」


 フィライの目を見て、即答する。

 僕は別に正統派を目指しているわけじゃない。


「サリファ様……!そこまで言ってくださるとは……!!」


 感動したのか涙まで流し始めた。

 どんだけ冷遇されてきたんだよ……。


「このフィライ、我が剣術をサリファ様に伝授いたしましょう!!」


「……ありがとう」


「我が剣術の基本理念は、"全ての動作を美しく"。このことを覚えておいてくださいね!」


 なんて僕にぴったりの剣術なんだ。

 これで剣術の先生も見つかったな。あとは僕が頑張るだけだ。


「時に、サリファ様はおいくつでしたか?」


「……六歳」


「え、えぇ!? 体格的に、十は越えているのかと思っておりました」


 ああ、やっぱりこの世界においてもサリファの体格は異常なんだな。僕からしても、やたら成長が早いなぁとは思っていたんだ。これも、あのマッドな魔術師のせいなんだろうか。


「六歳ですと、どう鍛えたものか……。体格的には育っているから、別に気にしなくていいのか?」


 フィライが悩んでいるが、僕は早く強くなりたいので厳しめに訓練してもらいたい。まあ、そもそも筋力的にも見た目相応に育っているので本当に問題はない。


「……大丈夫。気にしなくていいよ」


「なるほど、わかりました。私もその覚悟に応えましょう。いつから、訓練を始めますか?」


「……できれば、今日から? フィライが、無理じゃなければ」


「おお、やる気十分ですね!!私の方はサリファ様をお守りすることが仕事なので、問題ありませんよ」

 

 話が早くて助かる。

 子供用の木剣がこの屋敷にはあったらしく、手渡された。なんかテンション上がってきたな。見様見真似で振り回してみようか。


 確か、フィライの動きはこんな感じだったっけ。


「なッ……!!サリファ様、その動きはどこで??」


「……? フィライの真似」


 なにか驚いているようだが、剣を振り続ける。フィライの剣の美しさの一つは、継ぎ目のない連続剣だ。時折無駄に見えるような動きが挟まるが、実際に振ってみると理にかなった動きであることがわかる。なるほどね、回転によって威力を増したり、急所を相手の死角に隠すような動きだったのか。これは他の人から見たら無駄に見えるかもしれないなぁ。


 ひとしきり振り終えて、満足する。

 なんかこれ楽しいな。サリファの肉体の性能が高いため、思った通りの動きができる。


「素晴らしい……!!!!」


 フィライがまた涙を流しながら拍手をしている。大袈裟だなぁ。


「私の剣を、見ただけでここまで再現できるとは……!!不肖フィライ、サリファ様の才能を見誤っておりました」


 フィライがこちらに近づき、跪く。

 え、なに?


「これまでの人生で、サリファ様ほどの剣才に出会ったことはありません。その才が、私の剣を求めて下さるとは至上の喜び。全身全霊を賭して、私の技術を余すことなく伝授いたします!!」


「……頑張るよ」


 ちょっとそのテンションにはついていけないが、伝授してくれるというのならありがたく受け取っておこう。


「世界一の剣士を目指しましょうね!!」


 


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