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黒薔薇姫は今日も怠けたい  作者: 由岐
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第2話 生産体制を整える

オーブリの実を使って大量の油を作る。それと、燃料として燃やした木の灰を水で溶かして、材料はこれだけ。

石鹸を作るには、あと必要なものは根気ね。ひたすら混ぜて混ぜて、白っぽくなったら一日置いて固めるの。それを切り分けたら、さらに乾燥させる。

その乾燥にも、オーブリは役に立つ。

「以前旅人にケインが聞いたのですが、オーブリは空気を乾燥させる効果があるそうです。だから乾燥地帯でも自生するのだとか」

乾燥させるのに、じめっとした場所よりも空気が乾いている方が適切なのはわかるわ。洗濯物だって、カラッとした日の方が早く乾くとエリーが言っていた。風通しがよく、乾燥しているオーブリの木の近くは、石鹸を完成させるのに最適な環境だった。

「そろそろ、先月乾かしている物が完成する頃なんです」

大体完成するまで一月。油も毎月作って、一か月かけて作った石鹸を売る。そして完成する頃に、次のひと月分の油と石鹸を作る。

毎月決まった流れが出来上がっている中で、子供たちも日付の概念を学ぶんだわ。生活に直結していれば、実体験として身に付きやすいし、とても合理的だと思う。

あら、でも外で乾燥させているのね。

「そうだわ、アリス、聞きたいんだけど」

ここでまた天気の疑問。地場の人間に聞くのが一番早いわよ。

「この土地って、雨も降るでしょう?」

「ああ、天気ですね。雨は確かに降りますけど、この辺りは土がしっとりとする程度ですよ。森の方で大雨が降ることもありますけど、こっちまで雨雲はやってきませんね」

魔獣が多いせいか、この領地の気候は解明できていないことも多いらしい。雨についてもそうで、降ってもほんの少し。雨雲のほとんどは魔獣の住む森へ引き寄せられるので、飲み水となる水については不足しないけれど、都として住む土地にはほとんど雨は降らないらしい。

「雨雲を食べるような魔獣とか、いるのかしら」

「もしかしたら、帝都では原因もはっきりわかるかもしれないですけれど」

あくまで私達が知ることはない、上流の知識層でないとわからない、ってことらしい。まあ、知識の深い部分なんてみんなそうよね。原理はわからないけど、こうなるって事実だけが揺るがない。

「だから外で乾燥させられるのね」

「はい。雨が多いとどうしても完成も遅くなりますから」

完成間近の石鹸も見せてもらったわ。ほとんど固まっているけれど、中央を強く押し込むとほんの少しだけ凹む。

「来たついでで悪いんだけど、ちょっと相談できるかしら。代わりにルイをこき使っていいわ」

アリスに問いかければ、彼女は小さく頷いた。あらやだ、彼女の背中の子、寝ちゃってたのね。


数日前に契約を交わした部屋へ入れば、既にそこにはケインが座っていた。

「あら、ずいぶん見違えたじゃない」

「あんたの指示だろ」

俺は納得してない、って全身で言ってるみたい。本当に、孤児院の番犬ね。

「ちょうどいいわ。ケインにも相談があったの」

「俺にも?」

怪しい話じゃないだろうな、と怪訝な顔をしながらも聞く姿勢を持ってくれる。自分の感情と多数の利益を切り分けているケインの態度も、大好き。

頷いてソファに座る間に、アリスはおぶっていた子を降ろして寝かしつけたようだった。エプロンを外してやってきた彼女にもケインの隣に座るようにすすめる。

「商会の手続きが終わったわ。あとは帝都での承認が下りるまで待つだけで、その間のことなんだけど」

こくり、と二人が頷くのを見て、どう切り出すか迷う。

「さっき、アリスに石鹸の作り方を教えてもらったの。時間がかかるし、大変なのね」

「チビ達も頑張ってくれてるんだけどな」

少し誇らしげなケインに、うんうんと同意する。あんな、やっと歩けるようになったぐらいの子達も木の実拾いをしたりして、仕事としてみんなで協力しているのは純粋にすごいと思うわ。

「作るのが月に一度だと、やっぱり作れる量も限られるでしょう?」

可能かどうかの判断は私にはできない。

「週に一度、油と石鹸を作るのはできるかしら」

一月は四週あるから、単純計算で今の四倍の量が作れる。完成間近の物を見た限り、現状はそれだけあればある程度の流通に乗せても品切れにはならないんじゃないかと思う。

考えて、先に口を開いたのはアリスだった。

「おそらく、材料については可能ですね。灰だけ、用もないのに木を燃やさないといけないのが気になりますが」

「チビ達の勉強の時間が取れねえよ」

ケインの言葉に頷く。材料と人員、どっちも避けて通れない問題ね。

「わかったわ。懸念としては、一部材料の不足と労働力ね。じゃあ、二週に一回ならどうかしら?」

それなら、とうなずくアリスと、悩む様子を見せるケイン。ケインのこういうところが、子供たちにも好かれるのだと思う。

「子供たちの勉強って、いつも誰が教えてるの?」

「私です」

アリスが手を挙げる。なんでも、アリスも幼い頃に孤児院の年長者に教わったらしく、読み書きと簡単な計算ぐらいはできた方が良いよ、と常々言われていたみたい。

「今後はアリスは勉強教えるより、自分の勉強が忙しくなるかもしれないし……ケインは教えられないの?」

「できなくはないけど、あんまし得意じゃねえよ」

なるほど、教師についても考えないといけないわね。

「わかったわ。じゃあ、石鹸作りと勉強の週を交互にやっていきましょう。勉強は私や侍女も教えられるわ」

エリーに聞かずに勝手に決めちゃったけど、いいかしら。

貴族の教育水準が高いのはケインも理解していたから、それなら、と譲歩してくれたわ。

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