5 『花の戦士! フラワーエンジェルチェリー!』桜町吹雪 その1
「どうなってるんだ、この学校は? 超人学校か?」
左六女は、驚きながらも、嬉しそうだ。
「だ、誰ですか、それは?」
桃子も、すこし興奮して来た。
「『フラワーエンジェルチェリー』だよ」
詩乃は、ほほ笑んで即答する。
「おっと、その噂、私は聞いたことがあるよ」
タブレットをポンポンと操作する左六女。
「ほら、今SNSで話題になっている、謎のセーラー服戦士だよね」
左六女が、SNSの記事を見せる。
そこには、半袖のセーラー服を着て、桜の枝のようなバトンを持った、戦士の後ろ姿。夜に、たまたま撮影できたのだろう、少しぼやけた画像が投稿されていた。スワイプすると、何件か同じような投稿がされている。
「この投稿によると、この謎の戦士は、もめごとのある所に、突如飛来してくるらしいよ。そして、バトンから花吹雪を出して、もめごとを収めるそうだ。で、去って行く。悪者に襲われそうになって、助けられた人も多いみたいだ。あ、空中を飛んでいる画像もある」
これも夜の画像で、顔ははっきりと分からないが、ミディアムヘアーで、手を前に出して、10m位の高さを飛んでいる。2月撮影と書いていあるが、セーラー服は半袖だ。肩に小動物らしきものを乗せていた。
「ああ! そうだよ。これって、『花の戦士! フラワーエンジェルチェリー!』って昔やってた、アニメの主人公だよ」
桃子が、画面を指さした。
「はあ? でもさあ、飛んでるなんて信じられないよ。これアニメの実写映画の撮影か何かかな?」
左六女がタブレットに眼を近づける。
「違うよ。本物だよ。私見たよ。『フラワーエンジェルチェリー』が飛んでるところ。夜の公園だった」
と言って、ニコニコする詩乃。
「でも、この人が隣の教室の人だなんて、何で分かるのですか?」
菊子もタブレットに顔を近づける。
「だって、匂いがいっしょだもん。飛んでいた『フラワーエンジェルチェリー』と隣のクラスの人の匂いが。変装してても、わたしには、分かっちゃうもんね」
「おお、さすが『ドッグノーズ』。それで、詩乃さん、今その人の匂いはしますか?」
ここまで来たら、すぐに会うしかないと、左六女が聞く。
「うん。今は隣の教室に、いないみたいだけど。違う教室から匂いがするよ。行ってみる?」
「もちろん! 善は急げです。案内お願いします。詩乃さん」
桃子は、もう腰を上げている。
「オッケイ!」
詩乃は、いきなり走り出す。それを追いかける3人だった。