4 『ドッグノーズ』里見詩乃 その8
「僕から説明するよ」
桃子は、菊子が鬼であることから始めて、鬼ヶ島の財宝を守る事や、虚無大師を退治する計画を話した。
「へえ! 菊ちゃんて鬼の子なの! 凄い凄い。ちょっと角に触ってもいい?」
詩乃は、話の内容より、菊子の角に一番興味を持った。
「はい、いいですよ」
菊子は、ツインテールをほどいて、小さな角を詩乃に触らせる。
「わあ、本当に角だ。でも、可愛い角だよね。菊ちゃんよく似あってる」
「あ、ありがとうございます……えへへ」
少し照れる菊子だった。
「それで、話の続きなんですけど」
左六女が、業を煮やして詩乃に声をかけた。
「あ、そうだ。なんだっけ。わたしに何か用事があるんだよね?」
詩乃は、菊子の角を触りながら、顔だけ左六女に向ける。
「そうです。今話した『財宝を守る』のと『虚無大師退治』に協力して欲しいんです。詩乃さんの能力が、この作戦に必要なんです」
左六女がタブレットを見ながら、詩乃に迫る。
「お願いします! 助けて下さい!」
菊子が涙を流して、頭を下げる。
「成功報酬は、お宝の一部でどうでしょうか?」
左六女は、タブレットにフリーイラストの財宝画像を映して詩乃に見せた。
「成功報酬? お宝? 悪い奴をやっつけに行くのじゃないの?」
「そうです。平和に暮らしている鬼を苦しめる、悪い奴を懲らしめにいくのです。詩乃さんの力を、僕らにかしてください」
菊子の隣で、桃子が頭を下げる。
「財宝とか、お宝とかは、よくわかんないけど、菊ちゃんを泣かす、悪い奴は許せない! わたし、協力するよ! たぶんエイトも、そうしろって言うよ」
「ありがとうございます!」
菊子が、詩乃に抱き着く。それを見て、もらい泣きをする桃子だった。
左六女はいたって冷静だ。
「よし、桃太郎の犬は『ドッグノーズ』の詩乃さんだ。仲間も増えたところだけど、できればあと一人は欲しいな……」
「雉の役目をする人か……。空を飛べる人なんているかな」
桃子が腕を組んで、宙を見る。
「いや、そこまでは、望んでないし。そりゃあ、鳥みたいに飛べる人がいれば、強力な戦力だけどね。まさか、飛ぶ人間なんて、いないよね……」
宙を見ながら、左六女が腕を組む。
「え? 鳥みたいに飛べる人? いるよ。隣のクラスに」
当然のごとく、詩乃が言った。
「ふええええええ!」
たまげる、桃子、左六女、菊子。