表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/63

4 『ドッグノーズ』里見詩乃 その5

(あと)は……」

 左六女(さろめ)(くず)れるように、ドスンと座った。


「後は何だよ?」

 桃子(ももこ)が尋ねる。


「もう少し、仲間が欲しいんだけどなあ」

 左六女は、タブレットのペンを指先で回す。


「桃太郎の犬と(きじ)の役だね」

「うん。この作戦は、相手が怪物だからね。よほどの覚悟があって、特殊な能力を持つ者がいいんだ」


「覚悟はわかるけど、特殊な能力ってどんな能力さ?」

 そんな人いるか、と言わんばかりの桃子だった。


「桃太郎さんの、犬と雉に近い能力を持った人がいたら……とは思うんだけど……。そんな人間、いないよなあ」


 しばらく沈黙が続いた。


 突然、桃子がドンと実験机を叩く。

「あ! 左六女、犬と言えばさあ、2年の先輩で犬みたいな能力で、不良をやっつけた人がいるって聞いたことがある」


「ああ、それ! そう言えば、私も聞いたことがあるよ。確か凄い嗅覚(きゅうかく)を持ってて、犬のような瞬発力や身体能力の人でしょ? 不良を倒すぐらいだから、有名人だよ。2年生の先輩に聞いてみよう」


「あたしが2年生に聞いてきます!」

 菊子(きくこ)は、立ちあがって理科室を出て行った。


「僕たちも行こう。一刻も早く鬼ヶ島に行かないと、手遅れになるからね」

「オッケイ! でも、本当に犬みたいな人っているのかなあ……」

 桃子と左六女が菊子を追って、理科室を出る。


 2年生の教室棟に行くとすでに、菊子が先輩の女子生徒を呼び止めていた。

「あ、あのすみません」


 振り向く2年生。

「はい? あら、そのツインテール可愛い! で、私に何か用?」


「あたしは1年の小鬼菊子(こおにきくこ)といいます。つかぬことをお(うかが)いしますが、2年生で、不良をやっつけた人がいると、聞いたのですが、ご存じですか?」

「ああ! 詩乃(しの)ちゃんのことね。私のクラスの子よ」


「詩乃ちゃん? 女子生徒なんですか?」


「そうよ。里見詩乃(さとみしの)。凄いのよ。何でも嗅ぎ分けることができるの。『ドッグノーズ』ってよばれてる」


「『ドッグノーズ』里見詩乃さん……。その人、今、学校にいるでしょうか?」

「うん。今日は、掃除当番だったから、まだ教室にいると思うよ。2年3組だよ」


「ありがとうございます!」

 深々と頭を下げる菊子だった。


「菊ちゃんはホントに、礼儀正しいね。見てて気持ちがいいよ。鬼ってみんなそうなの」

 桃子が、菊子の背後から感心しながら近づいてくる。


「はい、本来鬼は、みな礼儀正しいのです。(すじ)(とお)します。世間で鬼は、傍若無人(ぼうじゃくぶじん)で粗暴なように言われますが、心外(しんがい)です。誰だろうデマを広めたのは」

 憤慨する菊子だった。


「まあまあ、でも、菊ちゃんのおかげで、情報が手に入ったよ。すぐに会いに行ってみよう。その『ドッグノーズ』里見詩乃とやらに」

 そう言って、左六女は、菊子の肩を優しくつかんだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ