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4 『ドッグノーズ』里見詩乃 その4
「外に持ち出したお宝は、どうするんだよ。これも最後まで守らないとだめなんだよね」
桃子は、腕を組んで左六女に聞く。
フンと鼻を鳴らして、左六女が答えた。
「私たちが、鬼ヶ島に行くときに、乗って行く船に運び込む。そして、私たちは島に残って、船は、一時鬼ヶ島から離れてもらう」
「まってよ、その船はどうするの?」
「すでに、手配はしてるよ。私の親戚のお姉さんが、大きなヨットを持っているんだ。ヨットだと風で進むだろ、音も出ないから気づかれにくいし、キャビン(船室)のある、大きな船だから、お宝も隠せる。親戚のお姉さんに、この作戦を話すと、喜んで協力するって。正義感のある、冒険好きな人なんだ」
「そっか、わかった。でもヨットって大きな帆があるやつでしょ、目立つんじゃない」
「これは、夜決行する! 暗闇に乗じて、鬼ヶ島に上陸するんだ!」
左六女は、拳を握って立ち上がった。