最終話 私を奪ってください
オスヴァルトの発作が落ち着いてから数日後、フィーネとオスヴァルトは彼の部屋で過ごしていた。
「ごめんね、発作のこと言わなくて」
「きっと私が心配すると思って言ってなかったのしょう?」
「そうなんだけど、いずれわかっちゃうよね……」
オスヴァルトは申し訳なさそうに頭をさげるも、フィーネは首を振って笑みを浮かべた。
「大丈夫です。あなたが生きていれば」
その言葉を聞いてオスヴァルトは、フィーネの頬に手を添える。
「オズ?」
「君を見つけて君とまたいられるようになって、本当によかった」
「私もです。伯爵家での辛い日も、教会での辛い日も毎日あなたを想って過ごしていました。頑張って生きてきました。いえ、あなたがいたから私は生きてこられたのかもしれません」
「フィーネ……」
オスヴァルトは、フィーネの手を引くと、そのままベッドに押し倒した。
「オズ!?」
「ふふ、あのね、『稀血の大聖女』のもう一つの秘密、知ってる?」
「え?」
聞き返したフィーネの耳元でオスヴァルトの甘い声が響く。
「吸血されても、吸血鬼にならないんだよ」
そうして二人の目が合った。
その瞬間、フィーネはオスヴァルトが今から何をするのかわかった。
「吸血、したいですか? 私を」
「ふふ、したいに決まってるでしょ。好きな人の血を求めるのは吸血鬼の性だからね」
そういって、オスヴァルトはフィーネの首元に唇をやるとぺろりと舐めた。
くすぐったさでフィーネは体をよじってしまう。
すると、そんな彼女を逃がすまいとオスヴァルトの足がフィーネの足をからめとった。
「君のこと食べないって言ったけど、撤回。君を食べたい、欲しい。僕の初めての吸血をもらってくれますか?」
フィーネはオスヴァルトの頬に両手を添えて笑みを浮かべると、少し恥ずかしそうに言う。
「私を奪ってください、オズ」
その言葉にオスヴァルトは一瞬目を大きく開き、そして微笑む。
「絶対に離さない。もう、逃がさないから」
オスヴァルトはゆっくりとフィーネの首元に牙を突き立てた──。
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