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第12話 フィーネを傷つけた者への罰を

 教会についたオスヴァルトは、一緒に来た側近のロルフや衛兵と共に目配せをする。

 これまでなかなか尻尾を掴めなかったフィーネがいた教会の神父の様々な不正、主に税の取り立てと人身売買の罪の証拠をつかめ、いよいよ罪を裁くときがやってきたのだ。


(フィーネを苦しめたこの教会を、そして神父を裁く……)


 覚悟を決めたオスヴァルトはロルフと衛兵に合図をして突入をする。


 この時間は礼拝堂にいるという情報を掴んでいるため、その情報を頼りに一気に突入すると、情報通り祈りを捧げる神父と傍らにはシスター見習いの女性がいた。


「なんですか、突然っ! なっ! エルツェ卿……!!」

「お久しぶりですね、お元気にしていたでしょうか?」

「なぜ、こちらに……」

「それは自分の胸に手を当ててよく考えたらいかがですか?」


 そんな風に会話する神父の横で気の強そうなシスター見習いが、何かに感づいたのかそっと忍び足で逃げようとするが、それを衛兵を止める。


「ふふ、逃がしませんよ。あなたも同罪ですし、何より昔フィーネに罪をかぶせたのはどこの誰でもない、あなたですからね」

「な、なんですって!?」

「わからないと思いましたか? 実はあの夜にも目撃者がいたんですよ。火事があった時に水汲みにいっていたフィーネと話していた人がいて、証言してくれましたよ。あなたは口封じに彼女の弱みをバラすとちらつかせて脅していたようですが」


 それを聞いたシスター見習いは舌打ちをして、悔しそうな表情をする。

 その顔には反省の欠片も見えずに、そのことにオズは冷たい視線を向けながらも、彼女にも裁きをすることを心に決めた。


「神父も神父なれば、見習いも見習いですか。神父、あなたはこの子を利用して人身売買や金品の盗みをしていましたね?」

「そんなことはしていない」

「いいえ、調べはついています。ここにいた子どもたちを貴族に売ったり、そしてこの子には貴族の家に身請けされるように仕向けてそのまま金品をかすめとった。それも、きちんと不正で得た汚い金を持っている貴族のもとに身請けされるようにして、王国へ報告できないようにした」

「神にその身を捧げた私が、そんなことするはずありませんよ」


 余裕の表情を浮かべる神父、そしてその様子を見て安心したような素振りを見せる見習いに、オスヴァルトはさらに追及を続ける。


「私がここまで来て、こうして裁きを下しているのです。証拠を掴んでいないわけないでしょう?」


 オスヴァルトの詰め寄りに、神父は顔をしかめて反論できずにいる。


「複数貴族からの証言、そして人身売買先の船の持ち主の特定、さらに金の流動を含めた教会の不正帳簿の数々。ここにいる私の側近のロルフが全て書類を洗い直して矛盾を見つけましたよ」

「んぐ……」

「それから、人身売買は船の持ち主が細かく日記をつけてましてね、照合できましたよ。名前もここにいた子と同じ。いろいろ雑な仕事ですね、粗が目立ってましたよ」


 そう言うと、書類をロルフから受け取ってかざしながら神父と見習いのシスターに見せる。

 二人は悔しそうに歯を食いしばって体を震わせると、その場に倒れ込む。


「神父、あなたは牢獄で一生罪を償いなさい」


 神父に低い声色でそう言った後、横にいて悔しそうに床を見つめる彼女に声をかける。


「あなたの一言がフィーネの運命を、人生を変えてしまった。あなたのついた嘘で誰かを不幸にさせた、その罪をきちんと償いなさい」

「……ふん」


 納得のいかなそうな表情を浮かべる彼女に、思わずオズは声を荒らげる。


「フィーネがどれだけ苦しい思いで地下牢で過ごしたか、わかるか!? 心からの反省をしない君に救いはいらないだろう」


 そう言って、衛兵から槍を取り上げると、そのまま彼女に向ける。


「ま、待ちなさいよっ!! あなた人を殺す気なの?! やめてっ!! なんでもするから!! お願い!!!」


 涙ながらに懇願する彼女の様子を見たオスヴァルトは、槍を彼女の横に思い切り指すと、そのまま出口に向かって歩き出す。


「安心しなさい、君も一生牢の中だよ」


 そう言い残し、オスヴァルトは教会を後にした。



「終わりましたね」

「ああ」


 帰りの馬車の中でロルフがオスヴァルトに声をかける。


「ようやく終わった。教会への裁き、フィーネを苦しめた罪」

「オスヴァルト様、フィーネ様のもといたミレイド伯爵家の件ですが」

「どうなった?」

「はい、オスヴァルト様のご指示通り、伯爵の密輸入の証拠をエサにしたらどんどん悪事を自分から吐きましてね」

「ほお」

「まもなく国で彼らの輸出入の利権や爵位は剥奪され、最低限の生活資金だけ渡されて島流しだそうです」


 それを聞いて、オスヴァルトはふうと息を吐いた。


「これで、フィーネを傷つけた者は全て片付けた。あとは……」


 そう言った瞬間、オスヴァルトは胸を抑えて苦しみだす。


「オスヴァルト様!?」

「ぐっ……う……」


 オスヴァルトは馬車の中で倒れ、意識を失った。

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