表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雪の刃—殺し屋の元王女さま  作者: 栗パン
序章:決意の月明り
9/183

9 一矢報いる

蓮は剣を構え、敵の男の首元に向けた。「誰に命じられて彼に手を出した?」敵の男は痛みと恐怖に震え、蒼白な顔で口を開けたり閉じたりしたが、何も言わなかった。蓮は剣をさらに少し押しつけ、冷たく続けた。「私が誰かはわかっているな。彼を襲うということは、私を襲うのも同じことだ。皇室に刃を向ける者がただで済むと思うな。死以上の苦痛を味わわせてやるぞ。お前の一族全員を同罪とし、逃れられない地獄に落としてやる。」


敵の男は目を見開き、かすかな声で、「……殿下、お許しを……」と震える声を漏らした。蓮はその一言を聞き、剣を少し下げたが、鋭い視線を崩さずに低く囁いた。「許すだと?誰の命令で動いているのか、さっさと言え。」


敵の男は一瞬蓮の目を見たが、再び視線を落とし、唇を噛みしめた後、やがて小声で答えた。「……侯爵様の命令でございます。林家の二公子を捕らえろと……」蓮はその言葉にわずかに表情を険しくし、冷静に言葉を続けた。「それだけか?」敵の男はたじろぎながらも、小声で続けた。「……林家の公子が、もし皇帝に慕正義様の民女の拉致や平民への虐殺を報告する前に、それを……阻止するよう命じられていたのでは……」


心中で蓮は嘲笑を噛み殺した。慕家は財力と権力を誇る名門だが、こんな場所であからさまに暗殺を命じるとは、焦りすぎてその愚かさを露呈している。背後にもっと大きな存在があるのではないかという疑念も、彼の心に薄暗く芽生えた。


蓮はその報告を聞くと、冷ややかな視線を放ちながら、さらに低く言った。

「それなら、なぜお前は彼の命令に従っている?」

敵の男は冷や汗を滲ませながら、さらに怯えた視線で蓮を見上げていた。

「……私には病弱な弟が一人おります。生まれつき病弱で、私が治療費を捻出するために、やむなくここに……」とつぶやいた敵に、蓮はわずかに眉を上げ、「弟のためとはな…どんな病かは知らんが、もしお前が私に従うなら、助けが得られるかもしれん。お前次第だ。」と囁いた。


敵の男は驚きつつも、すぐに目を伏せ、深く頭を下げた。

「何でもお命じのままにいたします。弟のためなら、私は……」

蓮は冷ややかな笑みを浮かべ、「その決意を忘れるな。侯爵の動きを逐一報告しろ。裏切りは許さん。それを守れるなら、お前の弟を助けることを考えてやろう。」と鋭く言い放った。敵の男は怯えつつも強くうなずき、「殿下のお言葉、胸に刻みます」と再び深々と頭を下げた。


蓮が敵を従わせたその頃、凛律もまた別の襲撃者を捕らえていた。だが、男は舌を噛み切り、口を割ることなく息絶えた。凛律は一瞬、不快そうな表情を浮かべ、わずかな手がかりさえも失われたことを悟った。


ほぼ同時に、凛音は福袋を持つ白鷺を再び視界に捉えた。白鷺は森林の上を旋回するように飛び、時折光がその金色の福袋に反射して、かすかに輝いていた。しかし、近づく度に白鷺はふっと別の方向へと飛び、彼女との距離を保ち続けている。


「逃がさない…」凛音は心の中で呟くように決意を固め、馬をさらに駆けさせた。


その時、彼女の視界の端に別の騎手が現れ、彼女の進路を遮るように迫ってきた。矢が空を裂き、彼女の頭上をかすめる。凛音はすぐさま手綱を引き、体を低く伏せ、矢をかわしながらも視線を白鷺から逸らさない。


「ここで邪魔をされるわけにはいかない…!」彼女は一瞬だけ鋭く睨み返した後、再び集中を取り戻し、白鷺を追い続けた。


ようやく、福袋を持つ白鷺が飛ぶ速度を少し緩めた瞬間が訪れた。凛音はその機を逃さず、弓を構え、矢を引き絞った。しかし、放とうとしたその刹那、白鷺が急に方向を変え、樹々の陰に消えかける。


「今しかない…!」心の中で叫びながら、彼女は全身の神経を集中させ、瞳を鋭く細めた。視界にはかすかに光る金色の福袋が見えている。深い呼吸と共に心を鎮め、手元の感覚を研ぎ澄まし、狙いを定めて矢を放った。


矢は空を切り、白鷺にまっすぐ向かって飛んでいく。


一瞬の静寂の後、矢が白鷺の足に結ばれた福袋に命中した。白鷺は驚いたように羽ばたきを止め、ふらりと空中でふらつきながら徐々に高度を失っていく。凛音はその一部始終を目で追い、勝利の瞬間を確信した。


白鷺がゆっくりと森林の端へ落ちていくと、観衆の歓声が徐々に広がり、森林の静寂を破り、勝利の余韻が辺りを包むようだった。

凛音は視線を少し遠くに向け、息を整えながら、「ここからが本番だ」と心の中でつぶやいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ