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雪の刃—殺し屋の元王女さま  作者: 栗パン
第三章:氷雪の果て、覚醒せし魂
40/183

40 蓮華に託す、二つの名

緑の池は星々の光を映し揺らめき、

蘭の舟がきしむ音と共に白い蘋草へと進む。

きっと洛神が波間を歩いたのでしょう、

今も蓮の花蕊にはその香りの塵が残る。


「蓮、蓮花は洛嬪の花だよ。知ってる?白くて美しくて、私、大好きなの。」

それは幼い頃、私が「女の子みたい」とからかわれた時に、凛音がかけてくれた慰めの言葉だ。

あの瞬間、彼女の素直な笑顔に救われたことを、今でも鮮明に覚えている。

そして、この詩に由来して、私は洛白という名を選んだのだ。

凛音を守るために。


「もう二度と会わないでください。」

その言葉を受けた瞬間、この仮面を外すことがますます難しくなった。

敵国の王女だとか、そんなことはどうでもいい。

ただ、どうして彼女が、わからないのだろう。


彼女を見て、改めて思い知る。王族とは、鎖だ。


子供の頃、祖母上が教えてくれた。

「蓮、王族とは何か分かる?それは全てを支配する者。必要ならば、全てを犠牲にしてでも、理想を実現する存在よ。」

その声は冷たく、美しかった。だが、幼い私の胸に残ったのは、恐怖だった。


祖母上の理想のために、切り捨てられた多くの命——

その中には、雪華国も含まれていたのだろう。

宰相の言葉を聞いた時、私はぼんやりと、そう確信していた。


もし彼女が、祖母上を、あるいは父上を殺したなら——私はどうする?

それでも、彼女のそばにいたいと思うのだろうか。

これはおそらく、彼女からの問いではなく、私自身への問いだ。


彼女が今歩む道は、極めて危険だ。

だが、その危険さゆえに、私は離れることができなかった。


いや、私は偽善者だ。

彼女を守るという名目が欲しいわけではない。

ただ、どんな道を彼女が歩もうとも、私はそのそばにいたいのだ。


それなら、考えるべき問題は一つだけだ。

もし彼女が、祖母上を――あるいは父上を――殺したなら、私はどうするのか。

祖母上は簡単に殺されるような方ではない。

むしろ、彼女を祖母上から守り抜く。それが、私の答えだ。


その真相を、その陰謀を、この目で見極める。

彼らが何を企んでいるのか、一番近い場所で見届けよう。

その上で、どうすれば良いのかを決めるだけだ。


ならば、私は――王になる。


興味はない。それでも、一番手であると言える。

複雑な策略を考えることも、嫌いではない。

彼女の復讐は、私にとって無能な政治を叩き直す機会でもある。

全てを支配するつもりはない。

ただし、彼女のためなら、全てを犠牲にする覚悟がある。


前に見た雪華国の辺境の村――人々が無残にも毒で命を奪われた光景。

今度は、白瀾国の辺境の村――家々が焼き尽くされ、灰と化した。

そのような無惨な光景を、絶対に二度と繰り返させはしない。


雪華国の遺跡――もし白瀾国の兵士に守らせるようなことがあれば、

それは彼女にとって侮辱だろう。

ならば、彼女のため、彼女の兵隊を作ろう。

この遺跡を、新たな兵士たちに任せるべきだ。誰にも壊されることのないように。


清樹のことは、おそらく彼女はそばに残すつもりだろう。

最後の雪華国の民である彼を、いまさら「救い」とは呼べないかもしれない。

だが、ほんの少しでも彼女の希望となれるのならば、私は清樹を最後まで見守る。


浮遊がいつまで私を庇い続けてくれるのか、それは分からない。

だが、洛白の身分のまま、ずっと彼女のそばにいる――それは現実的ではないだろう。

彼女にとって洛白は、頼りになる存在だ。軽口を叩きながらも、必要な時には隣で助ける。その姿を、彼女は信頼している。

それが分かるからこそ、心の奥底で、何とも言えない焦燥が湧き上がる。


南宮蓮として過ごした十年。それを、洛白としてのたった二週間に簡単に塗り替えられるわけがない。

だが、その十年で私は彼女に何を与えられただろうか?どれほどの信頼を築けただろうか?


彼女が頼るのは洛白。その信頼が、どこか他人事のように思えてならない。

それでも、彼女のそばにいたい一心で、洛白という仮面を被り続けた。


洛白の声を作り続けるために、少量の毒で喉を焼く日々。

それが、彼女を守る唯一の手段だと信じ込んでいた。

だが、そこまでして得た仮初の姿を見つめるたび、自分が作り出した「洛白」という影を、

ますます嫌悪するようになった。

その影が、いつしか本当の自分を侵し、飲み込んでいく。


気づけば、自分自身がその影に嫉妬している――まるで、本当の自分を否定されるように。


だからこそ、南宮蓮として、正々堂々と彼女のそばに立ちたい。

そして、洛白ではなく、本当の自分で、彼女の目に自分の存在を刻みたい。


今回、戻ったら、洛白は消えろう。


ここまで読んでいただきまして、本当にありがとうございます!

第一部『運命の雪華』(第1話~第40話)を最後までお楽しみいただけたでしょうか?

皆様のおかげで、無事に第一部を完結させることができました。心より感謝申し上げます。


明日から、いよいよ第二部が始まります!

宮廷を舞台に、凛音たちの運命はさらなる試練と波乱に巻き込まれていきます。

復讐の道と白瀾国の陰謀が交錯する中、凛音の選ぶ未来と蓮の恋の行き方は──。

さらに、清樹や浮遊を含むキャラクターたちの成長と活躍にもぜひご注目ください!


これからも、彼らの物語を見守っていただければ幸いです。

どうぞよろしくお願いいたします!


次回の更新をお楽しみに!

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