互いの盾
「何者!」
「曲者!」
「陛下を守れ!」
などと声が上がり、騎士達は王族へ走り寄った。
魔術師軍団は何も動じない。
ソフィアを襲った殺気と矢が身内同士のやり取りだと確信していたからだ。
いつの時代にもある王座の争奪戦。
親兄弟で殺し合うのも珍しくはなく、後ろ盾になる貴族の腹の探り合いで操り人形でしかない王族もいる。
今回の王位を巡る皇子の争い、魔法が使える皇子が発現となれば魔術師軍はそちらへ肩入れすべきなのは明白。
自分以外の皇子に魔法を持たせるのを阻止するのはどの皇子もそれぞれに考えていた事だ。
それぞれ皇子の騎士、お抱えの魔術師が主君を守ろうと盾になった。
互いの盾の向こうでカルロスとマシューは睨み合った。
「どういうつもりだ? マシュー」
「何の事ですか?」
「このものが私を解呪するのを阻止したな?」
「まさか!」
「お前の手の者だろう! 国家魔術師達! あの小さな魔術師を回復しろ!」
とカルロスが怒鳴ったので、魔術師達は渋々と動き出した。
カルロスは皇太子殿下だけあって、護衛の騎士も魔術師も素晴らしい一流の者を置いていた。それはソフィアを殺めて逃げる罪人を逃さず殺さず捕らえるのも可能だった。
どさっとその場に投げ出されたのは、弓を持った下級兵士だった。
ぶるぶると震えているのは、この先の自分の運命を知っての嘆きだった。
「この者が射た矢が魔術師に刺さりました」
カルロスの騎士が剣を喉元に突きつけた。
弓を手にした下級兵士は「お許し下さい」と言うしかなかった。
誰の目にもその兵士は犯人役を押しつけられた者だったが、それを論じても意味がない。
「おやおや、これは大変な事を! 王家が魔法を取り戻すチャンスをこんな下級兵士に閉ざされてしまうとは! この者に関わる一族郎党、皆処刑ですね!」
マッシューが言い、兵士は怯えたような顔でマシューを見上げた。
「そ、そんな……」
マシューはにやりと嫌な笑いをしてから、もごもごと口内で唱えた。
回転する火の車輪が現れ、それはあっという間に兵士の喉を焼いて切り裂いた。
ぼごぉと妙な音がして、避けた喉から血が噴き出した。
「おい! 誰が殺せと!」
「ああ! 兄上、申し訳ない! この男が舌を噛んで自害しようとするのを止めようと思ったんだが、魔法に慣れてないものだから……力が強すぎたようだ」
とマシューは言った。
カルロスは拳を握りしめてマシューを睨んだ。
忌々しい!と唇を噛んでから、国家魔術師軍団の方を見た。
「おい! そいつの様子はどうだ? 死なせるなよ!」




