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7 選ばれしもの

そこからの流れは早かった。


いつも通りの日々が何日が流れた日に、唐突と集められた俺たちは何事かとざわついていた。

今までに集められたことはなく、あの女性フラウと話すときも一人一人呼ばれていた。


それが今日唐突にこうして集められている。


俺は騒がしい周りを改めてみる。

こうして見渡してみると、相当な数がいると思う。

ただ、この数を一度にこちらに転移させているのに一人でも向こうに戻せないというのは未だに納得いかない。


「皆さん、本日までお疲れ様です」


そんなことを考えていると、唐突にフラウの声が響いた。

声の方を向くと、人が集まっているのとは別の場所。その向こうに、フラウと武、そして女子が二人が立っていた。

あの女子二人、片方は見たことがあるが、もう片方は今日まで見たことない。


俺を含めた全員が、フラウの次の言葉を待っていると、次に言葉を発したのは武だった。


「みんな、今日までお疲れ様。こうして俺がみんなとは別の場所に立っていることからして、もう察しがついているとは思うが、俺が今回の勇者に選ばれた。俺の横にいる三人が、今回の従者だ」


そういった武の横に立っていた三人が、武の前に出る。


一人目は、フラウ。

フラウの外見はピンク色のセミロング。

外ハネのある髪が特徴的だ。


...こうして考えると、人の容姿をよく見えるのは初めてだな。

考えてもみれば、フラウはピンク色の髪色をしているのに、なぜ考えなかったのだろう。


「私の名前は既に知っている人もいるでしょうけれど、改めて。フラウと申します。今回は武さんの助けになるため、こちらの世界で事前に選ばれたうちの一人です」


フラウは、少し柔らかく微笑みながらそう言った。

普段俺が目にしている笑顔とは少し違うような気もするが、そう大差ない笑顔だ。


次に前に出たのは、俺たちと同じような黒髪の少女。


「皆さんこんにちは。奏といいます。えっと、皆さんが元の世界に帰れるように、私たちも頑張りますので、応援お願いします」


奏という子はそういうと、ペコリと礼をした。


あの子は確か、同じクラスだったはずの子だ。

俺の席の斜め後ろあたりで、あのような髪形をした子を見た気がする。


次に前に出たのは、その隣にいた金髪の子。

金髪のボブで、目が少し吊り上がっている。

見た目通りの印象を言えば、きつそう。個人的には関わりたくないタイプの人間だ。


「私はリーナ。戦えない人間は隠れて過ごしてなさい。私たちがすべてを終わらせてあげる」


そう強気な言葉を吐き出して、リーナと名乗った少女はプイと横を向いた。


そんな態度を見て、俺の周囲にいる女性たちはピリピリし始めた。

見た目通りの印象だ。今後関わることはないだろうけれど、万が一にでもそうなりたくない。


「そういうわけだ。リーナみたいにきつい言葉を言うつもりはないけど、みんなは安全な場所に隠れていてほしい。俺たちが必ず元の世界に戻して見せる」


武がそう言い切る。

必ず、か。だいぶ大きく出たな、あいつも。


これまでの勇者と呼ばれた者たちも、そういってきたのだろう。

そして、どの必ずも叶えられることはなく俺たちの代まで続いてしまった。


「...これが何年続いているんだろうな」


これがもし、俺たちの代が魔王の寿命ギリギリで、魔王が弱ってました、みたいな流れならよかったのだが。

まぁ、そううまくいかないだろう。


俺たちからしたら、あの四人に頼むしかないのだ。


「まぁ、なるようにしかならないか」


こうして、俺たち四百人の中から英雄は選ばれ、当然のごとく選ばれなかった俺たちは、俺たちを救うべくして出発する英雄たちを送り出すべく、施設の外へと向かわされた。


「...嘘だろ」


そうして外に出た時に最初に口を出た言葉は、信じられないという類の言葉。

俺たちが先ほどまでいた施設では、空が見えていた。

雨が降ることは一度もなかったが、確かに空が見えていたのだ。


しかし、こうしてその外に出てみると、空が紅く光っている。


「...一度も雨が降らないのは、確かにおかしいとは思ってたけど」


周りを見渡してみると、空の紅さに驚いている人ばかりだ。

選ばれた人間以外の話だが。


「それでは、行ってくる」


驚いている人たちを無視し、まるで時間がないんだというかのように、武は俺たちをちらりと見ると、歩き出した。

どこへ行くべきかも、すでに分かっているように。


そんな友人であったはずの背中を、俺は黙って見つめていることしかできなかった。

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