共存するもの 独立するもの
巨大大陸はセブンの作り上げたメトロ交通網の
広がりと共に異種族間の交流も広がりを見せ
小さな国であっても
活気が見られるようになっていた。
ただ、メトロには適していない火山帯近辺には
閉鎖的な種族が固まっていることもあり、
種族間での諍いが絶えることがなかった。
ロキの娘ヘルの地獄門解放事変を制圧したセブン達は
人族の辺境伯ガイスラーから聞いていた
赤い龍人族の捜索を継続していた。
『セブン、
二時の方向で魔法の発動が
多く感じられるのだわ。』
ランクアップの恩恵でサラには魔力感知の能力が
備わっていた。
認識阻害魔法をかけていても強い魔力があれば
感じ取れるという優れものだ。
『あ、当たりだな。
あの二足歩行のトカゲっぽい人達が
暴れてるね。
魔法を正面から受けてるな。
かなり丈夫な体してるんだろうな。
行ってみますか。』
フライングユニットをステルスモードで飛行していた
セブンとサラは小さな町に向けて加速していった。
「ダメだ!弱い魔法は効かないし、
強い魔法をぶつけてもすぐに復活してくる!
剣で倒してくれ!!」
「無茶言うなよ!硬すぎて剣が刃こぼれどころか、
当たりどころ悪かったら折れるんだぞ!
そんな相手にぶつける剣などここにはない!
泣き言いう暇あったら
魔力全開でやっつけろよ!」
「ふざけるな!
もう魔力切れしてる戦士がほとんどだ!
俺ももう立てん。もう無理だ。」
セブン達が上空に到着した頃、
小さな町の魔族の戦士達は
地面に伸びていたり、
へたり込んでいるものばかりになっていた。
『サラ、
見た感じ死者がいないようなんだけど。』
『そうね、気絶している人はいても
命はあるみたいね。
どういうことなのかしら?』
セブン達が訝し始めた時、
赤い龍人族の戦士の一人が
大声をあげた。
「どうだ!我らの力と技、思い知ったか!?
ここは我らの町とするぞ。
この町の長よ、降伏するか!如何に!?」
へたり込んでいたやや身なりの良い装備をした戦士が
ふらふらと立ち上がった。
「・・・お前達の力は認めよう。
だが、町の者に危害を加えるというのなら
死んでも歯向かう。
降伏後の処遇は如何に?」
「この町を明け渡せ!人質など不要だ!
我らは領土拡大が目的だ。奴隷もいらぬ。」
「・・・そうか、受け入れよう。
皆、すまん。ここを出て西に行こう。」
家の中で隠れていた人達もゾロゾロと荷馬車に
食糧などを積み込んで移動の準備を始めていた。
その間、赤い龍人族の戦士達は攻撃することなく、
魔族の民が町を出ていくまで
ずっと見守り続けていたのだった。
無人となった町に赤い龍人族の戦士達が
入り込み始めていた。
セブン達は干渉する事なく中立の立場で見守り続け、
赤い龍人族は事前に宣戦布告も行い、
相手を死なせることなく、加減をしながら退けられる
力と技があるようだ。
ある意味正統な戦士達であると思われた。
『一旦帰りましょう、セブン。
監視用のバグドローンの展開を
忘れないことね。』
『了解、領土拡大目的か。
これからもそこここで起こることなんだろうな。
拠点に戻りますか。』
フライングユニットを急浮上させ、ロフテッド起動で
中央平原の拠点を目指し移動を始めたのであった。
その頃、人族の王都に来訪した一団があった。
金髪で褐色肌を持つアトランティス帝国の
文官達のような集団であった。
何でも、
東の海上に新たに小さな島を建設しているので、
これからは魔石の供給をする代わりに、
肉類や農作物との交易をして欲しいという
嘆願書を持参していた。
連戦連敗によって海中にある帝国は疲弊し、
国王は王子達の謀反によって更迭され、
代替わりしたのだそうだ。
これからは閉鎖的な孤独な道ではなく、
開かれた共存の道を歩みたいとの
ことだった。
人族の新国王フレイヤは快諾し、
港の一角を交易専用の場所として
貸し出すことを話していた。
まだ深海に止まっているが、
ゆっくりと浮上する魔法術式を
展開していくので、
数週間後には帝国の本土が海上に
姿を現すことになるのだそうだ。
その時には新国王と新帝国王の会談の場も設けたいと
文官達は書状を交わし、持参していた魔石と交換した
肉類、野菜類を持って海中に消えていった。
これにより、アトランティス帝国の脅威は
小さくなったと拠点内での会議では
好意的に取られていた。
パティシエの街の神殿に居座っているシヴァが
紅茶を飲みながらふと顔を上げてパイロに話しかけた。
「そういえば、このところ巨人族との
念話が出来んようになっておるのじゃ。
あやつらは、長らくの平穏な日々に
浸り切っておった。
もう戦いの日々に戻る気はないようじゃったが、
どこかに移動したのやもしれぬな。
パイロの方で何かわかるかえ?」
「あたいは巨人族の船に入ってないから
わかんないけど、
セブンとカイは潜入していたから
何か分かるかも。
拠点に帰った時に聞いて見る感じでいいかな?」
「良い、急ぐこともなかろう。
しかし、今日のプリンアラモードも
絶品であったな。
パイロといると毎日が至福の日々じゃ。」
その横ではすっかり神殿住まいに慣れ親しんだ
ブリュンヒルドとカーラが神官の蓮と一緒に
大きなプリンアラモードと戦っていた。
お昼を食べてすぐのスイーツであったが、
シヴァの別腹はスペースが大きいようだ。
「セブン様、
南の巨人族の船の位置情報が消えております。
嫌な予感がします。」
「俺もだ。
今更シヴァ神と別れて独立するって感じも
ないように思えたんだけどな。
ちょっと捜索に出てみるかな。」
シックな黒のテールコートから
やや胸元を開けた涼しげなデザインの
白いメイド服に着替えて、
ボディも管理用アンドロイドから
最新型電脳兵に換装したカイが
セブンを見送っていた。
(セブン様、
あなたの寿命のことは
サラ様もご存知なのですよ。
もう少し気を使ってあげてください。)
フライングユニットで飛び出す
セブンの後ろ姿を見上げながら、
少し悲しげな顔をするカイであった。




