第二の3Dホロナビゲーター
森林破壊の痕跡を無理やりなかったことにしたつもりになっている
電脳兵のセブンは、魔力切れを起こしてしまった。
サポートアンドロイドのサラが拠点から射出したフライングユニットを
装着して拠点に向け移動を開始した。
「はずだったんだけど!通り過ぎてるんですけど!
地味に木に当たりそうな低空なんですけど!どうなってんの?サラ先生!」
『あら、飛び回りたいというご希望にお答えした自動飛行モードを
セットアップして差し上げたのだけれど、感謝されるのは当然として
非難されるいわれはないのだわ。
そうね、フライングユニットのサポートナビゲーターなのだけれど、
本来のバックグラウンドナビゲーターから3Dホロナビゲーターに
アップグレード出来ているから、彼女を起動することをお勧めするわ。
私の一つ下の階層のナビゲーターの位置づけで、私が第一管理権限者になっているわ。
眼内モニターのサポートシステムの一覧に更新されているから確認をお勧めするわ。
ナビゲーターの名称は カーラ だから、間違えないように気をつけることね。』
えっ?3Dナビゲーター増やせるの?
だったら、俺がチョイスしたかったな。
『何の目的を持って選択したかったのかしら?
おしとやかなナビゲーターを希望していたわよね?
私の方で叶えてあげたのだから感謝して貰いたいのだわ。
あら、感謝のしるしのクッキーがとても美味で、紅茶に合いそうね。
クロにも分けてあげているから安心して空の旅を満喫するといいのだわ。』
え”っ? べ、別にチョイスにこだわりはない、ないと思いますよ、ええ。
そうそう、そのクッキー濃いめの紅茶に合いそうな味がするんだよね、うんうん。
って!待って!サラ先生待って!一緒に満喫したいから!
空の旅はどうでもいいから!!
『じーーーー。
そうですか、空の旅はどうでもいいのですか、そうですか。
実体のある連中など滅びればいいのです。』
飛行中の俺の目の前に突然見慣れない、黒髪ショートで赤い瞳の身長30cmの
少女が現れて、呪いの言葉を吐き始めた。
「あれ?3Dナビゲーター起動させていないんだけど?
もしかして、あなたがフライングユニットの3Dホロナビゲーターの
カーラさん?」
『もしかしなくても、サラが起動させてくれたのでここにいるのです。
いてもいなくてもいいような影の薄い女なのです。
では、どうでもいいようなのでこれで落ちるのです。』
「いやいや待って!ごめん、謝るから落ちるのはやめて!
いや、一緒にブースターも落とそうとしないで!
それだと俺も落ちちゃうから! 全速力で森の中に墜落するから!
影が薄いんじゃなくてホログラムだから!実体ないから透けてるだけだから!
マジでごめん。謝るから拠点に戻って、お願い カーラ。」
『心が広いナビゲーターなのです。許してあげるのです。
対価として、アンドロイドの実体化を希望するのです。
クッキーなるものを食してみたいという願望があるのです。』
深緑色のロングヘア―をなびかせて、出来る女風のスーツを着こなしている
わがままボディのサラ先生と違って、カーラは黒髪ショートで
青色ベースのちびっ子用ガールスカウト風の服装で、
小さめの緑のベレー帽を斜めに乗っけている。ちびっ子軍曹っぽいな。
「いやー実体化かぁ~。サラ先生にお話ししないと勝手には出来ないなぁ。」
『オ、オハナシは不要なのです。次の機会でもいいのです。
首筋付近の気温の低下を感知したので、拠点に向けて移動するのです。』
「悪いな、カーラ。
誰かがホロサポートについてくれないと俺だけじゃ能力不足らしいんでね。
貧乏くじ引いたと思ってあきらめてくれ。」
『えっ?能力不足なのですか?・・・((禁則事項))・・・
そ、その通りなのです。頼ればいいのです。では、急いで戻るのです。』
「え、今何かエラーメッセージ出た?
違う?別の指令系統エラー?あー俺がマスターじゃなくてサラなのね。
これからもよろしく、カーラ」
『こちらこそよろしくなのです。セブン。
(あなたは、いえあなたたちは・・禁則事項が重いのです。)
少し高度を上げて戻るのです。』
少し沈んだ顔を見せたカーラがフライングユニットを操作し、
拠点を目指すのであった。