巨大な神
ロキの放った黒い槍に貫かれたシヴァは、
全身が黒い炎のようなものに覆われ、
側にいたパイロを突き飛ばした。
「滅ぼす!全て滅ぼしてやる!!
この目に映るもの全てを!!!」
狂ったように激しい大声でそう言い放つと、
シヴァは胸の前で両手を奇妙な形で構えた。
突然空は黒くうねる雲に覆われ、同時に
細い木は即座に折れてしまう程の
暴風が吹き荒れ始めた。
その暴風の中、シヴァの周りから
黒い渦が沸き起こると、地表を滑るように火炎が
広がっていった。
さながら地表を走る火の龍のようであった。
街並みは火の龍に瞬く間に飲み込まれ、
すぐに激しい風に煽られ、
火柱を散らしながら燃え上がっていく。
「シヴァ様、やめてっ!!
落ち着いてっ!!
私の声を聞いてっ!!
お願いっ!!お願いっ!!」
パイロが暴走を始めたシヴァに取りすがろうとしたが、
振り払われてしまった。
シヴァは俯いて何か口遊んでいるようだが、
聞き取れない程風が強まっていた。
「まだまだ足りないよ、シヴァ神様。
もっと壊してもらわないとね。
よーし、一気に決めてしまうとしようか。
『ヨルムンガンドよ、
力を見せてみよ。
この大陸に上がり暴れ回れ』」
『お父様のお心のままに』
突如海面が大きく盛り上がると、
巨大な蛇らしき鱗のあるものが姿を見せた。
その反動で大きな津波が発生し、
街は高台の麓まで飲み込まれて行った。
更に追い討ちをかけるように、巨大な蛇の胴体が
港からのし上がって来だした。
シヴァの暴風と炎で焼かれ、
今また津波でダメージを受けたところに
巨大な胴体でローラーに潰される感じで、
何もない大地に変えられてしまいそうだ。
「スルトの炎の剣はいい仕事するねぇ。
ミョルニルはないからヨルムンガンドだけででも
この大陸は押し潰せそうだね。」
その時、黒い雲がうねる空が更に暗くなった。
ロキが空を見上げると、ヨルムンガンドより大きな影が
空を覆い尽くしていた。
「神龍にしては大きいね、よく見ると首の数も違うね。
どこから来たのか知らないけど、邪魔するのなら
消えてもらうよ。」
「ほぉ、我を消すとな。
面白いことを言うのだな。
これ子龍よ。海の中で静かにしておれ。」
天から伸びて来た巨大なかぎ爪が、
ヨルムンガンドの胴体をつまむように持ち上げると、
ひょいっと海に向けて放り投げたのだった。
投げられる拍子にどこか傷かついたのか、
胴体の表面から光の粒子が溢れるように流れ落ちていた。
胴体が海面に落ちる頃には、
その身は急激に細く小さくなっており、
落ちる時には30m程度の蛇の姿に変わり果てていた。
「・・・」
言葉をなくして呆然とするロキがいた。
「いや、大丈夫だ。
スルトの力と混ざったシヴァがいれば、
ここを滅ぼせる。」
シヴァが大声をあげて天を仰ぐと、
その身が一気に巨神化し、
100mを超える邪神の姿に成り果てた。
「嫌だっ!シヴァ様!!正気に戻って!!
お願いだから、お願いだから・・・」
あまりの神力の強さに威圧され動けなくなったパイロが
シヴァの変わり果てた姿に涙している。
「ふむ、どうやら我はここまでの助力で良いようじゃ。
後は任せるぞ、神徒セブンよ。」
「悪い、遅くなったな。」
セブンはパイロの頭をポンポンと撫でながら謝っていた。
「さて、シヴァ神様にはちょっとお仕置きが必要かな。」
セブンはバーニアをふかしてシヴァ神の正面に回り込んだ。
「君に何ができると言うんだい?
もう邪神化したシヴァを抑えることなど出来はしないよ。」
「黙れ!
金剛陣!」
ロキの周りを金色の球体が覆い尽くした。
「無駄なことをするねえ。
こんな魔法の壁なんて僕にはないのと同じだよ。
神槍じゃないけど、これでも十分だよ。」
そう言うとロキは何処からか黒い槍を取り出し、
球体の壁を突いた。
「ガインッ!」
槍は音を立てて弾かれてしまった。
「・・・なんだいこれ?
ノルンの魔法の壁じゃないね?」
「ご名答。俺の守護神の権能の一つだよ。
前の世界で身につけていた俺自身の守護神の力さ。」
セブンは天道家に養子入ってから養父から
天道家伝来の水神の陰陽術を引き継ぐと同時に、
彼自身の守護神の力を使う術もその身に叩き込まれていた。
錬成した金剛鈴を手にしたセブンは流れるような所作で
印を結び、陰陽術を行使した。
「オン バサラ ヤクシャ ウン
金剛夜叉明王よ我に力を!」
セブンの体は邪神と同じ大きさに巨大化し、
彼の守護神である金剛夜叉明王の姿となっていた。




