黒い槍
午後の日差しが強まる巨大大陸の西の街の海辺で
傍目には双子の姉妹が話し込んでいた。
「やはりそうであったか。
あのものに誑かされて
危うく間違いを起こすところじゃったな。
して、ルドラよ。
何ゆえ第3の目を閉じておるのじゃ?」
綺麗な金色の目をした赤い髪の女性が、
同じ色の髪をした赤い目の女性にそう話していた。
「あ、あたい、孤児だったみたいで
お寺でパイロって名前付けてもらったんだ。
シヴァ神様みたいな綺麗な第3の目は
持ってないんだけど?」
「何と!孤児とな?
生まれ変わりというものかえ。
苦労をしたようじゃな。
悲しみが身にまとわりついておるわ。
ふむ、第3の目が開いておらぬのは
不便であろう。
どれ、私が開いてやろう。
一度目を軽く閉じてみよ。」
そう言うとシヴァはパイロの額に手をかざした。
掌から金色の光が溢れ出て、
パイロの額に吸い込まれていく。
「良いぞ。ゆっくり3つの目を開けてみるのじゃ。」
その声を聞いて、パイロはドキドキしながら
ゆっくりと目を開いた。
3つの赤い目が金色の目に映り込んでいた。
「えっ!
なんか見え方が変わってる感じなんだけど。
凄い!ものすごく遠くまで見える!!
あれっ?この感じ
アグニ様の炎の力が見えるところに
使えそうな感じがするんだけど。」
戸惑うパイロを優しい笑みを浮かべて
見つめるシヴァがその目の使い方を話し始めた。
「まず、私の第3の目を見つめながら
頭の中で話かけてみるのじゃ。
『そうじゃ。
これでルドラと私は念話が繋がったのじゃ。
離れておっても話せるのじゃ。
もう1人ではないのじゃ。私がおる。
ほぉ、気の合う仲間もおるのか。
今は幸せなんじゃな。羨ましいことじゃ。
そうか、私も混ぜてくれるか。
楽しみじゃな。
さて、アグニか。
炎の破壊神と言われた
ルドラシヴァの名の方が
私には馴染み深いのじゃが、何でも良い。
パイロと呼ばれる方が良いと申すか。
ならばそう呼ぶとしようかの。
私のこともシヴァと呼んでくれ。
力の方は急には使わぬ方が良いぞ。
慣れぬうちは加減ができんのじゃ。
ここだけの話じゃが、加減をしくじって
やらかしたことがあるのじゃ。
私の二の舞はせぬようにな。
うむ、そのしくじりで
国一つ滅んだくらいじゃ。』」
ふと、シヴァはパイロの頬に手を添えて
じっとその顔を見つめた。
「不思議なものじゃな。
同じ力を持つものが目の前にいるのは。」
そう言うと、シヴァは3つの目を閉じて、
ゆっくりと開いて見せた。
パイロの目が驚きに見開かれた。
全く同じ赤い目の色の自分の顔がそこにあったのだ。
「どうじゃ?同じじゃろ?
体つきはパイロの方が
少ししっかりとしておるな。」
「あ、あたいは電脳化された機械の体なんだ。
普通の人族の体とは違って、心臓とかないし、
眠る必要もないんだ。」
悲しげな表情でそう話すパイロに、
シヴァは微笑みを浮かべた。
「私も同じようなものじゃ。
パイロも神の1柱なのじゃから、
別に眠る必要がないのは普通じゃぞ。
逆に寝ようと思えば百年でも眠れるのじゃぞ。」
「それだけじゃないんだ。
あたいは前の世界でも電脳兵として
たくさんの人の命を奪ったんだよ。」
「何じゃそのくらい。
私なんて国を滅ぼしまくっておるのじゃぞ。
気にするでない。
世の民には我らは破壊神と
言われておるくらいじゃ。
民は都合次第で時に崇め、時に恨みと
勝手なものじゃ。
せめて、この世界では
静かにしておきたいものじゃな。」
「うん、あたいもそう思うんだ。
この世界で子供達が喜ぶようなものを作って
笑顔に囲まれていたいんだ。」
「それも良いの。私も混ぜてもらうかの。」
「うん、そうしようよ。
でも、シヴァ・・様。
巨人族の人達はどうするの?」
「うむ、今はまだあの船は動かせんのじゃ。
いや、ずっと動かさん方がいいのじゃ。
あれらもあの地でゆったりと
過ごしたいようじゃしな。」
その時シヴァのお腹から黒い槍のようなものが
突き抜けてきた。
「ぐっ!!」
「シヴァ様!!」
「それじゃあ、困るんだよね。
シヴァ神様には破壊神らしく
暴れまわってもらわないとね。」
数m離れた海の上に立つ男がそう言って、
口の端を吊り上げ嫌な笑みを浮かべていた。
「お前っ!!」
パイロの炎が男を内側から焼いていく。
「あっはっはっは。熱いねぇ。
普通なら死んじゃうよ。
危ない力だね。
でもいいのかな?
僕の相手なんてする余裕ないと思うよ。」
黒い槍のようなものはシヴァの体の中に
溶けるように消えていき、
シヴァの体全体が黒く染まり始めた。
途端に、全身から黒い炎のようなものが沸き起こり、
パイロを突き飛ばした。
シヴァの真っ赤な目は、パイロを突き刺すように
睨み付けていた。
「滅ぼす!全て滅ぼしてやる!!」
シヴァの狂声がパイロに突き刺さったのであった。




