魔力のご利用は計画的に
過去の回想から異世界に転移している現実に戻ってきた、
電脳兵のセブンは、破壊的な水魔法の爪痕をごまかす作業を終え、
今や美人アンドロイドナビゲーターと変貌を遂げたサラと
日に日に巨大化する元子猫のクロが待つ拠点に戻ろうと、
反重力ユニットで宙に浮かせている足を一歩前に動かした。
「やっぱ、添え木だけで 直しました はないよなぁ。」
見渡す限りの森の木立すべてが、幹の中ほどのあたりで
添え木と蔦のようなもので、雑にぐるぐる巻きにされている。
「水の隕石で折れるとは思いもしなかったな。
許せ、森の木達よ。
自分でやっといてなんだが、ミイラパーティーの会場みたいだな。
やっぱ、再生魔法使ってきれいに戻してあげようかな。」
ステータス と念じて ホロスクリーンを空中に表示させると
その中から スキル の 支援魔法 を選んでみた。
完全蘇生 という、欠損部位の修復と生命体の蘇生が同時にできる
範囲魔法だそうだ。
ステータスの魔力ランクがCなんで、30m円内の範囲で
日に2回まで使用できるんだそうだ。
さっき魔力は水魔法で使ってるから、一回分残ってるのか不安だけど、
限界も知りたいし、使ってみるか。
見渡す中で一番幹の太い木を中心にして使ってみることにした。
発動は念じるだけでいいそうだ。
完全蘇生!
目標の木からぶわっと虹色に煌めく粒子が
緩やかな波形を描きながら広がっていく。
「癒しの波長って感じだな。
んっ!?体が重い、いや各関節ユニットがきしむ感じだ。
高圧電磁砲がかすった時よりやばいな。
あの時も制御チップが飛びかけて何もかも重く感じたっけ。
逆位相の相殺照射が間に合わなかったら、やばかったもんな。
これ、しばらく行動不能になるみたいだな。
またやっちまったなぁ。」
『今のは美しい行為だわ。気にするところはそこではなくてよ。
反省することより、魔力ランクを上げる努力をすることをお勧めするわ。
今から、フライングユニットを射出するから
ユニットの自動飛行で戻ってくるといいのだわ。
ジョイントシークエンスオーダーのセットアップはリモートで実行するわ。
今は挙動の悪い関節ユニットを無理に動かさないことをお勧めするわ。』
サンキュー、俺の女神サラ様。助かるよほんと。
フライングユニットか、飛ぶんなら平原の方に行ってみたいな。
木立の間抜けて反重力ホバー移動するのは面倒なんだよな。
『魔力切れの症状が治まってから行くことをお勧めするわ。
平原の様子はバグドローンの映像で確認できるわね。
見る限り草原という表現の方があっているわね。
草の葉が風がそよいでいる様子は見ているだけで癒されるわね。
そう、あなたのアイテムボックスなのだけれど、
私にも使えることが確認できたわ。
中に手違いだとしか思えないような不要物が紛れ込んでいたから
取り出しておいてあげたわよ。感謝して欲しいのだわ。
親切で廃棄しようかと思うのだけれど、どうかしら?』
いいえ、平原には草がそよぐより、立派な毛並みがたなびく
魔獣様方が所狭しとはびこっておられて、たえず血の匂いがする、
戦場のような気配でむせそうなんですけど。
えっ?不要物って何?両手剣?丸盾?アーマー類?
どこかで交換するか売れるなら売ればいいかと思うんだけど。
えっ、違うんですか。な、何か紛れ込んでましたっけ?
お、おかしいなぁ、はははっ。
・・・あ!おかし。。
も、もしかして、その不要物の見た目はクッキーのようなものでしょうか?
ビターチョコのようなものでしょうか?
(アーマー類の中に忍ばせておいたから
見つかりにくいはずなんだけど。。)(小声)
はっ!、認識共有状態だからか・・・。
あのですね、サラ先生、どちらも心の栄養として必要なものなのです。
ささやかな楽しみなんですけど。
えっ?戦闘には不要な持ち物って、そんな。。(´・ω・`)
あっ!!お供え用にも必要なんですけど!そうです、そうです!
女神さまの神殿にお供えしないと天罰が下るかもしれないんです!
なので、平和維持のためにも是非キープの方向でお願いします!
『よくそんなにこじつけた言い訳ができるわね。
そう、さっきも私を女神様って思って感謝してくれていたわね?
私もアンドロイド化して味だけは分かる仕様になってるから、
お供え物として美味しく頂くことにするわ。
ゆっくり戻ってくることをお勧めするわ。』
いやいや、待って。女神様待って。
お供えは共に分かち合わせて頂きたいです。
フライングユニットはよ!クッキーとチョコの命がやばいんだよ!はよ!
まさしく、飛ぶような勢いで装着して、出ることはないが
涙目で拠点に急ぐセブンであった。
「おやつ達待ってろよ~今行くぞ~」