女神の覚悟
セブンとカイが不在の猫獣人族の村の拠点に異変があった。
その場にいたサラ、クロ、パイロ、カーラ、ブリュンヒルドは
突然白い靄に囲まれたのだ。
「あ、これはノルン様からの召喚だね。
ブリュンヒルドはこの前一緒にお会いしてるから
わかるよね。
サラ、パイロ、カーラ 心配しなくていいよ。
もうすぐお見えになられるから。」
クロがいつもの事だよという感じで話しかけてくれたので
パニックにはならないが、お互いの姿を確認出来ない事が
孤独感と共に少し不安にさせるのだった。
「急に呼び出してごめんね、みんな。
姿もはっきり見せられないのも重ねてごめんね。
いいタイミングだったから、
色々直接お話ししたいなと思ったんだよね。
私がこの世界の運命の女神ノルンの1柱、
スクルドよ。
ここに呼べる時間は限られてるから、
早速お話に入るわね。」
靄の中から透き通るような声が響き、
途端に暖かな安心感に包まれ、
穏やかな気持ちで話を聞ける精神状態になった。
「まず、この世界と並行世界でも時間律の異なる世界と
交わるはずのない交わりが生じてしまっているの。
ここにいるみんなもクロとブリュンヒルド以外は
それぞれ別の世界から召喚されてきた存在なの。
時間律だけで見たら、ブリュンヒルドが一番過去の世界から、
次にカーラね、そうそうシグルーンという呼び名もあるわ。
その次は、クロね。長命の精霊種なのよ。
あ、その次にはここにはいないけど蓮がいるわ。
次が紗良とセブンね。
最後はパイロ、あなたなのだけど、
あなたがこの世界に召喚された歪で
あなたと因果律で重なっているシヴァ神が
過去の世界から引き込まれてきているわ。
セブンが調査してるでしょうからいずれ分かることだから
話すのだけど、南の海の巨人族の人達は
別の異世界から転移してきた存在なの。
向こうの世界で神の禁忌に触れて、
時間の牢獄、時の歩みが遅い神罰を受けてしまっているわ。
そこにシヴァ神が降臨しているのだけれど、
彼女の気性は急変するから、予測できないのよね。
この時間律の歪みと交わりは、今拠点にいるロキ神とは
同じであって同じでないロキ神がやってくれたみたいなの。
お陰で私にも未来予測が立たなくて腹立たしいのだけど。。
っと、そんなこと言ってる場合じゃないわね。
この先、神が関わる戦争が始まってしまったら、
私も顕現して一緒に戦うわ。
その時がきてしまったら、みんなも力を貸して欲しいの。
特に、パイロ。あなたには酷なことになるかもしれないわ。
もう1人のあなたと戦うことになるかもしれないの。
そうなると、あの巨人族の戦士達は
禁断の兵器を持ち出すかもしれないの。
かつて、彼らは信じる神にかけて激しい戦争をしたの。
地上に命が生きられる場所がなくなるくらい激しい戦争。
紗良やパイロなら知っているわね、核戦争よ。
相手はこの世界に転移してきているアトランティス帝国。
彼らは地上に見切りをつけて海中に生きる希望を見出したの。
ただ、前の世界の神の怒りを買ってしまっていたから、
海中に沈む時に丸ごとこの世界に転移させられて、
兵器類も取り上げられているわ。
だから、今一番危険なのが巨人族なの。
彼らはまだこの世界を滅ぼせるだけの兵器を持っているはずよ。
私はこの世界を守りたいの。
戦争は絶対ダメとは言えないけれど、
世界全てが滅ぶようなのは絶対ダメ。
私の存在がここから消えるとしても抑えるわ。
私1人じゃ難しいの。お願いみんなその時が来たら力を貸して。」
覚悟を決めたような強い声が響くと、
「もちろんだ、その為のバルキュリヤなのであろう。
存分に力を奮ってやろう。」
「あたいもやるよ。
もし、シヴァ神様、多分アグニ様だよね?
あたいの陰陽術の守護神様であったとしても
この世界のためなら頑張って守るよ。」
「カーラも、スクルド様と共に戦うことに
異存は無いのです。」
「私も微力ながら一緒に戦わせていただきますわ。」
「大丈夫だよ、スクルド様。
みんなで力を合わせればきっと大丈夫だよ。
だから、顕現しなくていいよ。
ここに戻れなくなるよ。」
スクルドは顕現することで自らも神の戦士として戦えるようになるが、
二度と女神として神の世界に戻れなくなるようだ。
「紗良と同じ気持ちなんだよね。
みんなに命がけで戦わせておいて
私だけここから見てるだけなんて
耐えられないの。
公平に見ないといけない女神失格なのだけど、
その時が来たら、私は女神であることを捨てて
1人のバルキュリヤとして一緒に戦うわ。
だからお願いね、その時が来てしまったら、
力を貸してね。
ごめんね、もう時間切れになっちゃった。
またね、みんな。」
「「「スクルド様」」」
皆で声をかけた途端に、靄が消え去り、
いつもの拠点に佇んでいた。
「やあ、お帰りっていうのかな?
神界に行ってたんだね。
まぁ、予想はつくけど、
スクルドが下界に降りて来なくてもいいように
僕が頑張ってみるよ。
原因は僕にもあるからね。」
テーブルで紅茶を嗜んでいたロキが
細い目に力を込めながら、
そう話しかけたのであった。




