忘れられた者達
そこは全体的に薄暗い感じのする空間。
日の光ではない光がかなりの高さから
照射されているかのようなぼんやりとした
不確かな雰囲気の漂う空間が広がっている。
音を立てずに滑るように歩みを進める者がいる。
身長が4mもあろうかという巨人族の男達であった。
彼らは機械の体ではないが、額にある第3の目の力で
念動力や念話の異能の力を持っている。
肌の色は薄く透明感がある。
目の色は赤く異能の力を使う時は薄く光る。
髪の色は透けているような透明感のある赤色で
鮮血が流れているかのように見えるほどだ。
声を発するものはなく、
ひたすらに静寂がのしかかっている。
(人為的な接触などいつ以来であろうか。)
艦長と呼ばれた男は3Dホログラムを見つめながら
ふと時の流れを思い出すように記憶を辿り始めた。
彼らはいつの頃からかこの海域に
不可視の巨艦と共に存在している。
その巨艦は100km円内になんとか収まるような
異常な大きさであった。
更にその船体は汚れることを知らぬかの如く
淡い白い光を放っていた。
静止衛星軌道上のドッグから出て、
外宇宙探査に向け、初の次元航行を実行した結果、
次元の波にのまれ、外宇宙へ飛び出すことなく、
異次元の静止衛星軌道上に転移してしまった。
更に悪いことにメイン動力炉が致命的な損傷を受け、
大気圏突入用のシールドを張った状態で落下し、
今の海域に止まらざるを得なくなったのであった。
(反重力動力炉も予備しか動かん状況のまま
もう何千年の時を過ごしたのであろうか。
我らを知る者はもういないのではないか。
我らは忘れられし者となり果てたか。)
次元航行失敗の影響なのか、彼らは歳を取らなくなり
この海域から取れる海産物と艦内のプラントで生産している
植物類で食をつないできていた。
水は海水を分離装置にかけて得ている。
(シールドを完全に解除すれば、
このまま海の底に沈むことになる。
部分開放でなんとかなってはいるが
動力炉のコアが予備も含めて破損するとはな。
すぐに滅ぶと覚悟をしていたが、
まさか不老の身になるとはな。
時間だけあったところで、何にもならん。)
彼らがこの星を離れるきっかけになったのは
巨大戦争による大気、大地の汚染が原因だった。
信じる神を巡る国と国の争いは、
地上に人間が住めなくなるほど苛烈を極めた。
新天地を求めて巨大な移民船を
静止衛星軌道上で建造し、
汚染の影響で苦しむ民も含めて
この星から脱出するはずだったのだ。
(これはシヴァ神様のおっしゃられる通り
神罰なのであろう。
しかし、よもやシヴァ神様が顕現されるとは
思いもよらなかったな。
さて、かの接触者についてシヴァ神様に
お伺いさせて頂くとしよう。
これ以上踏み間違えるわけにはいかんしな。)
その男は3Dホログラムから目を離し、
気配なく部屋から出て行った。
3Dホログラムの球体の南側の部分に、
海水取り込み開始のサインが浮かんでいた。
(凄い吸引力だな。
ミニダイビングユニット錬成しといて正解だったな。
さて、やっぱ船か。
上がらずにこのままバグドローンに頑張ってもらうかな。)
アメンボ型ドローンをばら撒くと、水面を滑るように移動し、
ばらばらに飛び立って行くのであった。
(この船、何の金属で出来てるんだ?
データにない金属だな。しかもめちゃくちゃ硬い。
なんかヤバそうだな。)
セブンのデータに存在しない高強度の金属、この星で
最高硬度を誇るというアダマンタイトで形作られている。
彼らのいた世界での基準であるが。
『シヴァ神様。
恐れながらご相談させて頂きたく参上致しました。』
艦長と呼ばれた男が金色の玉座に腰掛ける、
奇妙な髪型の女と思しき相手に念話で語りかけた。
顔を伏せてはいるが第3の目がその女を見つめているようであった。
その女と思しき者は左手に三叉の槍を携えていた。
念話に答えるように、女の目がゆっくりと開かれた。
淡く金色に光る3つの目が男を視界に捉えた。




