水神龍
セブンのスペースチタンブレードで切り裂かれた
シグルーンは半身になった状態で背後のセブンを
海に向けて槍で叩き落とした。
不敵な笑みを浮かべたセブンは、
復活する直前に無防備になる瞬間を見逃さず、
神鋼の金剛陣 で取り囲む事に成功した。
( 不可視の盾
こいつを足場にしてっと、
お義父さん、秘術を使わせて貰うよ。)
海上に不自然な姿で立っているセブンは、
虹色の球体に囲まれ、中で槍を振いまくっている
シグルーンを見上げ、神妙な面持ちで精神を統一し、
流れるような所作で両手で印を結んだ。
「オン ナンダ バナンダ エイ ソワカ
水神龍よ、顕現せよ。
水神昇竜 !」
海面上に薄黒い渦が沸き起こると、
突如として全身が水で出来ているような青く透けた
細長い龍が天に向かって伸び上がっていった。
その途中で虹色の球体を飲み込んだように見えた。
その龍はあっという間に天高く飛び去っていき、
すぐに見えなくなってしまった。
「なんじゃあれは!」
「透明な神龍様とでも言うのか!?」
「あれはセブンが行使した陰陽術という
そうですね、霊力とでもいうのでしょうか。
この世界にはない法術といったほうが
わかりやすいでしょうか。」
一部始終を高台の砦から見ていたドゥルガー達に
サラはそう説明をした。
「ふむ、してサラよ。
あのシグルーンとか申す者は
何処に行ったのじゃ?」
「それは私たちにもはっきりとは分かりませんが、
あの術をかけられた者は神龍様達のいる世界、
時の概念も何もない無の世界に連れて行かれると
教わっておりますわ。」
「うむ、そんなところには行きたくないな。
さて、後はあの連中の始末だけじゃな。
連中、やけに静かじゃな?」
ドゥルガーは動こうとしない魚人兵達と空に浮かぶ
天翼族達を見て訝しんだ。
「おそらくセブンの仕掛けた攻撃の影響かと
思いますわ。
そろそろ衝撃波や大波が来るかもしれません。
セブンの 不可視の盾 で固めたこの砦なら
なんとか持ち堪えると思いますわ。」
そう言いながら、敵兵達とは反対側の東の空を
見つめるサラの顔には影が差していた。
「これ、サラ。その顔をするな。」
小声でカミュールがそう囁き、肩に手をかけてきた。
シグルーンが西の街に降り立ったと同時刻。
遠く離れた東の海上にあるアトランティス帝国の
島の中心部に向けて、静止衛星軌道上から
直径100m近い巨大な物体が落下を始めた。
宇宙資源探査船団が使っていたのと同サイズの
プラネットブレーカー、超重量弾だ。
大気との摩擦で真っ赤に染まったその一撃は
神の怒りの槍のように見えた。
帝国上空に張り巡らせられた魔法障壁を突き破り、
大陸の岩盤を貫くと同時に凄まじい衝撃波を放射状に
発生させ、帝国内の建物も人も全て破壊されていった。
大陸にはその後連続して巨大地震が発生し、
ついに大地が割れて、海中に没していくのであった。
同時に、帝国より少し北側の上空に浮遊していた
天空の国の本島にもプラネットブレーカーが叩き落とされ、
こちらはすぐさま島が破裂するように爆散し、
周囲の海上に猛烈な弾幕のように降り注ぎ、
この世界から姿を消したのであった。
この異変によって、魚人兵達の隷属魔法は解け、
念話魔法で交信していた天翼族の戦士達には
本島の最後を伝える通信が届き、
帰る場所がなくなり茫然自失の状態に陥ったのであった。
そのうち1人2人と地上に降り立ち、獣人兵の前で無抵抗で
捕虜になることを選んでいくのであった。
異変で発生した衝撃波は巨大大陸にも届いたが、
少し強い風のレベルに減衰されていた。
想定していた津波も発生がなく、
被害は最小限で抑えられたようだった。
(これでまた地獄で会う連中が増えたな。)
バグドローン経由で両島の破壊を確認したセブンは
いつものことだと言わんばかりに平然としていた。
捕虜となった天翼族の戦士達から天空の国について
色々と聞き出す内容の中に、気になるものがあった。
(何の冗談なんだ。これまでの戦闘は、
巨人族が目覚める前に不死の兵団を揃える為だと?
意味がわからん。)
勝利を祝う気もないセブンは、まだ拭いきれない不安感に
焦りを感じ始めるのであった。




