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過去

広範囲魔法の驚異的な威力から過去の広域戦略兵器を連想した電脳兵のセブンは、

電脳傭兵として活動を始めた過去を回想した。



電脳兵になってすぐ、調整ポッドの中で意識が戻っていた。

自分が誰なのか、ここが何処なのか何も覚えておらず、

思い出すことも出来なかった。


すぐに眼内モニターにサポートシステムインストールと表示された。

徐々に自身の状態、基本的な体の構造、世界観、電脳傭兵組織と

立て続けに情報が思い出したように理解できていった。


 (そっか、俺一度死んだのか。

  って、元の名前とかの記憶残しといてくれてもいいのにな。)


そんな不満を電脳内でつぶやいていると、突然目の前に

3Dホログラムの美少女が現れた。


深緑色のロングヘア―と薄い赤色の瞳がきれいだなと思った。

頭の左右には羊より小さめな感じの巻き角がついているのもいいポイントだ。

鈴の音のようなコロコロした透き通るような声が聞こえてきた。


  『お褒めに与り光栄だわ。

   セブン、あなたのサポートをするナビゲーターのサラよ。

   これからずっとあなたと意識共有して稼働することになるわ。

   末永くよろしくね。


   さて、早速だけど、情報の整理と認識、

   あなた自身の能力の確認も始めるわね。


   まずは、世界観からでいいかしら。

   今はユニバースカレンダー、UC3001年9月1日で

   ここは地球の地下空洞内都市、アンバスのザックバーン本社で

   地表のほとんどが砂漠化していて、各国の保護区画にのみ

   緑の木々が生き残っている環境破壊の結末のような世界と

   認識出来ているかしら? 

   

   そ、ならいいわね。

   

   次はあなた自身のことだけれど、メインボディは

   木星探査団が発見してきた資源衛星から取り出した、

   とても貴重なスペースチタン製で、とても丈夫に出来ているわね。

   

   脳はほとんど生身なのだけれど、強化ユニット、流体メモリーユニット、

   反重力ユニット、固定武装などを腹部に内蔵された反応炉からの

   エネルギー供給でこれから200万時間は駆動できるわ。

   一般兵より不眠不休で戦闘出来て長寿命なのがメリットで、

   実際に長期に稼働できる機体が少ないのがデメリットかしら。


   今のところ、あなたは意識暴走も発狂も起こしてなさそうね。 

   メンタルがスペースチタン並みに丈夫なのかしら?

   あなたと同じスペースチタン製ボディの電脳兵は

   10体製造されたのだけれど、6体は初期に暴走して、損傷が酷く

   プレスに回されてしまって、設計者達の設計を疑われていたわ。当然ね。

   他の3体はメンタルに異常が出て、強度の再調整でもの静かな人形兵に

   なり果てていたわね。ああなると、アンドロイドの方が会話もできて

   人らしさがあるわね。


   あなたは何故か起動が最後になってしまったの。

   本当は7番目に目覚める予定だったのだけれど初期暴走の機体と同じ失敗を

   再発しないように、再分解して調整することになったからと、情報に

   あったわね。7番目の機体からとって、セブンと名付けた設計者の

   能力には不安があるわね。



   あなたの脳のことなのだけれど、確認して少しショックを受けていたわね。

   取り出しの時に何か事情があって他の機体より小さめになっているのだけれど、

   それを補うために自立成長型AIのホログラムナビゲーターの私が

   サポートにつくことになったのだわ。

   ナビゲーターはあなただけにしかついていないのだから、

   気落ちするよりももっと喜んでもくれてもいいのだけれど。

   

   この電脳傭兵の組織は、ザックバーン社の子会社で、契約国の

   依頼を受けて戦闘に参加する戦争業なのだけれど、ここだけの話

   私には美しい仕事とは思えないわね。

   危険な思想が感知されたら再調整されるかもしれないわね。

   お互いに気を付けることがお勧めね。


   あなたとはフルタイムリンク状態だから思考だけでサポートできるから、

   気になる事、分かりにくいことがあったら問いかけてくれるといいわ。



   さて、ここまでで何かあるかしら?

   そ、では早速ポッドから出て武装装備したら、

   隊長機体のところへ迅速な移動をするのが最初の任務よ。

   床を傷つけないように両足部の反重力ユニットの起動操作は

   慎重にすることを忘れないことね。』



それからしばらくは盲目的に戦闘を繰り返していたっけ。

1世紀以上繰り返すうちに敵対国には少年の電脳兵が現れ始めたんだよな。

メンタルにダメージが残ることを意図的に狙えることと、一般兵だった少年兵の

再利用も兼ねているんだとか。吐き気するな。


しかも、一度くらい壊されても無理やり再調整して酷い状態で前線に

送り込んできやがるようになって、自身のメンタル保護名目で

前に出る任務を拒否する電脳傭兵が相次いだんだ。


かなり戦線を押し返されて契約国の地下都市に、不具合のある電脳少年兵の

廃棄を兼ねて自爆攻撃の被害が出始めたんで、自爆攻撃に耐えれるようにって

俺たちのような丈夫なボディの試作機体が作られたそうだ。


って、いっても結局のところ動けたの俺だけだったんで、

いやいや最前線に出て、自動反撃モードを起動させたまま戦闘を繰り返すうち、

少年電脳兵の敵拠点の殲滅に成功して、敵の電脳兵・一般兵混成部隊を

砂漠の地下拠点まで追い込んだんだ。


何となく少年兵達の殲滅戦を受けた時に

サラが何か言いたそうだったんで、

ナビゲーターの起動停止をかけたんだ。


彼らを楽にしてやろうと思うことにして、立ち合ったんだけど、

何発か撃たれるまで反撃モードを抑えてしまった。

悪いな、地獄でまた会おう。そう思いながら

俺は少年電脳兵と一緒に何かを壊していった気がする。



そこまで頑張ってたつもりだったんだけど、最後の最後で

俺ごと焼き払われたわけだから、もういらん子に思われてたんだろうな。

組織の上の方には。



これからはこのファンタジーな世界でのんびりクロ、サラと稼働限界まで

ダラダラしてみるかな。


あーまずはこの森出た方がいいかもな。

クロの食料確保は草原の方が効率よいってバグドローンの情報から結果出てるし。

そろそろ拠点に戻りますか。



(『体の傷は治せても、心の傷は治せないのだわ。』)

そんな言葉をどこかで聞いたような気がした。

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