バルキュリヤを統べる者
血のように赤い夕焼けに染まったような
全身血塗れの獣人兵が
ネコ獣人族の村に辿り着いた。
フェイズを見とめるや否や、
しがみ付いていた馬から滑り落ちた。
「完全回復 !」
すぐにセブンが回復魔法をかけつつ受け止めた。
拠点内に連れて行き、話を聞くことになった。
「そうか、またアトランティス帝国軍が来たか。」
大きな小麦色の耳をした狐人族の兵は
港町の守備隊兵であったが、
大群で押し寄せた敵軍に一方的に攻め込まれ
ほぼ壊滅状態になったと話した。
彼の親類も身を寄せたフェイズのいる村に
南の街の惨状と、次は恐らく西の獣王様の街が
狙われる事を伝えたかったそうだ。
壊滅と聞いてフェイズは腕組みをし、
深く悩んでいる様だった。
これまでの戦いにおいて
戦闘で命を落とした者を
セブンに蘇生してもらうことには抵抗があり、
極力使わない方向にしようと
拠点内で話し合いをしたばかりであった。
完全回復はまだしも完全蘇生は
神話レベルの魔法であるため、
人目につく場所での使用は避けるべきと
なったのだが。
「あ、フェイズさん、
俺ちょっと南の街の偵察をしてきますよ。
まだ、息のある人がいるかもしれないから、
助けられる人は助けてあげたいんだ。」
「うーん・・・。
セブン殿。お願いしたい気持ちはあるのだ。
だが 」
「お願いします!まだ瀕死の連中はいました!
どうか、助けてもらえるのなら、
どうかお願いします。」
狐人族の兵士が両膝をついて必死に懇願する姿を見て
フェイズは躊躇いを捨てる事にした。
「セブン殿。
虫がいい話であるが、この通りだ。
助けてもらいたい。
あそこには旧友がいるのだ。
交易を始めた頃からの仲でな。
もし、息があればいい、
その時は助けてやってはくれまいか。」
申し訳なさそうにネコ耳を垂れて
そうお願いするフェイズに
セブンは目に力を込めて返事をした。
それを待ってサラが指示を飛ばし始めた。
「セブン、
私達は先に西の街へ移動を開始するわ。
カイ、
ホバーユニットを2機借りて行くわね。
パイロ、ブリュンヒルドさん、
カイと一緒にこの村の防衛に専念お願いね。
フェイズさん、
獣王様のところに置いて来た
バグドローン経由で連絡をしましょう。
一応カミュール女王様にも連絡をしましょう。」
「あ、サラさん。
あたいのフライングユニット使ってよ。
その方が早く着くっしょ?」
「ダメよ。
ここに来ないと言う確証はないの。
天翼族の兵が攻めて来たら
フライングユニットがないと
どうにも出来ないわ。
向こうは船の移動だから、
バーニアで強化したホバーユニットなら
まだ間に合うはずよ。
クロも一緒に専守防衛に注力してね。」
「うん、もし攻めて来たら、
ボクはこの村に結界を張るよ。」
ブリュンヒルドと一緒にカップケーキを
頬張っていた、クロが可愛らしい手を挙げて
小さな肉球を見せてそう言ってくれたものの、
前より大規模な攻撃部隊だと
ヤバイかなと不安に思うセブンであった。
「これは酷いな。
この放射状の亀裂は何だ?
何か強烈な爆発かな?
にしては、真っ直ぐ伸びすぎだし。
分からんな。
やっぱ、見た人達に聞くのが一番か。
カーラ、
町の中心部上空まで移動しよう。」
「了解なのです。
蘇生魔法使う気なのです?
範囲が広すぎて届かない所が多いのです。
区画を分けて使う方がいいと思うのです。」
「大丈夫。
前の戦闘でまた魔法ランク上がって
効果範囲が
目視認識できる範囲 ってなってるから。」
セブンのステータスの魔力はSSにアップし、
各魔法の有効範囲は目視認識できる範囲という
曖昧な表記になっていた。
さらに、攻撃魔法に神槍召喚、
防御魔法に魔法反射、
支援魔法に神速が追加されていた。
(この神槍召喚って、主神様の言ってた
加護の力だろうな。
ヤバイ時にだけ使わせて貰いますよ。)
街の中心部の上空で滞空すると、
セブンは町全体を見下ろしながら、
連続で魔法を行使した。
「完全蘇生 ! 完全回復 !」
海の街全体が虹色のウェーブと
ダイヤモンドダストの煌めきに包まれた。
煌めきが治ると街並みが戻り、人々が起き上がり
少しずつ喧騒が湧き上がって来ていた。
セブンは前の交易の時にあったことのある、
虎模様のネコ獣人族(虎人族ではないそう。)の
漁師長を探して襲撃の様子を聞き出していた。
「ありゃあ、人族に見えたが
まったく別もんだな。
剣を合わせようもんなら
衝撃波で剣も人も砕け散るわ、
足元の地面もひび割れるわで
どうにも出来そうになかったな。
うん?
そういや、俺も打ち込んで
死んだような気がしたが?」
「いえ、かなり虫の息でしたが、
回復魔法が間に合って良かったです。
その相手の特徴とか武器とかも教えて下さい。」
聞けば漆黒の甲冑を身につけた金髪の戦士で、
背には光の帯のようなものが漂っていて、
光の槍を携えていたそうだ。
「ご丁寧に名乗りをあげてたぜ。
我はシグルーン、
バルキュリヤを統べる者である
とか言ってたが意味がわからん。」
「バルキュリヤ?」
拠点に残して来たブリュンヒルドに
カイ経由で聞いたところ、知らないとの事だった。
未知の敵の出現により一層の不安感を覚えた
セブンは、一路西の街を目指すのであった。




