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動き出す闇

ここは空の高みに浮遊する天空の島、

翼を持つ天翼族が支配する神国が繁栄していた。


周囲50kmを越える巨大な大陸だが、

全土を多重の認識阻害魔法で覆い隠し、

目視確認出来ない島だ。


そこへ小ぶりな島が所々から炎を上げながら

フラフラと接近してきていた。



闇の中で青い炎がゆらゆらと揺らめく

幻想的な空間から気怠げな声が漏れた。


 「あーあ、また負けたかぁ。

  やるねぇ、ノルンの神徒達は。

  バルキュリヤはまだ揃ってないよね。

  もう少し拮抗した方が楽しめるよね。


  さて、帝国の民に頑張って

  戦ってきてもらおうかな。


  いるかい?シグルーン。」


炎が微かに揺らぐと、力のこもった声が流れた。


 「ここに。」


片膝をつき頭を垂れた姿勢の影があった。


 「帝国の民を率いて攻め込んで来てくれるかな。

  そろそろここの終わりが見たいんだよね。

  頼んだよ。」


 「はっ、お心のままに。」


その声が流れた後、炎はすっと消え去り、

闇だけがあった。

いや、薄く赤く光る眼のようなものが

微かにあったように見えた。




 「いや、やっぱアーモンドはカリッと焼いてから

  混ぜた方がいいっしょ。」


 「それに一手間加えてカラメルソースに浸して

  固めてから混ぜてみましょう。

  この方が味わい深くなると考えます。」


 「いいね、いいね、それやっちゃおうよ。

  あたいがカリッと焼いたげるよ。


  こんな感じでいい?」


 「最適です。

  やはり調理技術のレベルがお高いですね。」


ネコ獣人族の村の拠点内で甘い香りを立てまくりながら

パイロとカイがチョコレートを作っている。


森の方まで材料を調達に行く時もパイロは同行し、

カカオマスの類似の木から収穫も手伝い、乾燥、

焙煎まで自己の能力で行なっていた。


あのカイが腕を認めるほど加工技術レベルが

高いらしい。


セブンはその傍で錬成した(させられた)リカーミルで

ぶつぶつ言いながら磨り潰し加工をしていた。


 「セブン!!また潰し過ぎよ!!

  さっきの潰し過ぎた分に粗挽きを混ぜるのだから

  加減に気をつけてって言ったはずなのだわ。

  どうしてこんな単純な事ができないのかしら。」


 「いや、俺、戦闘用の電脳兵なんですけど。

  電脳兵人生300年超えてるけど、

  こんな作業した事ないし。

  いや、作業依頼ある方がおかしいんだけど。」


 「文句言わないで手を動かしなさい。

  じゃあ、あなたは新作のアーモンド入りチョコは

  いらないと言う事ね?

  クロ、手伝ってくれるかしら。

  このチョコとさっきのを混ぜ合わせるわ。」


とうとうクロに仕事を取られる始末のセブンであった。


 「あはは、いいじゃん、セブンは錬成頑張ったんだし。

  でも、その練成っていいよね。

  おかげで大きなオーブンも出来て

  パン生地もケーキ生地も焼けるし、

  スイーツの幅が広がって楽しみが増えるっしょ。

  

  ここのネコ獣人族の子供達って超カワイイし、

  チョコあげてお姉ちゃんありがとうって言われて

  泣きそうになっちゃったよ。


  でも、普通のネコはチョコダメなんだけど、

  やっぱ獣人族だからなのかな、

  全然大丈夫って言ってたし。


  今度南の港町まで売りに行ってくれるみたいだし、

  テンション上がりっぱなしっしょ。

  こういう時電脳兵っていいよね、

  寝ずに作業に没頭できるし。

  毎日楽しいよ〜。


  あ、いい感じになってきた。

  サラさん、そろそろ混ぜられるよ。」


嬉しそうにチョコ作りに励むパイロを見ていると

普通の女の子だなとぼんやり眺めてしまうセブンであった。


 「ここにはパティシエがいる、いや、

  パティシエしかいない。

  拠点というより、お菓子工房だな。


  まぁ、こういうのもいいか。」


ホイップクリームを作りながらそう思うセブンであった。



巨大大陸の海の中、光も届かぬ深さの中を

ゆったりと蠢く巨大なものがいた。


その闇の中でぼんやりと揺らめく青い炎が灯った。


 「元気そうだね、ヨルムンガンド。」


気怠げな声がはっきりと聞こえた。


 「あ、あなたはお父様。」


 「いや、お前にそう呼ぶ事を

  許した覚えはないけどね。

  そうだ、俺の力になると言うのなら

  そう呼ばせてやってもいいか。

  どうしたい?」


 「お心のままに、従うまででございます。」


 「そう、話が早くていいね。

  ま、その時が来たら頼むとするよ、我が子よ。」


その声の後、炎は元からなかったように消え失せていた。

悲しげな暗い瞳がその跡をいつまでも見つめていた。



巨大大陸の北東部には火山帯が連なっている。

魔族には、火山の中に巨人がいて大陸の全てを

燃やし尽くそうと火を吹いているとの伝承がある。


その活火山の噴火口に巨大な黒い男がいた。

その男の目の前に青い炎が揺らめいた。


 「やぁ、スルト。

  楽しんでるかい?」


その声と共に周りの熱が消え失せた。


 「なんだ、お前か。

  何のようだ。」


 「いや、そろそろ龍人族と遊ぶのも

  飽きた頃なんじゃないかい。」


 「ふん、飽きるものか。

  年々力をつけてきよる。

  まだまだだ。」


 「そうかい。

  じゃあ、また力一杯遊びたくなる頃に

  来るとするよ。」


青い炎が消えると身を焦がす熱が襲いかかって来た。


 「また、何か企んでいるのか。

  懲りん奴だ。」


黒い男は溶岩より赤い剣を振るい、

立ち上ろうとする溶岩を鬱陶しそうに切り裂いた。



闇の中で声が溢れた。


 「今度こそ勝って終わらせてやる。

  ここは始まりの大地ではない、

  終わりの大地だ。

  手駒を揃えていくとしよう。」


平和の時が続くことを願うセブンをよそに

逃れる事のできない闇が迫ってきていた。

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