炎のバルキュリヤ
セブンと同じ電脳兵との戦闘は互いに
印を結び陰陽術を放つ攻撃を行い、
厳しい戦いになるかと思われたが、
相手の電脳兵は予想外の行動に出た。
「この程々に甘げな香りは
絶対美味しいチョコっしょ!
ちょっと頂戴よ。
もうあたい戦ったりするのだるいんだけど。
意味無いし。
ねぇってば。」
どう返せばいいのか分からなくなったセブンは
しばらく硬直してしまっていた。
「いや、これここの世界の材料で作った
なんちゃってチョコだから、
味は悪くないけど、そんな有名ブランドのとは
全然違うから。」
「それでもいいから頂戴よ。」
「いや、ホントはお供え用のをくすねて来たから
バチ当たるかも。」
「大丈夫っしょ、一口一口!」
「あーちょっと溶けてるよ。」
セブンの胸部パックからやや形の崩れかけた
チョコのブロックを受け取ると
味わうように食べ始めた。
上空では未だあちこちが燃えている島が
東の方向へ徐々に加速しながら動いていた。
見る見るうちに速度をあげ、
途中で認識阻害魔法がかかったのか
不可視化して消えていった。
『セブン、こっちは片付いたのだけれど、
そこで女の子と何をしているのかしら?
敵兵をナンパしたのかしら?
じっくりと説明して欲しいのだけれど。』
『いや、俺もよく分からないんだけど、
不思議な女の子なんだけど。
何よりSPTー11ってバックパックにあるんだけど、
何で11号機があんの?』
『あり得ないのだわ。
セブンが実際最後に起動していた機体で
それまでの機体は戦闘機用に回収されたはずよ。
その子は敵対意識ないようなら、
拠点の前でお話聞きたいわね。』
「あー、何て呼べばいいのかあれなんだけど、
俺は7号機だったんで、セブンって名前なんだけど、
君は11号機だからイレブンになるのかな?」
「何それ、ただの番号じゃん。あり得ないっしょ。
あたいはパイロ。
あ、もしかして調整ポッドある?
あったら貸して欲しいんだけど、
肌表面洗浄もしたいし。」
「えっ?肌表面って何」
「何って人造肌だけど?あんの?
貸して貸して~、いやーこっち来てやっとだわ。」
嬉しそうなパイロを連れて拠点に戻ると、
いそいそと中に入り電脳兵専用調製ポッドに入っていった。
メンテ完了まで2時間と表示が出ていた。
「ちょっとセブン、もうあの子入れちゃったの?」
「いや、何かごく普通に自分の拠点のように
入っていって調整中なんだけど。」
「申し訳ございません、サラ様。
私もお声をかけるよりも早くポッドに入られたので
お止めできませんでした。」
「カイがいても気にせずに入って行ったのね?
どんな神経してるのかしら。
まぁ、ちょうどいいのだわ。
彼女の事は調整ポッドを通して確認するのだわ。」
サラはパイロが調整中のポッドに近寄り、
開発者権限でアクセスして情報収集にかかった。
セブンは無力化した魚人兵の捕縛を手伝いに出たのであった。
サラの浄化魔法で隷属魔法から解放された魚人兵達は、
自分たちが今いる場所すら認識できておらず、
フェイズ達と話し合いの末、解放する事となった。
彼らは生まれ育った東の海の大陸目指して帰ると言う。
湖から流れ出ている川に沿って帰るそうだ。
拠点内では、調整中のパイロのデータを見て
驚愕するサラの姿があった。
「どういう事なのかしら?
セブンと同じ骨格のロットって、
あり得ない事だわ。
それにこの肌調整って、私と同じなのかしら。
稼働時間が190万時間超えているのだわ
・・・この子にはもう時間が残されていないのね。
この子は運命神のバルキュリヤ?
神徒でも巫女でもないのね?
神炎の選別 って魔法はどんなものなのかしら。
セブンの先頭データにあった、中から燃える炎かしら。
だめね、直接聞かないと
分からないことばかりなのだわ。」
セブンも戻ってきて皆で紅茶タイムをしていると、
パイロの調整が終わったのか、エアーパージの音と共に
カバーが開き、パイロが素っ裸で出て来た。
「うーん、スッキリ!気分最高っしょ!」
「ちょっと貴方服はどうしたのかしら、
全裸はないでしょ、全裸は!」
「え、あたい普段はマッパなんだけど。」
「ダメよ、ここではダメ。
早くアーミースーツ着てくれるかしら。
ここに予備があるから、早くこっちで。」
サラが真っ裸のパイロを拠点の奥まで連れて行ってしまった。
(うん、幼い少女らしかったな。。。えっ!?
なんで、人間っぽいんだ?
俺なんて顔周りしか皮膚っぽいのないんだけど。
新型は違うのかな。まぁ、後でじっくり聞かせてもらうかな。)
「えっ?それじゃあ貴方のいた時代の
電脳兵って性別もあるの?」
「そうそう、お姉さんと一緒じゃん。
まぁ、あたいはお古のボディで
電脳兵になってたんだけどね。
前の兵士は焼け死んだらしくて、
レアボディだから再利用だってさ。
いきなり変なオヤジ達に囲まれちゃってさ、
意味わかんないまま戦闘しろって言われてたんだけど、
相手なんてみんなたいした武器持ってなくてさ、
一方的にやるのってあたい気に入らないんだよね。
傭兵ったって、嫌な仕事は受けないっての。
逃げようにもどこかよくわかんない島だったし、
スイーツに釣られて言うこと聞いてたけど、
逃げたかったんだよね、助かったよ。」
パイロを着替えさせながら、サラは話を聞いて
言いようのない違和感を覚えるのであった。
「お待たせー、そういやあんたさ、水の陰陽術使ってたじゃん。
あたいは火の陰陽術使いでさ、こっちきて使えるのも
火の魔法なんだよね。
となるとあんたは水の魔法使い?
なんか、変だよね、もともと使える能力が強くなった魔法って。
変な羽の付いたオヤジ達にはあたいの力バレバレみたいで、
炎のバルキュリヤって言ってたよ。
羽のない金髪ガングロの連中にはバレなくて
魔法が使えない無能って言ってやがったけど、
勝手に呼びつけといてそんな言い方しやがるもんだから
話もしなかったんだけどね。
いや、あの羽のついた奴らはヤバイよ。
ロキ様って神様信仰してるみたいでさ。
変な道具持ってて超やばそうだったよ。」
パイロの話からすると、アトランティス帝国は
魔族と同じく魔法の使える人型の種族で、
天翼族と同盟関係でこの大陸を制圧するのが目的だそうだ。
「あ、それとここの調整ポッドすごい機能だよね。
調整中にボディ換装選べたから、人に戻して貰ったよ。
職業名が炎のバルキュリヤになってウケるんだけど。
ステータスこんなんだよ。
パイロ
種族:電脳化人族 年齢:190万時間
性別:女性
職業:運命神の炎のバルキュリヤ
狩人
・海神族の討伐者
身長:175cm
体重:180kg(標準装備時)
攻撃力:S
生命力:A
魔力:A
俊敏性:S
耐久性:S
スキル:火魔法 1神炎の選別 2不浄潔金剛炎
身体強化魔法 1神速 2烈火槍
サラさんって、どうなってんの?」
「「えっ!?人に戻った??」」
パイロから突飛もない言葉を訊いて固まるセブンとサラであった。




