辺境に生きる者
アトランティス帝国軍によって一度は滅ぼされた辺境の街で、
街の人々の蘇生、建物などの再生を終えたセブンは、
領主のガイスラー邸に招かれ、これまでの経緯を話していた。
「ほう、そうであったか。
あの魚人共はこの大陸をのぉ。
だが、そう容易くはいくまい。
北の火山帯には不死の龍人族がおる。
あ奴らは殺しても死なん。
魔法も効かん厄介な鱗を纏っておる。
セブン、貴様は相まみえたことがあるか?
燃えるような赤い鱗の剛力の戦士だ。
他の部族を見下す態度だが、然もありなん。
相手を殺さず押し返すのみ。
いつでも殺そうと思えば出来るという自信であろう。」
「私があったことがあるのは、
神龍様のお山の麓にいた龍人族の戦士達は、
黒い鱗で紺色の瞳をしていましたが、
別の種族ですかね?」
「ふむ、相まみえたことがないな。
あ奴らは赤い鱗で緑色の目をしておったが、
そうであるな、この百年の間に生まれ出たとも
思えぬ、別の種族であろう。」
「えっ?ガイスラー様、今百年と言われましたか?」
「ああ、我は見た目は人族でもおそらく混血のようでな。
こう見えて500年は生きておる。
魔族の連中も1000年以上生きるものがいると聞く。
我はおそらく魔族と人族の混血であろうな。
我はおそらく孤児でな。
この街に昔あった地下闘技場で育った闘士だ。
物心ついたころから殺し合いを生き抜いてきた。
名もないまま戦い続け、気がつけば、魔族の領主を
討ち取っておった。
魔族の連中とも何度もやりあった。
連中の国に攻め込み過ぎて北の火山地帯に行ったとき
龍人族との戦いになったのだ。
今思えば何も考えておらなんだな。
その後は人族の王都とも揉めたことが多くてな。
テュールの奴など何度半殺しにして放り出しても、
向かってくるしぶとい奴だった。
あまりのしつこさに辺境伯とやらを受けた次第だ。
その時についた名がこの街の名だ。
ほんとの名前など知らんし、どう呼ばれようと構わん。
辺境伯になろうが我は何もせん。どうでもよいのでな。
いつ死のうがどうでもよかったのだがな、
このセリーに出会うまでは。」
「そうでしたか。
私も元は人族でしたが、今の機械の体になる時についた
番号が、名前代わりです。
確かに名前なんてどうでもいいですね、同感です。
私も元の世界で子供相手でも殺す傭兵でした。
いつ死んでも悔いはなかったのですが、
今は私も守りたい人が出来て簡単に死ねなくなりました。」
「似た者同士よの。
守りに入るとこうも弱くなるものか。
セブン、貴様は先程話した帝国軍の女戦士に勝てるか?
我も意味が分からん攻撃だ。気がつけば燃やされておった。
本当に一瞬で殺されたのだ、何も出来ぬままにな。」
「実際のところ、立ち合ってみないと何とも言えませんが、
それに近い兵器があります。
吸い込んだ空気ごと燃えた感じがしたんですよね?」
「うむ、そう感じたのだが、記憶が定かではないな。」
「その情報だけでも十分です。
敵の情報としては、
魚人兵の魔石矢部隊の壁の後ろから、
翼のある、おそらく天翼族の魔法攻撃で
接近を許さず、攻撃が止んだ瞬間、
私と同じ装備をした女戦士が近接戦闘をした。
北の門の外の人達は、天翼族の魔法攻撃で
皆殺しにされた。
向かった先は不明。
魚人兵は2千前後、天翼族も同じくらい、
私と同じ装備の戦士が1名の侵攻部隊編成。
という事ですね。
この情報を元に対応策を考えてみます。」
「うむ、健闘を祈る。
我はここを出ることはない。
実は初めて子が出来るのだ。
いつまで生きられるのか分からぬが、
見守りながら生きてみたいと思う。」
「はい、では、遅くまでお邪魔しました。
そうだ、何かあったら、この虫型ゴーレムに
話しかけてください。
離れていても、話が出来る魔法が使えますので。」
「便利なものよの。
与ろう。またいつでも来るがよい。」
すっかり深夜になるまで話し込んだセブンは、
ガイスラーに見送られ、夜の空へ飛び立つのであった。
「電脳兵がいたのね。
しかも、セブンと同じ装備ということだけれど、
同型という事はあり得ないのだわ。
スペースチタンそのものが貴重で、
暴走したり廃棄処分になった機体は
すべて新型戦闘機用として回収されたのだから。
旧型となると装甲は厚いけど、フレームそのものは
チタン合金でセブンの方が頑丈よ。
攻撃の方法は燃料気化弾の要領だと思われるわね。
呼吸しない電脳兵用ではなくて、一般兵用の手法ね。
そうなると、数が読み切れない天翼族が危険なのだわ。
魚人族は私の浄化魔法で無力化できるとして、
あの飛行戦力は脅威だわ。」
「そうですね、サラ様の仰る通り、
天翼族の魔法攻撃対策が重要と考えます。
セブン様は不可視の盾の魔法が、対魔法障壁になりますが、
他の獣人族の方では防ぎきれるものではないので
被害が出てしまいます。
セブン様の金剛陣を塹壕のように使って戦うのが
安全ではないかと考えます。」
「あー、あれか。同時に何個まで維持できるのかとか、
設置時間とか調査するかな。
魔力がすごい増えたから
100個くらいは行けそうなんだけど。
それでも足りないなぁ。」
「カミュールさんから貰った魔力回復用のポーションが
あったわよね。
あれを大量に錬成しておくことも重要よ。
戦術に関しては、朝になったらフェイズさんたちも交えて
考えましょう。」
「では、紅茶を入れましょう。
しばらくお待ちください。」
そう言ってカイがキッチンに向かうと、
セブンはサラの事をぼんやりと見つめるのであった。
涙を流すセリーを抱きしめるガイスラーの笑顔を思い出しながら。




