激闘③(撃破)
本日最後の投稿です。
3話目です。
巨大大陸の西側では、獣人族の街に対して
アトランティス帝国が戦端を開かれた。
街を望む湾の上空に浮かぶ島が出現し、
そこから天翼族が地上に向けて
無差別攻撃を開始していた。
対する獣人国軍は、
風魔法で空中戦を仕掛けていた。
「われらもセブン殿からお借りした
バーニアとやらで空中戦に参戦する!
あのような味方を後ろから打つような
外道を断じて許すわけにはいかん!
陛下、サラ殿の立案通り、これよりは
サラ殿のいる砲塔の防衛をお頼み申す。
フレイヤ様、共に参りましょう!」
「うむ、頼んだぞ、テュールよ!」
ルードスはサラのいる砲塔に
風の防壁を纏わせるため、
丘の中央へ移動を始めた。
「味方の魚人兵ごと攻撃するなんて
ただのテロ行為と同じなのだわ。
この早いタイミングで、
のこのこ出て来てくれたのは
有難いのだけれど、もう存在そのものを
許すわけにはいかないのだわ。
連合軍の皆さま、
島にはミサイル攻撃を
天翼族には速射砲で攻撃開始します。
射線上には入らないよう
お気を付けください。
岩盤貫通弾 発射!
速射砲 正射開始!」
サラの怒りが込められた無慈悲の
ミサイルが、上空に浮かぶ島の直上に
降り注ぎ、島が揺れるような衝撃を
与え始めた。
それでも、島からの魔法攻撃の手は緩まない。
「皆様、より激しい爆弾を使います。
島から距離を取ってください。
これも撃って、この戦闘が
早く終わることを祈るわ。
改良型燃料気化弾 発射!」
島の直上から広域殲滅爆弾が降り始めた。
独特の炸裂音と共に高熱の波が押し寄せた。
島の上部は一瞬で溶鉱炉の様に爛れ、
魔法攻撃は停止した。
島が心なしか湾の上空から離れ始めると、
天翼族の兵士達も前線から引いて
島の方まで下がっていった。
しかし、魚人兵たちは一向に戦意を失わず、
攻め上がろうと攻撃の手を緩める気配がない。
「やむえんな。
サラ、話しておった地雷とやらを
使うのじゃ。
まだ数が多すぎる、このままでは
正直なところ魔力ももたぬであろう。」
「承知しました、獣王様。
重力感知型地雷 信管解放!」
海岸線で一斉に地雷が起爆し、
不可視の兵も含めて
吹き飛ばしていく。
これで戦意も吹き飛ばせたかと思ったが、
ドローンから接近情報が入ってきた。
「これは厳しい戦いになるわね。
皆様、敵の増援部隊が接近中ですわ!
北側の海から30隻の船団と
同じく北側の空から輸送機サイズの
飛行物体、そうですね、
魚人兵が空から舞い降りてきます。
不意の接近戦にご注意願いますわ!」
(弾薬も心許ないわね。
これは私も接近戦することになりそうね。)
激闘を続け、少し疲労が見られ始めたその時、
追い打ちをかけるように上空から魔石矢が
射掛けられ始めた。
「敵が舞い降りてきています。
一か所に留まらない様に
気を付けてください。」
船団が湾の外に差し掛かってきた。
(貫通弾の射程に収まったわね)
「 岩盤貫通弾 発射!」
何基かの砲塔が攻撃を受け、
連動できなくなっていた。
(まずいわね、半分以上が残ってしまったわ。
こちらの砲塔も半数はリンクが切れたわね。
ホバーユニットで私が出るしかないわね。)
「サラ殿!ホバーユニットで船を撃つのなら
同行するのだ。」
戦況の不利を見て取り、ファーラが戻ってきていた。
「速射砲なら撃てるのだ、共に戦おうサラ殿!」
「ならば、我は風の壁を受け持とう。
魔力はまだ残っておる。
よろしいか、サラ殿。」
「ルードス陛下まで、
分かりました、では共に戦いましょう。
では、これよりホバーユニットを
海上に出して敵船団を叩きます。
砲塔は 全弾発射!
速射砲は正射のみ継続します。
射線上には入らない様お気を付けください。
皆様のご武運をお祈りします。」
サラが覚悟を決めて、
ホバーユニットを海上に
浮かび上がらせたその時であった。
海上をまるで陸上を走るが如く
駆けてゆく一団が右側の斜面から
飛び出してきた。
「おおっ!あれは、あの水の上をかける姿は!
フェイズよ、あれは援軍の話をした
龍人族の戦士ではないのか?
わらわもあの一団と戦ってみたいのぉ。」
「お戯れを、まずは取り囲んでいる
この魚人兵を振り払うことが先決ですぞ。」
獣王のドゥルガーの周りには、
明らかに魚人兵が多く集結しており
大将首を狙いに来ているようだ。
(まずい、流石に魔力が心許なくなってきておる。
この盾と剣だけでどこまで戦えるか。
厳しい状況は変わらぬな。)
船団は、龍人族の戦士達によって
無力化されて行っており、
ほぼすべての船団が動きを止めつつあった。
動きが止まりつつあるのは、
獣人兵、人族の騎士達も同様であった。
連合兵団に疲労の色が見え始めたのを見て取り、
魚人兵士達は密集陣形をとり、
魔石矢の一斉射撃を開始し始めた。
魔法の壁で防ぎきれなくなった者達が
次々と射抜かれていく。
その集団の中にサラの駆るホバーユニットが突撃し、
速射砲とアサルトライフルの砲火に交じって、
ファーラの放つ風の刃が敵兵団を刻んでいく。
それでも、多勢に無勢。
別の場所ですぐに密集陣形が再び作られ、
じわじわと味方の戦力を削り取っていく。
壊滅するやもしれぬ、一旦引くべきかと
フェイズが考えたその時であった。
後方から、ファイアボール、風の刃、
岩弾丸などが飛来し、密集陣形を切り崩した。
振り向くと丘陵の上には、
輝く銀髪を風にたなびかせ、
燃えるような赤い瞳を輝かせた女を
先頭にした一団がいた。
「あれは、カミュールさん!
『ありがとう、来てくれたのね。』」
『サラ、海が見たくなっただけだ。
無粋な魚共を排除したに過ぎん。
まだまだ魚の数が多くて邪魔だな。
海辺まで散策させてもらう。
「行くぞ!」』
魔族の一団はカミュールの掛け声の後、
颯爽と散開し、魔法の援護攻撃を開始した。
かなり戦況は盛り返してきていたが、
魚人兵達は一向に戦意を失わず、
黙々と攻撃をしてくる。
『サラ、この魚共だが、
隷属の魔法陣で強制的に
戦闘させられておる。
呪いのようなものだ。
獣人族でも人族でもいい、
聖魔法で解呪出来る者はおらぬか?
でなければ、
皆殺しにするより手がない。」
「聖魔法であればよいのですか?
やってみますわ。
浄化 !」
400m近い円内にダイヤモンドダストの
煌めきが生じ、治まると同時に魚人兵達は
その場にくずおれて行った。
ホバーユニットで戦場内を駆け回りながら、
サラが浄化をかけ続けた結果、
魚人兵士達からの攻撃が止み、
港街に静けさが戻って来た。
「皆のもの、よくぞ戦い抜いた!
われらの勝利である!
人族、龍人族、魔族の同志諸君にも
深謝する!
衛兵たちよ、敵兵の捕縛に今しばらく
尽力願うぞ。
余力のあるもの、手の空いているものは
助力を頼む。
わらわからは以上だ!」
この後、獣王国の旧王城にて
各部族のものも交えて会食を行った。
会食の中で、アトランティス帝国が
魚人兵達に呪いをかけて強制的に
戦闘させていることが話に上がり、
全部族が非道ぶりに怒りを覚えていた。
会食について酒もふるまわれ、その途中、
ドゥルガーはサラに抱き着きながら
獣王として謝意を表明したり、
ルードス一行はひれ伏して
謝罪を述べたりしていたが、
宴会の最後は、カミュール、ファーラ、
フレイヤも交えて女子会になっていた。
翌日、龍人族は久しぶりの魚を手土産に
神龍様のお山の方へ帰っていった。
何でも神龍自らが助力するよう
声をかけてくれたことで、
戦士長のベンゼルはこれ幸いと
出陣してきたとの事だった。
魔族のカミュールは、
サラの頼みでもあったので
単騎で出ようとしたが、
セブンに恩返しがしたいと
参戦要望するものが大勢いたため、
急遽海を見るという口実で
ここまで来たとの事だ。
獣人族も含めて被害はそれなりに出ているが、
復興には影響がないようであった。
人族から協力の話があったが
獣王のドゥルガーからは
笑いながら気にすることはないと
いい放たれていた。
逆に魔族の女王カミュールからは、
森から出てくる魔法攻撃の利きにくい魔獣に
苦労しているという話を聞き、
人族の一団は魔族の開拓村の方へ
同行することとなった。
昨晩の女子会の後でカミュールがサラに
何か話をしたようでサラは赤い顔をしながら、
魔族と人族の一行を見送るであった。
『セブン、カーラこちらは何とか撃破成功よ。
そちらはどうかしら?』
『いやー燃えてるだけで何にもないんだけど。
認識阻害掛けたまま移動してるっぽいわ。
サラ、情報収集目的でこのあたりの人を
蘇生したりしてもいいかな?』
『セブン、あなたその魔法で街中の人を
蘇生するつもりなのかしら?
何も聞かなかったことにしておくわ。
街には人的被害がなかったという事ね?』
『あー、そ、そうそう。
家が燃えてたりするだけ・・・
いやいや、草が燃えてただけかなぁーっと。
まぁ、相手がどんなのか情報仕入れてみるよ。』
(もう、カミュールさんがあんな事言うものだから
セブンの顔を直視しにくくなったのだわ。
私の事そんな風に思ってたなんて、困ったわ。)
セブンのいる東の空を見つめるサラは
少し赤い顔で複雑な表情をしているであった。




