激闘②(天空の覇者)
本日は3連続投稿となります。
2話目です。
巨大大陸の西側には、
湾に沿って街が発展していた。
種族的に力が強く、体内の魔石によって
魔力も使える獣人族は、
大陸では一番繁栄していた。
過去には、南側にある古い街が
獣人国の王都であった。
世界樹の森を迂回して抜けた先の
西側には神話時代から続く、
歴史ある大きな街があった。
西側の街から大陸中央の平原に
抜けるまでにかなりの労力がかかるため、
獣人族は新天地として南側の街を起こし
さらに繁栄していた過去がある。
今、人族に中央平原から追われた獣人国の
人々は西側の街まで落ち延びていた。
ここに来れば安心できるという事ではなく、
平原で増えた民を南の街だけで維持できないと
判断し、寒村と化していた西側の街を
再興させることを選んだためだ。
その西の街でかつて王城として使われていた
尖塔の広間で、一際大きなネコミミをした
180cmを越えるネコ獣人族の女が
腕組みをしながら、海を睨みつけていた。
「そうか、フェイズよ、
海からあの賊共が
攻めてくるというのだな。
しかも、我らを殲滅できる数で。
面白いじゃないか。
では、こちらも全力で
お出迎えと行こうか。
して、そなたの連れの客人方も
お出迎えに加わってもらうのは
一向にかまわんぞ。
だが、これだけは譲れんぞ、フェイズよ。」
「なりませぬ、獣王様。
獣王様なくしてこの国は成り立ちませぬ。
先陣は、我らが連合軍に
務めさせていただきたい。」
「いやじゃ!
こんな血が躍る様な戦いに
後方で待つなど愚の骨頂。
おお、そうじゃ、ならば
わらわもその連合軍に混ぜるがよい。
よし、決定じゃ!!
皆のもの!!これは決戦である!!
獣王ドゥルガーの名において命ずる!!
死力を尽くし、攻め入る敵を一蹴せよ!!」
「「「ははー!!」」」
「獣王様・・はぁ。。
仕方ございませんな。
では、獣王様と共に参るとしましょう。」
周りにいた戦士達と共にサラたちが待つ
迎撃地点に移動を始めるフェイズと
いい笑顔で先頭に立つドゥルガーであった。
「帝国の船団は、このように魚鱗の陣形で
9つに分かれて侵攻してきています。
彼らの艦砲射撃の射程は未確認ですが、
おそらくもうそろそろ入るかと思われます。」
「ほぉ、これは面白いテーブルだな。
敵の配置がこのように上から見えるとは。
それに、サラと申したか、
・・そなた誠ゴーレムか?
見た目が良すぎるな、
わらわの側女にならぬか?」
「えっ!?ええっ!?
そ、それはちょっと困りますわ。」
「獣王様、悪い癖が治っておりませぬな。
サラ殿、気にせんで下され。
獣王様は、その・・男性には興味がなく、
むしろ女性に・・ですな・・。」
「あ、分かります、フェイズ様。
獣王様、私にはその気はありませんので
ご容赦くださいませ。
まずは戦闘の方の指揮を
お願い致しますわ。」
「むぅ、では後程な。
あの陣形の中央の一際大き目の船が
大砲を持っておるのか。
まずは火力を落とさせる。
南の街を焼いてくれたお礼が先だな。
その船用のミサイルとやらで
沈めてしまえ。
残る周りの護衛の船は我らで叩こう。
これでよいか?」
「はい、ですが、魚人兵は認識阻害魔法で
姿を消して接近戦をしてくると思われますわ。
戦闘中は 風の刃 や 水の刃 を
纏われながら戦われることをお勧めしますわ。
気がかりなこととしては天翼族の参戦が
あるのですが、現時点でこのあたりには
いないようですわ。」
「うむ、では、
皆の者!力を見せよ!攻撃開始じゃ!!」
ドゥルガーの掛け声と共に、
小高い丘陵に点々と設置された
対艦ミサイル砲塔から
一斉に対艦ミサイルが発射された。
魚鱗の陣形中央にいる戦艦に向けて
放たれたミサイルは悉く空中で爆散してしまった。
「やはり不可視の壁を使っておるか。
サラ殿、話に合った貫通弾の方に変更しよう。」
「了解しました、フェイズ様。」
その直後、戦艦から巨大なファイアボールが
打ち出されてきた。
「 氷壁 !」
「 風の盾 !」
「 土壁 !」
ミサイル砲塔の脇で待機していた
魔法の使い手がファイアボールから
砲塔を守る魔法を行使した。
魚人兵などの物理攻撃に備えて
砲塔の傍には防衛用に速射砲が
設置されている。
「よし、岩盤貫通弾発射じゃ!」
各砲塔がより高高度への射角をとり、
セブンが錬成した岩盤貫通弾が
発射された。
戦艦の直上から舞い降りた弾頭は、
不可視の壁を突き破り、戦艦の中心部を
貫通し爆散した。
炎上し、沈みつつある戦艦から
護衛の船団が一気に離散し、
一斉に港を目掛けて魔法砲撃を加えながら
突き進み始めた。
同時に、海岸線からも魔石矢を撃ちながら
魚人兵が攻め込んできた。
「総員、防壁を張るものと攻撃をするものの
2名体制で対応せよ!
一か所に留まるな!常に移動せよ!
狙い撃たせるな!
フェイズ!ゆくぞ!」
「はっ、ファーラ、風の壁を頼むぞ。
サラ殿、乱戦になります故、
後はよろしくお頼み申す!
参る!」
海岸線の左翼側には人族の一団が配置され、
ルードスとフレイヤが借り受けた魔石で
風の防壁を張りながら、騎士団が魚人族と
戦闘を開始していた。
海上からのファイアボールと
海岸線からの魔石矢が降り注ぐ中、
一歩も引かず、逆に押し返す勢いで
騎士団は勇猛さを発揮していた。
「テュール団長、左から新手です!」
「あい分かった!」
「フレイヤ、団を分けて左に向かえ、
我はここを受け持つ。」
「お父様、ご武運を!」
即断即決で状況に対応しながら、
数で勝る帝国軍相手に、
どの防衛線も維持が出来ていた。
(よし、換装完了!
海上からのファイアボールだけでも
抑え込めるといいのだけれど。
セブンもこんな弾頭錬成するなんて、
国際条約違反ものね。)
「クラスター弾頭、一斉発射!」
禁断の弾頭が一斉に発射されていく。
船団の直上で一次爆散した弾頭から
二次爆散する弾頭が拡散され、
広範囲を焼いていく。
海上はすべての艦船が火にのまれ
炎の海と化していった。
海上からのファイアボール攻撃が途絶えて
ほっとしたのもつかの間、戦場と化した湾内に
暗い影が差した。
「何だあれは!」
「島が浮いている!」
「翼がついた人族が浮いているぞ!」
戦場の上空を制圧したかのように
巨大な島が姿を現していた。
「原住民どもを殲滅せよ。
攻撃開始!」
冷たい声が遥か高みから聞こえた気がした
次の瞬間、数千のファイアボールが
地上に叩きつけられて来た。
「魚人兵ごと焼く腹積もりか、
あっちが本体というわけじゃな。
愚か者め!
行くぞ、風の兵士達よ!
天空の覇者がどちらであるか
思い知らせてやろうぞ!!」
獣王ドゥルガーが風を身に纏い、
ふわりと体を浮かせると、
周りの戦士達も同様に急浮上し、
天空に浮かぶ島と天翼族に向けて
風の刃を振りかざした。
天に風の刃が舞い、
地には火が雨の如く降り注ぎ
戦場はいっそう混沌としていった。




