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帝国軍の尖兵

セブン達の拠点のベッドは

ネコ獣人族の村まで逃げ延びて来た

人族のケガ人で埋まっている。


異界召喚されたという神官の漣によると、

女神からの神託に一縷の望みをかけて、

丁度海の街から行商に来た獣人族の馬車で

ここまで運んでもらったのだという。


奇しくもその中には

この村の長を務めるフェイズを

助けた縁のある帝国騎士団団長の姿があった。


ケガ人は重篤な一名を除くと

皆騎士のようであった。


騎士団長のテュールのベッドの横で

椅子に座ったファーラが悲し気な表情で、

傍らで立つセブンを振り返った。


 「セブン殿、

  ・・とても頼みにくいのだが・・」


 「ファーラさん、俺も言いにくいのですが、

  あくまで俺の一存なのですが、

  魔法使わせてもらいますね。

  

  この村の方々からすれば

  因果応報なのでしょうが、

  俺は、俺に出来る事ならやりたいから。」


 「すまない、我が父を助けて頂いた恩は

  返したいのだ。」


 「では、皆さんに魔法使わせてもらいますね。

  いいでしょうか?」


 「セブン様、

  あなたも回復魔法が使えるのですか?

  私の 回復 では傷口を塞ぐ程度で

  出血の酷かった方は体調が戻らないのです。


  高位の回復魔法が使えるのでしたら、

  どうかお願い致します。


  助けられなかった人がとても多くて

  私の魔力も足りなくて、

  私が未熟なばかりに

  毎日毎日何人も何人も・・・」


これまで抑えてきたのだろう。

漣は自分を責める言葉と共に

感情と涙をあふれさせて、

拠点の冷たい床に崩れ落ちるように

座り込んでしまった。


慌ててサラが駆け寄り、何とか立たせて

テーブルの方へ連れて行った。

行く間際にセブンに向いて頷いた。


 「それでは皆さん魔法を使います。

   完全回復 !」


拠点内にダイヤモンドダストが煌めき

苦悶の表情を浮かべていた者たちに

癒しと安らぎを与えるのだった。


 「おおっ!我が足が!手が!

  なんということだ!なんということだ!」

テュールは体を起こし、欠損していた両足と手が

元通りになっていることに感涙していた。


 「ここは何処であろうか?

  おお、フレイヤ。無事であったか。」

 「お父様!」


重篤だった男も体を起こし、

横に縋りついていた娘に気づくと

肩を抱きあっていた。


その顔を見てセブンは、はっとなった。


 『サラ!人族の王様だ!どうする?』


 『周りの騎士の面々も近衛兵のようね。

  別に構わないのではなくて。

  今は彼らも難民なのだわ。

 

  それよりもカイの食事の用意を

  手伝ってあげて欲しいのだけれど。


  この漣ていう娘さんが落ち着くまで

  私は動けないのだわ。』

  

 『分かった、手伝いしてくるよ。』


セブンはキッチンにいるカイのもとへ移動した。



 「お父様、

  こちらのネコ獣人族のファーラさんに

  我々の受け入れを許していただけました。」


 「そうであったか、

  ・・・いや、まずはお詫びを

  させていただきたい。」


そう言うと、ふらつく体で

床に両膝をついて座り

ファーラに頭を垂れた。

周りの騎士たちも即座にその後ろに回り

同じ姿勢でファーラに頭を垂れた。


 「我らはあなた方の国を情け容赦なく

  攻め滅ぼしたにも拘らず、

  受け入れて頂けただけでなく、

  かような手当まで頂き、

  何とお詫び、並びに

  感謝させて頂けば良いのか

  皆目見当もつかぬ。


  重ねて、重ねて、

  あなた方には申し訳なく、

  ここにお詫び申しあげる。


  我は、今はもう失われた王都で

  王に就いていた、

  ルードス・ルドベキアである。


  ここにおる者たちに責はなく

  この無能な王であった

  我にすべての責がある。


  この首で、どうかこの者たちだけでも

  助けて頂きたくお願い申し上げる。」


 「お父様!それは・・・」

 「いや、無能であったのは

  このテュール・ゲルマである。

  この首でどうかお許し賜りたい。」

 「「いえ、我々皆でございます、どうか」」



 「不要です!謝罪すら不要です!

  我が父フェイズも獣王様もここにおられたら

  同じことを申されます。


  我らが弱かっただけの事です。

  どうぞお顔をあげて、お立ち下さい。


  ここは国をなくした難民村、

  同じ難民ではありませんか。

  お気になさらず、体を休められてください。」


 「感謝致す。」



 「さて、皆様温かいスープがございます。

  こちらでお召し上がりください。


  王様、その節は無礼を致しました。

  メタルゴーレムのセブンです。


  どうぞ冷めないうちに。」


 「おお、そなたはあの時の大魔法の。

  そうであったか、縁とは運命とは

  こうも奇遇なものであるか。」



カイがワゴンで運んできた

カップに入ったスープを

配り歩いていた。


 「また、後程伺わせて頂きますので、

  それまでこちらで

  逗留のほどお願い致します。」


ファーラさんがそう声をかけて

拠点を後にしていった。 

王様以下全員が頭を垂れて見送っていた。




 「さて、皆様お疲れとは思いますが、

  この拠点には3か所浴室がございます。

  

  一番奥は女性用とさせていただきますので

  男性の方は手前の2か所で順番にご利用を

  お願いしますわ。


  衣類のお洗濯も入浴されている間に

  乾燥まで出来ますので、気兼ねなく

  お申し付けください。」


温かいスープを飲んで一息ついたのか、

騎士たちは少し話をする元気も出てきたようだ。


王様と王女様、騎士団長で

何か話をしていたが、

ひとまず身なりを整えるためにも

入浴して頂いた。


 『セブン、後でいいのだけれど

  椅子の用意をお願いできるかしら。


  私は奥のスペースを改修するのだわ。』


 『了解』


セブンは人数分の椅子を錬成すると、

カイと一緒に男性陣の衣類の洗濯・乾燥作業に

かかるのであった。




 「そうなると、漣のいた日本と

  私達のいた日本は

  時間軸がずれているわね。


  まだ電脳兵がいない世界となると

  おおよそだけど1500年は差があるわね。

  

  まだ、緑が多かった頃って

  空気もよかったのかしら。

  見れるものなら見てみたいのだわ。」


 「うーん、空気はこの世界の方がいいですね。


  サラさん達のおられた辺りって、

  私の時代だと奈良県と和歌山県の

  県境辺りになりますね。

  あの辺りは雨の多い地域で有名でしたよ。」


 「前にアトランティス帝国から攻めてきた

   勇者 はあなたよりもっと昔の時代の

  戦車や戦闘機を錬成していたのだわ。


  そうかと思うと、私たちの時代の

  傭兵や関係者も召喚されていたりしたのだわ。


  これまでのところ私達より未来の世界からの

  召喚者がいないように思えるのだわ。」


 「この先はどうなるか分からないですね。

  これでも、運命の女神様ベルザンディ様の

  巫女なのだけど、

  未来の事はスクルド様の管轄らしいわ。

  

  私は最初この大陸の平原に来たときは

  すごい大昔に来たのかと思ったわ。


  すぐに神託が頭の中で聞こえて

  何故か巻き込まれたって

  言われた時は絶望したわ。」


 「待ってくれ、アトランティス帝国から

  ここにも攻撃があったのか?


  被害がないように見えるのだが。」


 「あーそれは彼らに一杯食わせたのよ。

  でも、あの勇者は厄介だったわ。


  そうそう、神龍様のお山では

  天翼族っていう・・」


サラ、ファーラ、漣、フレイヤがテーブルについて

これまでの話をしている。

重傷だった王様以下は、入浴後に鎮静剤を打って

眠ってもらっており、女子会が開催されている状況だ。



 (外の警戒に出とくかな。)


フライングユニットのカーラと共に高高度からの

周辺警戒に出たセブンであった。


ふとフェイズの向かった巨大大陸の南側を見ると

熱源反応が飛び交っているようだった。


 『サラ!フェイズさんの向かった先で戦闘だ!

  海側からの艦砲攻撃だ!カーラと行ってくる!』


 『フェイズさん救出なら参戦も致し方なしね。

  ホバーユニットをオートで出すわ。

  そっちで誘導お願いね。』


ロフテッド軌道から砲撃している船の直上へ急降下すると、

岩盤貫通弾を情け容赦なく叩き込むセブンであった。


 (10隻ほどか。全部綺麗に沈みそうだな、よしよし。

  フェイズさんにつけたバグドローンの位置はっと、

  あそこか。無事そうだな。)


バグドローンを頼りに街の中をステルス状態で移動すると、

魚人兵と交戦しているようだった。

圧縮弾で無力化しながら進むと発見できた。


 「フェイズさん、ご無事ですか?」


 「おお、セブン殿か。我らは問題ない。

  あの連中は尖兵のようなものだ。

  あの10倍近い数の船が

  さらに西に移動していった。

  もしかすると、狙いは世界樹やもしれぬ。


  さらに西に行ったとなると、

  我らの獣王様たちが落ちのびている街がある。


  どちらであってもあの帝国軍は見逃せん。

  一旦村に戻って戦闘の用意をしたい。


  セブン殿、ファーラに用意をするよう

  言付け願えるだろうか?」


 「お安い御用です。

  それとその戦闘ですが、

  どうか参戦させてください。


  あと、村に人族の王様と騎士団長方が

  難民として逗留されています。」


 「そうであったか。無事であられたか。

  うむ、そのまま逗留いただいて

  何も問題はない。」


 「もう数時間でホバーユニットが

  到着しますので、

  それに乗って移動の方お願いします。

  荷物と荷馬車は私が運びますので。」


 「かたじけない、世界樹の森の森人にも、

  獣王様にも恩義があるのでな。

  助力の方こちらこそお願いする。」


船団が向かったという西の海を見つめながら

今度はどんな 勇者 がいるのだろうと

思いを馳せるセブンであった。

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