因果
ネコ獣人族の村からフェイズ一行が
交易に出て数日が経ったある日の事。
周辺に展開しているバグドローンから
接近するものありの通知が入った。
ワイバーンが来たかと構えていた
セブン達であったが、
接近してくるのは荷馬車のようであった。
「これどうするかな?サラ。」
「普通にこの入り口でお出迎えすれば
いいと思うのだけれど、
念のため、ファーラさんに
確認することをお勧めするわ。
周囲に潜伏しているものがいないか
バグドローンの調査継続を忘れない事ね。」
セブンが連絡用バグドローン経由でファーラに
連絡を入れると映像を確認したいとの事で
拠点まで足を運んでくる事となった。
「もうお昼時になる時間帯ですので、
ランチをお出ししましょうか?」
「そうね、キッチンの方には、
まだ一般兵用の携帯食もあったわね。
粉末スープと一緒に軽く調理して
召し上がって頂こうかしら。
セブン、あなたはテーブルの上を
綺麗にしてもらえるかしら。
私はカイと一緒に調理するのだわ。」
畑用の肥料の改良を検討していたセブンは
テーブルの上から野菜クズなどを樽に移して
布巾で清掃するのであった。
「すまない、入ってもいいだろうか?」
「いらっしゃいませ、ファーラ様。
簡単ではございますが、ランチを
ご用意いたしました。
よろしければ、お召し上がりながら
映像の方ご確認頂き、対応について
ご意見頂ければと存じます。」
「ありがとう、カイ殿。
ここで頂くものは
何もかも美味し過ぎてやみつきになる。
厚かましいことなのだが、ぜひ今日も
ご相伴に与らせて頂きたい。」
ファーラが舌鼓を打っていると、
バグドローンから最新の映像が届いてきた。
「うむ、この荷馬車はおそらく商人だな。
平原を抜けて龍人族のところまで行く
勇敢な商人がいるのだ。
この御者や荷馬車の上に乗っているのは
獣人族の護衛のものだろう。
ここに寄るようであれば、
何か売り買いできるやも知れぬ。
セブン殿、保冷倉庫の肉を売って
運んでいる商品を買えるかもしれない。
少し解凍の方をお願いできるだろうか?」
「了解です。
じゃあちょっと倉庫まで行ってきますね。
って、肉はどのくらい売れるもんですかね?」
「いや、着いてすぐに出ていくことも
ないだろうから、買い取れる量を
聞いてからで間に合うのだ。」
「となると、来るまでは待機ですね。」
「うむ、それで問題ない。」
それから4、5時間後、村の入り口に
一台の荷馬車が到着した。
腰に帯剣したネコミミ顔をした獣人族の男が
御者の席についており、屋根の上には
可愛いネコミミのネコ獣人族の女が
弓に手を掛けた状態で待機しており、
何やら、ずっと後方を警戒しているようだ。
荷馬車からは、まず人族の騎士の様な鎧を纏った
青年2名が下りてきて、まずセブン達に一礼すると、
荷馬車の方へ振り返り、彼のエスコートで
商人に見えない女性が降り立ってきた。
神官のような服装だが、かなり疲れが見える。
「初めまして、私は人族の王都で
神官をしておりましたレンと申します。」
その顔を見たセブンは思わず声を返した。
「こちらも初めましてですね。
このネコ獣人族の村で衛兵をしております、
メタルゴーレムのセブンと申します。
後ろにいるのが同じメタルゴーレムの
サラ、カイになります。
あの、大変失礼ですが、
もしかして日本人の方でしょうか?
私もこの電脳兵になるまでは、
日本人で、その時の名は天道武人と
申します。」
そう、この神官の女性は黒髪、黒目の
日本人の特徴をしていたのだった。
「そうです!
日本から召喚された 香月 漣 と
申します。
電脳兵?というのは聞き覚えが
ないのですが、アニメで出てくるような
サイボーグの兵隊さんなのでしょうか?」
「あら、同郷の方でしたのね?
私も今はこのような姿ですが、
元は日本人なのですが、
とりあえず、ここにいらっしゃられた
ご用の向きをお聞かせいただけないかしら?」
漣の顔をぼぉーと見ているセブンに肘鉄を入れて
サラが前に出て話しかけた。
『あなたって美人には目がないのね?
そんな目で見ていると品格を疑われるから
下がっていてくれるかしら?』
『いや、そうじゃなくて、前に人族の王城に
潜入している時に見たような気がして・・』
『あーらそうなの、じゃあそういうことに
しておいてあげるわ。
でも、下がってくれるかしら。』
少ししょんぼりとしながらセブンが
カイの横まで下がるとカイにまで咳払いされ
冷たい目を向けられてしまった。
(いや、儚そうな美人だなと
思ってみてただけなんだけどな。)
「実は私達のいた王都にアトランティス帝国を
名乗る者たちに襲撃を受けてほぼ壊滅して
しまったのです。
私はこの世界に召喚される時に、
女神様から癒しの魔法を
授かっておりましたので
まだ息のあった人に
回復 をかけて隠れていました。
先日、この方角に向かえば希望があると
運命の女神様から神託を頂いて、
平原には知り合いがいるという
獣人族の方に荷馬車を動かして頂いて
ここまで来た次第です。」
「そう、でもここにいる獣人族の人達は
あなた方人族の侵攻で国を滅ぼされた
難民の方々なのですわ。
きつい言い方になるのだけれど、
人の国を攻め滅ぼしておいて
自分たちも攻め込まれたから助けてなんて
虫が良すぎる話なのだわ。
この村には人族の方は入らないことを
お勧めするわ。」
「そう ですよね、そう言われることは
覚悟はしていました。
でも、そうですよね、
私も見ているだけで止めることが
出来なかったので同罪ですよね。
あの勇者たちに乱暴されるのが怖くて
ずっと隠れていただけで、
見殺しにしたようなものですね。」
うつむいた彼女の目からは涙が溢れ続けていた。
「ケガ人がいるというのなら、治るまでの間なら
逗留してもいいと思うのだが。
おや、あなたは見覚えがありますね、
確か父と同じ戦士団におられませんでしたか?」
話を聞いていたファーラが拠点から顔を出して、
漣に声をかけ、荷馬車の御者を見るとそう言葉を続けた。
「おお、これはフェイズ戦士長のご息女の
ファーラ様ですか?
はい、同じ戦士団に属しておりました
フォグと申します。」
「連れ合いのクーラだ。」
御者台から降りて来た男と、屋根から飛び降りて来た女が
そう自己紹介した。
「私はこの村の村長である、わが父フェイズの不在を
預かっている娘のファーラだ。
父は今交易に出ていて不在なのだが、
お二人の来訪は歓迎しよう。
奥に空いている家があるので自由に使ってくれていい。
さて、人族の方は村の中では少しマズいのだが、
サラ殿、拠点の方で逗留いただいてもいいだろうか。」
「はい、ファーラさんさえ宜しければ。」
「うむ、では、こちらまでお越しいただこう。
ケガ人の方は歩けるのだろうか?」
「いえ、体の一部を欠損されていたりしまして
私の回復だけでは歩ける状態までなっておられないです。
フォグさん、またお手伝いお願いできますでしょうか?」
「お安い御用だ。」
「あー、そういう事なら俺も手伝いますよ。
拠点の奥にベッドがありますので、
そちらまでお連れしましょう。」
そうセブンが声をかけて荷馬車まで近寄ると
中から弱々しい声がかかってきた。
「ご厚意に感謝する。私はフレイヤと申す者だ。
我が父の方が様態が良くないのだ。
先に休ませて頂けないだろうか。」
長い銀髪で青い目をしたうら若い女性が
そう言って左手で荷馬車の奥を指し示した。
彼女の右肩から先はなくなっていた。
奥にはほぼ虫の息の様態の男性が横になっていた。
セブンとフォグの二人で横にした状態のままで
抱えて拠点のベッドまで移した。
女性の方は足を引き吊りながらも
無理について来ようとしたのでサラが肩を貸していた。
もう一人大柄の男が横になっていた。
両足がなく、片手のみになっていたが、
眼には力がこもった光を湛えていた。
手助けしようとしたファーラを見て
その目から涙がこぼれた。
「これはフェイズ殿のご息女であられたか。
かたじけない。」
かつてフェイズを助けたテュール・ゲルマ騎士団長であった。
「あなたは、あなた様はわが父を救い出して頂いた
あの騎士団長様ですかっ!
ご無事とは言えないようですが、命あってのものです。
お気遣いすることなく、
まずは傷をいやされることに専念されますよう。」
ファーラとカイで巨漢のテュールを運ぼうとしていたが、
戻って来たセブンとフォグが代わり、
拠点のベッドまで移動させた。
ベッドの上でも苦し気に横になるテュールを見て
悲し気な目でセブンを見返してくるファーラに
笑顔で返答するセブンであった。




