主神降臨
天翼族の男をクロの持つ神器で
何とか倒せたセブン達であったが、
ほっとしたのもつかの間、今度は
光り輝く巨大な男が舞い降りて来た。
全身を押さえつけられる様な
圧力が発せられていた。
「あれは、あのお方様は主神様!」
神龍様の頭が下がる気配がした。
合わせて皆頭を垂れることにした。
「神龍よ、久しいな。
我が神徒が何やら
策しておったようだが、
我の意思ではない。
さて、暫く見ぬと思うておったら
ここにあったか。
どれ、持って帰るとしよう。」
神龍様に突き刺さっていた神槍が
瞬時に消え去った。
「悪かったな、神龍よ。
それと、そこのノルンの神徒達よ、
いらぬ苦労をさせたな。
ケットシーよ、詫びとして
その神器、引き続き
この世界での使用を許す。
だが、思い違いはせぬようにな。
そなたらの下す正義の審判が
すべての者の正義ではないという事
ゆめゆめ忘れるでないぞ。
セブンとやら、あ奴の、ニョルズの
加護の力を得ておるな。
神水の扱いには気をつけよ。
遅かったようだがな。
どれ、我の加護も・・
そうであるな、その時が来れば
我の加護の力与えようぞ。
では、さらばだ、
運命と戦いし者達よ。」
その声が消えると同時に圧力も消え去った。
「ふぇえ~おっかねぇなぁ~
身動きすると命がないって
圧力だけで伝わって来てたよ。
っていうか、
こんな簡単に主神様って
降臨していいのか?
勘弁して欲しいんだけど。」
「セブン、今はそれよりも神龍様の方よ。
神龍様、お力の方は如何ですか?」
「ふむ、主神様が神槍を
取り除いて下さったが、
力は万全ではないようだ。」
「じゃあ、俺の 完全回復 で
元気になって頂きましょうか?」
「む、神徒セブンよ、
その魔法が使えると申すか?
その魔法では、我のもう一つの頭まで
再生されると聞く。
それはこの世界の災いとなるやもしれぬ。
それは我の本意ではない。
遠慮させてもらおうか。」
少し悲し気に神龍はそう返答した。
「神龍様、もう一つの頭が再生されると
何か不都合があるのですか?」
「セブン、ちょっと自重しなさい。」
「いや、良いのだ。
ケットシーのクロは知っておるが、
そなたらは知らぬか?
我は元々こことは異なる世界で、
ヤマタノオロチという呼び名で
世に災いを振り撒いておった
存在である。」
「その名は存じております。
私たちの祖国の遠い昔の
御伽噺としてですが。」
「そうであるな、我にしてみれば
昨日の事のようでもあるが。
あれは闇の神徒から投げつけられた
聖剣を飲み込んでからであったな。
聖剣には呪いがかけられており、
我が身を裂くような悪意が体の中を
駆け巡り、目に映るものを破壊、
蹂躙せねば、気が落ち着かぬように
なってしまったのだ。
だだ、天界より来たりし神が
我の主首と尾を切り落とし、
我は絶命したはずであった。
ノルン様がこの世界に我を召喚され
この地の天候を見るようになって
おった次第だ。
そういえば、あの聖剣の呪いは
解けたのであろうか?」
「はい、その後は神器として
ある時代までは扱われていましたが、
海に沈んだと伝わっております。」
「そうであったか。
ふむ、先程から気になっておったのだが、
神徒セブン、巫女サラ、
そなたらは海神ニョルズ様の神徒であり、
運命神ノルン様の神徒、巫女でもあるのか。
変わった来歴よの。
あ、・・・いや、申し訳ありませぬ。・・
あー、二人とも今のはだな、
どうか聞かなかったことにしてくれ。
ノルン様に怒られてしもうた。
はっはっはっ。」
あー神龍様が笑ってごまかそうとしてるよ。
話し戻すかな。
「大丈夫ですよ、このところ
耳の調子が良くないので。
ところで、神龍様、
先程の回復の件ですが、
呪いがないのであれば、
元通りのお体になっても
良いのではありませんか?」
「うむ、どうであろうな、
我は自分を保てるかどうか
自信がないというのが
本音であるな。
一つ頼まれてくれまいか。
もし、元の体に戻った後、
我が暴走するようであれば
迷わずこの体切り刻んで、
今度こそ滅ぼして欲しいのだ。
この世界でまで
愚行を重ねたくないのでな。」
「大丈夫だよ、神龍様。
今の神龍様なら大丈夫、
ボクもついているからね。」
クロが金色の天秤を持ってそう話した。
あの天秤を使うことにならないことを
願いながら、セブンは魔法を
行使する覚悟を決めた。
「では、神龍様、使いますね。
完全回復 !」
神龍の体の周りにダイヤモンドダストが
煌めき、心なしか周りの空気までも
澄んでいくような感じがした。
煌めきが治まると、
深紅の体の九頭竜の姿があった。
「とても久方ぶりに心が静まっておる。
気分がとても良い。
おおっ、我が身も元の色に戻っておる。
神徒セブン、礼を言う。
うむ、この体であれば
結界は不要であるな。」
薄暗かった結界が切れたのか、
ひんやりとした空気が清浄さを物語っていた。
「我はもとは火の龍でな。
このくらい冷えた空気の方が
心地よいのだ。
まさか、このようにもう一度
力を取り戻せる日が来ようとはな。」
神龍の目からは涙のようなものが伝っていた。




