断罪
セブンは非常時になるほど落ち着くことができる精神制御を
この時ほど有難く思ったことがなかった。
『カーラ、サラとカイのビーコンは追えているか?
そうか、良し、そのまま停止するまで追跡頼む。』
海竜捜索中に正体不明の相手から攻撃を受け
迂闊にもソナー感度を落としたタイミングで
後方に待機していたサラとカイが
ダイビングユニットごと鹵獲されてしまった。
いつもながら自らの失態にはあきれるが、
挽回策の立案が即座に出来てしまう程慣れてしまっていた。
(相手の武器は大した威力がなく、防御力も高くなかったな。
やっかいなのはソナーに引っかからないことだが、
前に森であったエルフ達も認識阻害魔法使ってたから
似たような魔法だろうな。
サーモセンサーでも見えなかったという事は海中になじんでる
変温動物系かもしれないな。)
『海面に向けて浮上し始めたのです。
進行方向に熱源反応、ステルス艦と見たのです。
さっきの物騒な弾頭を使うのなら今なのです。』
『直上から垂直降下頼む。風通しのいい船にしてやるよ。』
『了解なのです。』
熱源反応とサラとカイのビーコンが重なるタイミングで
直上から赤熱化したフライングユニットが急速接近する。
パージされたセブンは、断罪の一撃を加えるべく
怒りで燃え上がるかのように激しく
全身のスラスターを吹かせて加速していく。
直前に岩盤粉砕用の徹甲弾(錬成品)をお土産にくれてやり
ステルス艦はスパークしながら炸裂音を響かせ全容を現した。
(何だこれ?まるで大昔の世界大戦時代の空母ってやつなのか?
何でこんなものがあるんだ?こんなものまで錬成できるのか?
っと、救助といつものお仕事の時間だな。)
暗殺モードで気配遮断したセブンが火柱をあげる甲板を背に
艦内に潜り込んだ。
この世界では見かけない白い白衣を纏った丸メガネの白髪の
老医師のような男が歓喜に沸いていた。
「素晴らしい!実に素晴らし仕事ぶりでしたよ、魚人戦士の皆さん。
いや、まさかこの世界でダイビングユニットを手に入れられるとは!
あの勇者では、反応炉は錬成できなかったですからね。
おや、中からロックされてますか?
無駄ですね、基本設計した私の前では無意味ですよ。
おやおや、誰かと思えば天道君じゃないかね?
体型が崩れてしまっているのは残念だよ。
おや、これは電脳兵用のボディではないかね?
クックックッ、ハッハッハッハー!!やりましたよ!
高純度の高出力反応炉まで手に入るとは、今日はついてますね。
さて、天道君、君も弟と同じく用済みだ。」
左右から魚人に抱えられたサラに冷酷な目を向けた。
「プロフェッサー、あなたはこんなところで
一体何をされているのです?
いえ、それより弟と同じく用済みとはどういう事なんです!?」
「君が知る必要はない、そのままの意味だよ。やれ。」
うなだれたサラは悔しさをかみしめ両手に力を籠めるがびくともしない。
その声が終わると、同時に白刃が煌めいた。
ドサッ!
重い音を立てて首が落とされた。
黒い油のようなものを噴き上げる白衣のマネキンが残っていた。
ボン!ボン!ボン!ボボン!
魚人戦士に不可視の弾丸がのめり込んでいく。
サーモモードでも気配がないこと確かめると
セブンはステルスを解除してサラに背を向けつつ寄って行った。
「悪い、遅くなった。
もうすぐお土産でこの船は美味しくとろけるんで
カイと急いでお暇しよう。」
「もう、いつもいつもあなたという人は!
逃げる時間考えてあるんでしょうね?」
「大丈夫のはずだ。爆発は水平から上方向がきついから。
下はマシなはず。」
「はずですって?
もうちょっと考えて行動できないかしら、
まぁいいわ。助けてくれてありがとう。
帰ったらお話のお時間よ。
カイ?潜る用意いいかしら?」
「こちらは大丈夫ですが、今から大丈夫ですまなくなりそうですね。
いつも酷い目にあわせて頂きありがとうございます、セブン様。
私からも拠点に戻ってからお話させて頂きます。」
「あー、俺途中寄るとこあるの思い出したから
先に帰っといてくれるかな?」
「はいはい、行くわよセブン」
サラに首根っこを掴まれずるずると引き摺られていくセブンであった。
2基のダイビングユニットが急速潜行開始し始めるタイミングで
燃え盛る無人の艦内で改良型燃料気化爆弾が炸裂した。
凄まじい衝撃がユニットに襲い掛かって来た。
「セブン、絶対ゆるさない。」
いや、マジでごめん。余裕なかったもんでつい。。
「そういや、さっきのあの男ってザックバーンの研究局長に
そっくりだったけど?」
「そっくりどころか、本人よ。
危うくマッドサイエンティストに反応炉が渡るところだったわ。
そうそう、前に倒した勇者でもあの船は錬成できても
反応炉は出来なかったそうよ。
後であなたも試してみることをお勧めするわ。
えーっと、えっ!?な、何?ど、どうしたっていうの?」
急にサラの肩を後ろからセブンが抱きかかえるように縋りついてきた。
「いや、ごめん、もし、間に合ってなかったらって
今頃思って。。ごめん少しだけ。」
今日ほど自身の失態を後悔したことがないセブンは
失う事の怖さも一緒に抱いていた。




