静かなる海中戦
エアパージされた電脳兵専用調整ポッドからセブンが、
重い物を身に纏ったかのようにゆっくりと、
だが強い力を電子眼に込めて、何からも目を逸らさない
覚悟をした顔つきで起き上がってきた。
「サラ・・姉さん、全部思い出したよ。
もうザックバーンの連中もいない世界だけど
俺は俺に出来ることをやり続けたいんだ。
止まることは許されない、そんな気がするんだ。」
「何から許されないのかしら?
あなたは私のために本当に死ぬような思いをして
やりたくない事をさせられ続けてきたのよ。
すべて、私が組み込んだ精神制御システムなの。
暴走しないで、無事に戻ってきて、
いつもそう思っていたわ。
自分で組み込んでおいて言えたものではないわね。
研究所員たちが優秀な戦闘人形だと褒めたたえていても
私には、私はあなたを戦争の・・道具になんて・・
・・したくなかったのに、私が全部悪いの。
許されないのは私の方だわ。」
「結局俺はザックバーンの連中に騙されたんだな、まぬけだな。
姉さんの治療代のために、この命売ったはずだったのに、
すぐに電脳化されてたなんて。馬鹿なチビだったんだな。
うん、許されないのは、許せないのはあいつらだな。
姉さんには罪なんて微塵もないさ、俺が全部許すよ。
なんかさ、この世界で人に感謝されるとすごく嬉しいんだ。
全身殺戮兵器の俺なんかでも生きていていい世界だと思えるんだ。
俺、この世界で殺戮兵器以外の生き方を出来るだけ、
たまにはブチギレることもあるだろうけど、
周りの人の笑顔を守っていきたいと思うんだ。
って、事でうざったいカイの野郎と合流して
海竜さん探してくるよ。」
「そう、ありがとう、少し気が楽になったわ。
私も、私にも出来ることがあるならするべきね。
ついていくわ。これでも近接戦闘も出来るのよ。
それと、前から気になっていたのだけれど、
カイの事をどうして野郎っていうのかしら?
彼女、物事をはっきり言える爽やかタイプのAIなのに。」
「えっ?美少女?あれで?」
「あきれたわね、サポートAIは研究所長の変態趣味で
皆美少女AIしかいないって・・覚えてないというより、
はじめの説明聞いてなかったって顔ね。
後で謝っておくことをお勧めするわ。」
あー・・で、いつも野郎っていうと棘が出まくってたのか。。
「とりあえず、偵察だけして見つけたら戻ってきて合流しようか。」
「カーラにはタンデムフライト出来るわよね?
ダイビングユニットは3基あるんだから丁度いいのだわ。
ファーラさんには出かけることをすでにお伝えしてるのと、
拠点の速射砲をオートモードで打つ訓練もしてもらっているから
少しは安心できると思うのだわ。」
「了解、では行きますか。
カーラ、タンデムで行こうか」
拠点の二階で補給をしていたフライングユニットのカーラに声をかけて
追加弾薬に目を向けるセブンであった。
『カイ、ロフテッド軌道で直上から行くんで、
3基とも浮上して待っていてくれ。』
『了解しました。私の管理用アンドロイドのボディでは
出来ることに限りがありますので、サラ様も来て頂けるのは
とても心強い事です。』
カーラは耐熱シールドを張りながら、カイの待つ海上に急降下をかけ
海面手前で最大減速をかけると、セブンとサラとソナードローンをパージして
上空でゆっくりと警戒飛行に移っていた。
『これが海竜様かしら?石のようになっているわね。
呪いの類なのかしら?』
『恐らくそうだと予想されます。
神話の時代の逸話の中に、目を見たものを
石にする魔物の話がありますし、
この世界ならその魔物が本当にいても
不思議ではないですね。』
『ゴルゴ―ンだっけ?おっかねぇな。
それにしても本当に静かな海の中だな。』
『深度300mなのでもとより生き物も少ないでしょうから。
それにしても、少なすぎます。死の海のようです。』
3基のダイビングユニットのコックピットそれぞれから
フルタイムリンク状態で話し込んでいると、
セブンのソナーに水切り音がかすかに聞き取れた。
『俺の機体の5時方向からお客さんのようだ。
カイ、サラの方でも確認できるか?』
『私のボディでは聴力強化されていないので無理です。
座標データお願いします。』
『こちらは聞き取れたのだけれど、お客様も3名様のようね。
合わせて頂いたのかしら?』
『いや、合わせて頂きたくないので、お帰り願いますかね?
カイ、お前の機体が一番遠めだ。
指定ポイントまで静音モードで機雷を流してくれ。
サラ、そのまま左舷のブローだけ使ってゆっくり
カイの方に寄って行ってくれ。
俺はちょっとご用件をお聞きしてくるわ。』
セブンは機体を静かに接近体の方に移動させ始めた。
と同時、接近体からの水切り音が消えた。
『気づいたか。良い耳してるぜ。
じゃ、軽くノックしますよ。
魚雷発射1番直撃コース2番3番は手前で起爆、
4番は熱源起爆モードで、 全弾発射!』
発射と同時に機体を移動させすセブンであった。
ドン! 機体に何かが当たった感じがした。
この距離で、しかも移動したのに当ててきたのか、
信じられんな。
かなり良い耳をお持ちのようで。
ボン、ボボン!!
セブンの放った魚雷が炸裂した。
何かが凹む音がした。
相手の機体が損傷したようだ。
ガンッ!ガガンッ!!
こちらの機体にも何か当てられた様だが、
直前まで何の反応も確認できなかった。
まさか、魔法かよ。
ヤバいな、位置が補足できんとどうにもならん。
そうか、アレを使うか。
『サラ、カイ、ソナー感度を落としてくれ。
海中花火の時間だ。』
魚雷の炸薬に閃光爆裂弾を放り込み、
先にダミーを撃ち、反射音から相手の位置を探ることにした。
バーーーンッ!!
普通なら耳をやられる爆音のおかげで相手の位置が確認できた。
遠慮は無用だ。全弾発射!
ボボボン!
バキンというひしゃげるような音が聞こえた。
一機落としたか。残り二基は何処行ったんだ?
『セブン!機体の自由が利かないわ!
何かに絡み取られているようなのだわ。
カイ、ここにいては駄目よ、早く移動するのだわ。』
『申し訳ございません、サラ様。
私の機体も自由が利きません。』
『クソッ!やられたか、すぐ行く、待ってろ。』
セブンがなりふり構わず全速力で移動するが、
それ以上の速さでサラとカイの機体は
鹵獲連行されていくようで、
みるみる差がついていくのだった。
『サラ!絶対助けに行く!何があってもあきらめるな!絶対だ。
カイ、お前も無理するなよ、一緒に引き取りに行くから』
『セブ・・・』
通信阻害をかけられ途切れてしまった。
位置は追えるな。ふざけやがって、今に見てろよ。
カーラを呼び出し、二人の奪還を胸に誓うセブンであった。




