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海の異変

巨大大陸の北部に広がる砂漠地帯を

南西方向に向かって隊列を組み

しっかりとした足取りで行軍する影があった。


魔族の女王カミュールを筆頭とした一群であった。

この軍団には思うほど荷物が見当たらない。

それもそのはず、空間収納魔法の使い手が多いからだ。


空間収納魔法で、電脳兵のセブンから分け与えられた

ミスリルワイバーンの肉や、水樽、テント、予備装備などを

肩や背中に背負った小さな袋の中に保管しているのである。


 (セブンには驚かされるばかりであったな。

  装備類の複製、不足品の錬成、便利なことこの上ない。

  うむ、このビーもこの先サラと時折会話するのに

  便利であるな。)


セブンはカミュールとの別れ際に、

この先の連絡用にと、ハチ型のバグドローンを渡していた。

カミュールはビーという魔物に似ているからと、

ビーという呼び名を付けていた。


渡す時に、実際の使い方として、ネコ獣人族の村の拠点にいる

サラに連絡を取り、サラはホログラム越しに

カミュールに挨拶し、一頻り話し込んでいた。


どうもこの二人は波長がとてもよく合うようで

カミュールが落ち着いたら、セブンと共に

サラも訪問する約束まで取り付けたほどだ。


 『別にあなたはついて来なくても

  カーラと二人で飛んでいけるのだわ。

  そんなにカミュールさんのことが気になるのかしら?』


サラからは冷たい声でそんな風に言われたが、

二人にするとカミュールが何を言うかわかったものでないので

お供させていただくことにしていた。


 (さて、後の楽しみが出来れば、この行軍も苦でもないな。

  いずれにせよ全力で当たるのみだ。)


力強く足を踏み出すカミュールであった。



 (さて、今の足取りなら、あと数日で麓の森の辺りに着くな。

  護衛能力もあるハチ型バグドローンも喜んで

  受け取ってもらえた事だし、ここいらで拠点に戻るか。)


カミュール一行の上空をステルスモードで警戒していた

セブンはそう見極めて、そっと一行に別れを告げるのであった。


 『待つのだわ、もう一仕事することをお勧めするわ。

  カミュールさん達の向かう先にはオアシスも湖らしきものも

  見当たらないのだけれど、アフターサービスをする心遣いは

  出来ないのかしら?


  森の少し奥まった辺りが窪地になっているようだから

  そのあたりがお勧めよ。』


 (了解、魔力ランク上がって余りまくってるから

  丁度いいか。蘇生も回復も効果範囲が100m円内にまで

  広がってたから、これもすげぇ事になりそうだな。


  カーラ、サラのおすすめポイント付近までこのまま移動頼む)


 『了解なのです。精霊様は頑張るのです。』


 (ちっ、いいよな、3Dホログラムなのに精霊扱いされてさ。

  俺なんか、カミュールさんにまで

  大丈夫か?魔力あげようか? とか言われたんだぜ。

  勘弁してくれよ、マジでゴーレムになった気分だよ。)


 『どんな気分なのか理解に苦しむのだけれど、

  魔力の残りをしっかり確認するのを忘れないことね。』


 (はいはい、大丈夫ですよ。

  一回使うだけだから200しか減らないし。

  まだ2000以上残ってるし。


  しかし、蘇生と回復の回数制限なくなったのもすげぇけど

  錬成もえぐいな。

  頭で認識した通りの物が再現されて

  強度もばっちりだったもんな。

  とても砂から出来てるとは思えなかったな。


  やっぱ、魔法すげぇわ。)



 『そろそろおすすめポイントなのです。  

  滞空するのです。』


 (よーし、いっちょやるか。

  効果範囲50km円内ってありえねぇし、

  時間も1時間はヤバ過ぎるだろ。

  範囲も時間も調整できるのは改善ポイント高いな。


  天空の瀑布! )


5kmほど先の辺りの上空から急に黒い雲が沸き立ち、

凄まじい爆音と共に巨大な瀑布が顕現した。

10分ほどで一旦止めてみると辺り一面が巨大な湖に変化していた。


 (よし、うまく調整できた。これなら当面大丈夫だろ。

  戻ろうか、カーラ)


 『了解なのです。ロフテッド軌道で時短するのです。』


 (OK、任せた。じゃあ、サラ今から帰投する。)


 『了解、カーラついでに東側の望遠撮影もお願いね。』


 『了解なのです。ではフルバーニア!』



揺らめきがほぼ垂直に上がっていくように見えた。


カミュールは遠くの空に現れた黒い雲と

遅れて聞こえてきた爆音を耳にしながら

セブンに感謝しつつ、その音の方角へ進路をとるのであった。



しばらくするとセブンとカーラが拠点に戻って来た。


 「セブン、帰投しました~っと。

  カイが出払ってるとガランとしてるな。

  って、3基とも出たの?」


 「当然なのだわ。海の広さを考えれば3基では足りないのだわ

  カイから速報が入ってきたところなのだけれど、

  海の中は様子が変なのだそうよ。


  澱みはあるけど、生き物が見当たらないそうよ。


  おそらく海流が弱まって海の上の温度変化も

  滞り気味になっているのだわ。

  そうなると、気候の変化が少なることも想定されるのだわ。


  大きな生命反応があれば、

  それがおそらく海竜なのだと思うのだけれど

  問題はその封じた魔道具の存在なのだわ。

  

  情報がないから想定で対処するほかないのだけれど、

  危険が伴うのだわ。」


 「まぁ、安全に対処できるとは思ってないから

  出来る範囲で頑張りますよ。

  

  じゃ、その間、調整に入ってくるわ。」


 「あら、今日はやけに素直なのは良い心がけなのだけれど

  何かあるのかしら?」


 「いや、別にこれといってないけど、ランクアップ後の

  各ユニットの確認もあるかな。

  じゃあ、下降りて籠ってくるわ。」


1階にある電脳兵専用調整ポッドに向かうセブンの後姿に

サラは覚悟を決めた目を向けるのであった。


ポッド内でサラとのリンクを切ったセブンは

悩むのであった。


 (知らなければよかったこととか、

  思い出したくなかったこととか、

  任意に消せるといいんだけど。

  そう都合よくは出来ないよな、やっぱ。


  禁則事項 解除っと。メモリー一気に増えるなこれ。

  ん? 超加速モードの解放? なんだこれ?

  ここ一番で使えそうだな、これも開放っと。

  この先出し惜しみなしで戦うこともあるだろうしな。

  何でもこいだ。


  アトランティス帝国には俺の様な電脳兵が

  異界召喚されているかもしれんしな。)


ゆっくり調整システムの中に意識を沈めていくセブンであった。

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