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開拓者精神

電脳兵のセブンは、水を湛えてきらめくオアシスの周りで

魔族の民にミスリルワイバーンの肉を振舞っていた。


 「まだまだありますよー皆さんしっかり食べてくださーい。」


串にさして炭で炙っただけではあるが、

肉汁のうまみと香りが絶品の焼肉であった。

この辺境まで強行軍で移動してきた強者たちだけに

しっかりと食べるが、皆整然として規律の高さを

感じられる食事の風景であった。


 (やっぱ、無理矢理配らないと、遠慮して取りに来ないなぁ。

  お行儀のいい人ばかりだな。)


あれ?女王様進んでないな、串を持ったまま水面を見てるな。

どれ、ご機嫌伺い行きますかね。

 

 「あ、すみませんが、焼くのを替わってもらってもいいですか?」


見た目が少し若い感じの青年に声をかけると、

笑顔で受けて貰えた。


セブンは、ぼんやりとしているカミュールの横まで歩みを進めて

声をかけた。


 「女王様、まだ何か悩み事でも?」


小さなため息をついてカミュールは話し始めた。


 「そなたには感謝しきれぬ大きな借りが出来たな。

  そんなそなたに話すのはどうかと案じておったが、

  やはり話しておこう。長くなるが構わぬか?


  うむ、先のフィアーが関わることだが、

  あの者はこの大陸の者ではなかったようだ。


  噂程度でしか聞き覚えがないが、遥か東の海に、

  海神の子孫と称する民が治める島国があるという。

  名をアトランティス帝国。

  フィアーはそこの王女であったようだ。


  王子と共にこの大陸に渡り、奴らは先住民といっておったが、

  我ら魔族だけでなく、人族も獣人族も滅ぼして、

  自らの領土にするつもりであったようだ。


  来て早々に見たことのない魔道具で海竜様を封じたようだ。

  海竜様は、この大陸の周りを取り巻けるほどの大きな竜と聞く。

  漁師の中には見たことがあるものもいたようだが、

  大きさについては眉唾物だな。

  

  その後王子と別れ、魔族の国に入り込んだようだ。

  そなたが倒すまで全く疑う気が持てなかった。

  何らかの精神制御魔法を使っておったのやもしれぬ。


  一つ確認したいのだが、そなたは一人で

  この世界に渡ってきたのだろうか?」


 「? そうで・・あ、ケットシーのクロと一緒に渡ってきました。」


 「ケットシー・・運命の女神様の御使いである精霊様!

  そうか、そうだったか。いや、奴らの過去を見ていると

  精霊様を使って異界召喚魔法を使うところが視えたのだ。


  精霊様と入れ替わるように異界から渡り人が現れたのだ。

  精霊様は、そなたらの異界に渡っておられたのだな。


  そなたは最初にこの大陸に一人で渡ってきたのであったな?

  であれば、あれは別の者か。

  うむ、この大陸にはかかわりのない事だな。


  さて、そなた話したいことがあると申しておったな。」


 「あー、人族の国でのことですが、あの国も水不足で

  困窮した挙句正気を失っていたようでして、今は魔族の国に

  侵攻したことを悔やまれておられます。


  復興には全力で協力して貰えると王様からお言葉頂いています。

  出来れば、あちこちに散らばってしまった方も戻って・・

  

  「それはない、すでにあの国はないのだ。復興など不要だ。

   我らは新たな土地を目指し、道を切り開き、突き進む覚悟だ。

   謝罪も不要。我らが弱かっただけのことだ。


   そう伝えてくれぬか。

   我らは運命の流れを戻ることなく、新たな未来を掴むまで。

   次は負けぬとも伝えておいてくれ。」

  

  ・・・分かりました。では、装備類なども修復できる魔法が

  使えるのでやらせてください。ここでは出来ることをしたいので。」


 「ああ、それは助かるな。そなたの助力には心底感謝している。

  サラ殿がいなければ連れて行きたいほどにな。」


 「いや、あのサラはそんなんじゃないので。

  ・・・ちょっとさっきの話の中で気になったんでですが、

  海竜様を封じたのはどこらへんなんでしょう?」


 「うむ、場所が特定できるものは視えなかったが、

  おそらく人族の国の近くではないかと思う。

  フィアーはそこから移動してきたようなのでな。


  おそらく、王子の方はそなたが馬車と共に粉々にしたと思うのだ。

  馬車の中の男の肌と髪の色がフィアーとそっくりだったのでな。」



あー、あの時かー巻き込んだ人がそうだったとは・・。

しかし、海竜様・・気になるな。


 「では、これで失礼して、修復の方して回ります。」


セブンはカミュールとの話を終え、焼け落ちたテントを回り、

修復魔法を駆使するのであった。



 『やっと繋がったのだわ。そちらの様子はどうかしら?』


ネコ獣人族の村の拠点にいるサラとの通信が回復したようだ。

セブンは、これまでの経緯を報告し、海竜様のことを調べて欲しいと

依頼してみた。


 『おそらく、その海竜様が気象変動のキーになっていると思うのだわ。

  大陸の周りを巡る、海流としての役割を担っていたのだとしたら、

  気象変動につながると予想されるのだけれど、

  海の中の調査はカイのダイビングユニットの出番なのだわ。

  

  カイには人族の王都の方面に移動開始して貰っておくわ。


  魔族の女王、カミュール様ってとってもお綺麗な方ね。

  変な目で見ていないでしょうね?

  品性を疑われるような目線には気をつけることをお勧めするわ。』


 (いや、そんな目で見るような余裕ねぇし、怖そうだし。。

  ここを引き上げたら俺もカイと合流して海の調査に行こうかな。

  

  とりあえず、魔族の皆さんの装備類修復し終えたら一旦戻るよ。

  錬成 出来るようになったといっても、模造品と

  正規の弾丸との違いも調べたいし。)


 『そうね、一度戻ってからでも間に合うわね。

  そうそう、カミュール様にも連絡用のバグドローンを

  お渡しすることを忘れないことね。

  いつか私もお会いしてお話させて頂きたいって

  お伝えお願いできるかしら。』


 (な、何をお話するおつもりで。。)


 『この世界の事や、女王様の開拓者精神に触れさせて頂きたいだけよ?

  他に何かあるのかしら?』


 (いや、何でもないです。では修復にかかりまーす。)



セブンの電脳内には、カミュールとの過去視で呼び戻された記憶があった。



物心つく頃に天道家本家に引き取られた事を、

常に凛とした姿で眩しい存在だった義姉の姿を、

義姉を傷付けた砂漠の民への復讐じみた狂気を、

焦げ付く匂いと血煙の中で生き抜く日々を、

自らと変わらぬ少年兵を撃ちながら自分の心も殺し続けた日々を、


思い出したくなかった記憶が呪いの様に電脳内に染み付いて行った。

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