AIの覚悟
電脳兵のセブンは、人族の王都に連れ去られたファーラの父、
フェイズの奪還作戦を考えていた。
あー手が足りんとしてもあいつは嫌すぎるなぁ。
いや、待てよ。
あまりにもうざかったんでホバータイプに改造依頼する時に
あいつのシステム落としていじってもらったはずだよな。
となると、新規設定できるはず!
よし!今度はまともな奴になるように調整するかな。
そう思い立つとセブンは拠点の二階にあるダイビングユニットのところへ
向かおうとした。
「その必要はないのだわ。
すでに3Dホロナビゲーターの設定・再起動は完了済みよ。
そうね、彼も交えて作戦を立案することをお勧めするわ。」
え”っ? 何ですってサラさん?
今なんてこと仰いました?ま・さ・か・アイツを再生させたんですか??
何でーーー!!アイツだけはっ、アイツだけは使いたくなかったのに!
あー終わった、また俺のメンタル終わったよ。
アイツ使うくらいなら一人で特攻した方がマシだな。
『相変わらずの無能ぶりですね、セブン様。
よくそんな短絡的な思考で今まで生きて来れましたね。
いや、失礼、ただ惰眠を貪られていたにすぎない無駄な時間でしたか。
さて、カーラからの画像情報も続々と入ってきております。
装備を確かめながら計画立案を思慮される方が得策かと。』
出た!出やがったか、こいつ!
金髪サラサラヘアーで薄赤い目が冷たさを倍増させている感じがする、
毒舌エセ執事風のイケメンメガネ野郎。
ダイビングユニットの3Dホロナビゲーター、カイのメッセージが
電脳に届いてきた。
カイは黒のテールコートを纏ったフレームレスメガネをかけた
ちょっとクールな金髪イケメンだ。
セブンの3Dホロナビゲーターだったサラとは気が合い、
いや、サラに仕えているような状態であったがために、
セブンは辛らつな物言いでメンタルを切りまくっていた。
ホバーユニット化する口実を付けてシステムダウンさせただけでなく、
念入りにリセットまでしていたセブンであったが、サラにあっさりと
完全蘇生 させられてしまったのであった。
いや、俺のメンタルが 完全滅亡 しそうなんだけど、
何でも素直に言うこと聞いてくれる弟キャラにしたかったんですけど!
「グダグダしている時間は無駄なのだわ。
さ、二階に上がってカイと作戦会議の時間よ。」
あー、はい。そうしましょうそうしましょう。。(棒読み)
反重力ユニットがパワーダウンしているんじゃないかと思うくらい重い足取りで
サポートアンドロイドのサラの後に続いて二階に上がるセブンであった。
拠点の二階には、弾薬庫の向こうに、先頭部がやや平べったい流線形をした
グレーのダイビングユニットが保管されている。
カーラが出ているのでフライングユニットのあるべき場所は固定アームが
カタパルトと一緒に仲良く留守番をしている。
サラとセブンがダイビングユニットの前まで来ると、
先頭部のあたりにふわっと3Dホロナビゲーターのカイが浮かび上がってきた。
「再調整ありがとうございます。サラ様。
新装備にて微力ながらもお力添えさせていただく所存。
何なりとお申し付けください。
あ、セブン様もいらっしゃったのですね、
セブン様の存在感はその思考と同じく薄くて気付けませんでした。」
「あー影が薄くて悪かったな!ここが暗いのが悪いんだろうよ!
投光器のライトに付け替えとくわ。」
むっとしたままむくれたセブンを横目にサラがカーラに現場の状況を聞き出した。
「カーラ、王都の様子はどうかしら?」
フライングユニットのカーラは、村で焼肉パーティが始まる前に
拠点からロフテッド軌道で王都の上空に出ており、
大量のバグドローンを王都内に放って情報収集している。
「バグドローンはすんなりと王都内に展開出来ているのです。
魔法障壁はドローンには無効なのです。
王都の上空からの画像の通り、東側は海に面しているのです。
北西部に大きな湖のようなものがあるのです。
ほぼ水がないぬかるみの状態なのです。
湖の南東部に生命反応が多数あるのです。
王都内の町には人族の形しか認識できていないのです。
海側のお城の内部にも今のところ人族の形しか認識できていないのです。」
「そう、では第一優先捜索範囲は湖の南東部の生命反応ね。
耳が確認できるといいのだけれど、ローブで顔を隠しているので
厳しそうね。それでも、捜索して欲しいのだわ。」
「一つよろしいでしょうか?
地下室のようなところに幽閉されている可能性はないでしょうか?
連行される時に愛馬が刺されるところを見ておられたのであれば、
もしかすると酷い目に合われている可能性が考えられます。
もっと最悪な場合ですが、発言してもよろしいでしょうか?
必ずご気分を害されると判断しますが。よろしいですか?
獣人族の方々は体内にある属性の決まった魔石から、
人族の場合は、属性適正のある体質があれば、
魔石から魔力を得て魔法を行使出来るのでしたね?
であれば、これはあくまで最悪です、最悪の場合、
魔石が体内から取り除かれている可能性も考えられます。」
「縁起でもないこと言うな!よくそんな酷いことが考えられるな!
「人族から見れば効率の良い手法でしょう!
亜人として見下すだけでなく、彼らの国すら攻め滅ぼしたのですよ!
そのくらいはやる可能性があることくらいお分かりでしょう!?
この村もよく滅ぼさなかったものだと不思議に思うほどです。
楽観視していては、その時うろたえて行動が滞るだけです。
いいですかセブン様。
この世界では人族は他種族を侵略する行為を繰り返し、
連勝を重ね、我らが天下と息巻いているのです。
他種族の命など」
分かった!もうそれ以上言うな!」
「落ち着きなさいセブン。カイの言う事に一理あるのだわ。
この村を滅ぼさなかったことは私も疑問に感じたことなのだけれど、
今はそのことよりも捜索が最優先よ。
私も最悪を想定してファーラさんに衣類をお願いしたのだわ。
せめて、遺体の一部でも残っていれば
「サラまでそんなこと言うのかよ!」
あくまで最悪の想定よ!!いい加減に理解しなさい!!!
平和に交易をしていた獣人族の国や魔族の国を滅ぼすような人族なのよ!
連行されたら命に危険があることくらい分かるでしょう!
だから、あのブルーというフェイズさんの愛馬は必死に抗ったのよ!」
「馬でも理解できているというのにセブン様は馬以下ですか?
セブン様、あなた様はファーラ様からお父様である、
フェイズ様の奪還の依頼を受けた傭兵なのです。
たとえどんな形であろうとも連れ戻すことがあなたの責務です。
全うするためにはこの私も尽力致しますゆえ心して挑まれますよう。」
「分かりたくねぇけど、分かったよ!
なんでどこの世界も水不足になってんだ、ちくしょう。」
「では、奪還作戦ですが、カーラからの情報が重要です。
正確にフェイズ様の居場所を確認する必要があります。
その上で、このダイビングユニットのホバーモードで突入をします。
いいですか、セブン様。正面から行きます。」
「えっ?何言ってんだ?ステルスモード使えんだぞ?
わざわざ見つかってどうすんだ?」
「やはり思考が浅いですね、セブン様。
ホバーモードでは、光学迷彩を駆使しても、重力場の変化、草や砂の動きで
探知される可能性があります。
さらに、勇者という不確定要素があります。
奪還にはリスクを伴います。特に戦闘能力・戦術が不明な勇者は危険です。
また、奪還するとなると、王都の軍並びに王族も場合によっては、
殲滅しなければなりません。
でなければ、今度はこの村が報復を受ける事になるでしょう。
セブン様、あなた様はこの世界の人族の王都を滅ぼす覚悟はおありでしょうか?」
「ああ、周りからどう見られようとも俺はやる。
守るために戦う。」
「では、私が先陣を切って王都に突撃を仕掛けます。
そのために、私を拠点管理用アンドロイドに移していただきたい。
ダイビングユニットは標準のAIで連携を取りますので、
私がデコイになります。
セブン様あなた様がご覚悟をお決めになるのなら、私もAIとはいえ
覚悟を決めさせていただきます。
カーラ用の電磁砲をボディに固定し、ダイビングユニットの
高速速射砲で攪乱戦を仕掛けます。
セブン様はその隙に奪還をお願いします。」
「何を言ってるんだ!
管理用アンドロイドなんて家事程度の作業しかできないんだ。
電磁砲なんか撃ったらボディごと吹っ飛ぶぞ。
一発もまともに撃てるわけがない。
ここは俺が潜入して奪還してくる。
外で待機していて追っ手を断ちながら撤退する方がいい。
最悪の場合、その覚悟でいてくれるだけでいい。」
「移動時間も考えれば、確かに先にセブン様の潜入が先手を取れますね。
分かりました、今回は私が折れましょう。装備の準備急ぎます。」
「ああ、そうしてくれ。
俺はカーラが戻り次第行くよ。
サラもそれでいいかな。」
「弾薬なのだけれど、相手が人族なら閃光爆裂弾は効果的だと思うのだわ。」
「そうだな、小型化して手投げ型にしたものも持っていくとするか。」
そう言うと、眼内モニターから、閃光爆裂弾の型式変更改造のオペレーションを
始めるセブンであった。
カイはダイビングユニットの後部に保管されている燃料気化爆弾を見据えていた。




