歓喜の陰で
フライングユニットを装着した電脳兵のセブンは、
ネコ獣人族のファーラ達の村に辿り着いた。
村の周囲は高さ2mくらいの木製の柵で囲まれていた。
何とか雨風は凌げそうなログハウス風の家が寄り添うように建っていた。
フライングユニットで牽引してきた荷馬車から
ファーラ達が降り立ち、フライングユニットの
先端上部にふわっと浮かび上がっている、
3Dホロナビゲーターのカーラに礼を述べていた。
身長30cmほどの黒髪少女軍曹のような見た目なのだが、
彼女たちには神聖な精霊に見えているようだ。
(扱い違うよな~、俺なんかお礼じゃなくて、
お腹減ってない?魔力あげようか?
って、完全に魔力で動いてるゴーレム扱いなんだけど。
いつの間にか人間やめてる感じなんだけど。
いや、とっくに機械の体の電脳兵だったか。)
『諦めが悪いわよ、セブン。
その村では 襲撃者の悪いイメージのある人族 と見られるより
村を魔力で守ってくれるゴーレム とふるまう方が得策よ。
都合よく勘違いしてくれたファーラさんに心の中で感謝するべきよ。』
森の中に置いてきた拠点の管理用アンドロイドのサラが
眼内モニターのAIリンクを通して、慰めとも受け取れる声をかけてくれた。
そうだな、しばらくここでこの世界について情報収集しつつ、
護衛に、水不足対策とやれることやりますかね。
フライングユニットのカーラには、村の上空の監視を依頼し、
バックパックからはバグドローンを展開して、
周囲のマッピングを開始した。
村の入り口までついていくと、ファーラが俺の方を振り返った。
「見ての通りの寂しい村だ。
もっと前は今の倍以上の仲間がいたのだが、
人族の襲撃を恐れて、森の向こうの方へ
新天地を求めて旅立ってしまったのだ。
今はここに100人ほどで暮らしている。
中で皆に紹介しよう。」
「ありがとう、ファーラ。
挨拶を終えたら、早速水魔法を使おうと思うんだけど、
預かってる樽と桶にも水を入れた方がいいのかな?」
「そうだな、無理をしなくてもその分だけでも入れて貰えると
有難い。
本当に魔力補給しなくても大丈夫なのだろうか?
遠慮は無用なのだが。」
「えーっと、(汗・・出ないけど)全く問題ないから、
全然大丈夫だから。」
ファーラ達に続いて村の中に進むと、
帰還を知って村人たちがみんな周りに集まってきた。
「皆、聞いて欲しい。
実は残念ながら水の調達が出来なかった。
静かに、最後まで話を聞いてくれ!!
調達どころか、途中でミスリルワイバーンに
襲われて全滅するところだったのだが、
ここにいる人族に見える顔立ちをしているが、
会話ができるメタルゴーレムのセブン殿に
救っていただいたのだ。
セブン殿には、無理を言ってゴーレムの衛兵として
村の護衛についていただけることになった。
さらに後程、湖の方で水魔法も
使っていただけることになっている。
預かっている皆の樽や桶は湖の方で水を入れることになる。
手の空いているものは手助けを頼む。
では、こちらのセブン殿と皆仲良く頼むぞ。
セブン殿、前へどうぞ。」
「魔力の続く限り、皆さまのお力に、村の守りになれるよう
頑張ってまいりますので、これからどうぞよろしくお願いします。」
おおー自然に話ができるんだ とか
人族っぽいな~ とか いう声が聞こえた。
「では、早速湖の方で大きな水魔法を使います。
加減がうまくないので大雨になるかもしれませんが、
未熟者ですので、ご容赦お願いします。」
大雨だって!?この村の周り中にも降らせれるの?
マジか?天候変えるほどの魔法なんて聞いたことないよ!?
と反応はいろいろだったが、この村にもヤバいくらい降るかも と
自分自身でも不安に思いつつ、湖の方に向かうセブンであった。
うわー完全に干上がってるな。
水深は深くなっても30mくらいか。
浅くて広い湖なんだな。
このあたりにアイテムボックスから
樽と桶を並べて出すかな。
「えーっと、ではこの湖の真ん中の上空から村を覆うくらいに
超大粒の雨を降らせます。
いいですか~? ちょーっと、雨粒が痛いかもしれませんよ~
いいんですね~。 じゃあ降らせまーす。」
セブンは湖に顔を向けて、ぼそっとつぶやいた。
「天空の瀑布」
途端に湖の上空から村の家まで黒い雲が沸き広がったかと思うと
超大粒の雨がバチバチという音を立てながら降り始めた。
「痛い、痛すぎだよ、殺す気かー」
「音大きすぎて耳も痛い。」
とか、反応は色々だ、だから言ったのになぁ。
俺は痛覚ないからどのくらい痛いのか知らんけど。許せよ~~
と思っているうちに5分が過ぎて雨が止んだ。
足元は反重力ユニットの出力を上げないと埋まるくらい
ぬかるみになっていて、干上がっていた湖は7部くらいまで
水を湛えて湖面が嬉しそうに揺れていた。
ネコ獣人族達は呆然と湖を見ていたが、
はっと我に返り、セブンが並べていた各々の樽や桶を
手引き車や荷馬車に乗せようとし始めた。
「あ、水の入った樽や桶は運びますので、
お任せください。
じゃあ、一旦アイテムボックスに全部収納します。
皆さんの家の中で取り出しますので、目印を教えてください。」
そう言うと各々の樽や桶の目印になる傷などをセブンに教えてくれ始めた。
セブンは眼内モニターを通して、持ち主と荷物の紐付けを実行しておき、
各家を回りながら、樽と桶を引き渡すのであった。
はい、水不足対応と配達も完了っと。
『まだよ! 拠点と私達の移動が残っているわ。
ファーラさんに相談してから、ゴーレムの家 として設置場所を
決めることをお勧めするわ。』
そうだった。
じゃあ、ファーラさんに拠点とサラとクロの話をして
カーラと拠点に戻るかな。
笑顔で話をしている村人の中から、
ファーラが少し悲しげな顔をしながら、とぼとぼと歩き去る姿に、
セブンは蘇生魔法の出番の予感と、理不尽な悲劇の影を感じ取っていた。
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お読みいただきありがとうございました。
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大変嬉しくて励みになりました。
この物語は、ifの太陽系、地球の姿をイメージして
木星も太陽だったとか、地球の大陸も一つで
大きなゴンドワナ大陸だったとかの設定と
エルフや獣人もいるようなファンタジーな世界観で
SFチックな主人公があれこれやらかします。
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