季節を司る精霊
電脳兵のセブンは、北部の地下に広がる闇人族の酒蔵で
巨人族との神酒造りを終えて、久しぶりに地上に顔を出した。
「地上に繋がるトンネルを抜けると
そこは雪だらけだった。
大雪なんですけど!
2m近く積もってるんですけど!
まだ冬本番って感じのままって・・。
どうなってるんだろ?」
「そうね、セブンはずっとモグラのように
地下に籠もっていたから知らなかったのね。
あなたが籠もってから雪が降り続いて
地上の交通網は麻痺しているのだわ。
リニアメトロは動いているのだけれど、
駅までの道の確保に各ギルドの冒険者達が
連日派遣されているのが現状よ。
暦の上ではもう春になる頃なのだけれど、
そんな気配がまだないのだわ。」
「そっか、じゃあ久しぶりにフライングユニットつけて
雪かき兼ねて飛んで帰りますか。」
セブンとサラはパティシエの街までの道の上の雪を
アイテムボックスに収納しながら飛んで帰って行くのだった。
パイロとシヴァ、カイはメフィストの影転移魔法で
カイのバーの店内まで送ってもらっていた。
「また、美酒を味わせて頂こう。」
新酒を使ったカクテルで送ってくれるとは、
いい男である。悪魔族ですけど。
数日が経ってもまだ夜になると雪が降る日が続いており、
日中に溶けた分を補充して依然として2m近い積雪を
維持しているのだった。
セブン達がもう帰ってくると言う夕刻に、
カイのバーで新酒のカクテルを味わう集いが出来ていた。
「あたい、雪は苦手なんだよねぇ。
なんでフェンリルと白虎はあんなに嬉しそうに
子供達と遊んでられるのか全然理解できないっしょ。」
「あれは無邪気なだけなのじゃ。
私も花の咲く春の方が好みじゃぞ。」
「そうですね、シヴァ様と同じく私も春の方が好きです。
命の芽生えを感じられる春先が特に。」
「ふむ、どうやらこの大陸には手強い冬将軍が
君臨しておるようだな。
あれをどうにかせねば春は遠いと覚える。」
メフィストがカイの作った新作のカクテルの風味を
吟味しながらそんなことを言い出した。
パイロ、シヴァ、蓮がえっと言う顔で
メフィストの方を注目した。
「冬将軍が君臨って、本当にいるのですか?」
「うむ、この世界には精霊が多く存在している。
その中に冬の季節を司る精霊がいても不思議はなかろう。
実際、夜には空を忙しく飛び回っているようだ。
音だけでなく生き物の命も飲み込む
静かな雪が降る夜も悪くないものだ。
眠るように死ねると言うことは生き物にとっては
悪くはないものだと思える面もある。
しかし、こうも降り続いてこの地に生きる物の数が
自然に減ってゆくのはもったいないとも思える。
全ての物事は受け止め様でどうにでも変わるものだ。
あるがままを受け入れるもよし、
抗って掴み取るもよしと言うことだ。
どうかね、セブン殿?」
「あーただいま戻りましたー。
って、また外は雪が降り始めてるんですけど。
俺はどの季節も好きですけどね。
移り変わりのある世界に存在しているんだって
思えるから。」
「ふむ、それも良い。
そういえば、冬将軍は北から訪れているようだが、
依然として強い力を持っているままだ。
彼らの力を弱めるか、春を齎す精霊の力を強めるか
どちらかに転ばねば、このまま雪に閉ざされた
白い世界になるやもしれぬな。」
「それは危険だよ、セブン。
この世界全てが凍りつくかもしれない。
一度世界樹の精霊に会って話を聞いてみて欲しい。」
「わかったよ、クロ。
そんなに大きな話じゃないと思うけどなぁ。」
「いや、そうでもないのじゃ。
氷河期が訪れてしまうやもしれぬのじゃ。
かといって、冬将軍の精霊を討伐しようものなら、
この大地は冷えることがなくなって、
いずれは砂漠と化してしまうじゃろうな。
何よりも均衡が重要なのじゃ。
どんな季節であろうとも移り変わりの時期は
病が増えるものじゃ。
あれは精霊の戦いの余波を受けておると
言われておるのじゃ。」
「氷河期って、一部の種族以外滅びそうな事案だな。
倒してはいけないとなると、この世界に応じた手を
教えてもらうのがいいかな。」
「それが賢明だと思うのだわ。
でも、世界樹の森に向かう前にこの街の除雪作業に
協力していくことをお勧めするわ。
そうそう、世界樹の精霊様の下で神気を押さえ込む
鍛錬も行うことも忘れないことね。」
サラに念押しをされながら、セブンはフライングユニットで
世界樹の森へ向かうため拠点の二階へ向かっていった。
「あ、あたいも一緒に行きたい!
ちょっと待ってよ!」
慌てて駆け出してゆくパイロの後ろ姿を少し羨ましそうに
見送るサラであった。




