神々の宴
電脳兵のセブンは闇人族の酒蔵に蔵人として篭っていた。
ある日、神殿へのお供え用の生酒も含めて利き酒を
行うこととなった。
闇人族でも利き酒専門の者がおり、
出来上がった酒の品評をするというものだ。
闇人族だけでなく、獣人族、魔族、人族の
専門の使者が訪れ、酒蔵周りは賑やかになっていた。
いつも訪れている赤い龍人族の使者だけでなく、
どうやって知ったのか神龍も試飲したいとのことで
黒い龍人族の使者が訪れた。
いつの間にか天翼族のヤバル戦士長の姿もあった。
美味いものには目がない男のようだ。
巨人族には専門のものはおらず、皆で感覚を
共有し、総合的に判断しているそうだ。
ホルス神の戦士達の中にはシャーマンのような姿の
専門のものがいて、皆で集まり何やら儀式めいたことをしていた。
その姿を後ろから見ていたメフィストは感心の声を漏らしていた。
「ほぉ、異界の神をその身に召喚したのか。
魔術とは異なる力、実に興味深い。」
「あれは魔術というより呪術に近い古の言葉による
呪法と見える。
アフリカの大地に住まう古代種の民が
得意としていたものだ。」
「北の氷の大地でも先住民族の流れを汲むものが
似たような言葉の術を使っていたと聞く。
あれと似たようなものか、ルシファー。」
「そうだな、彼らのルーンという意味のある言葉と
似ているところがあるな。
我らでも知らぬ言葉の力、確かに興味深い。」
ホルス神のシャーマンは儀式を終えると同時に
痙攣を起こして昏倒したが、いつものことなのか
誰も驚いた風もなく、淡々と横にされて
何やら水のようなものを振りかけられていた。
すると、徐々にゆっくりとした息遣いになって
落ち着いたようだ。
「あの水、神払いの術が溶け込んでいると見た。
言葉といいあの水といい、
知らぬままではおれん。
シャーマン殿が気付かれたら、御指南頂こう。」
二人は異界、もしかすると外宇宙の技術に興味を引かれ
利き酒に集中できないようです。
「うむ、これは美味い!
これだな。ヘルに持って帰るとしよう。」
「貴様は先ほどもそう申しておらなんだか?
ん、確かにこれの方が味わい深い。」
「このテリと微妙な透明度がいいと思うのだわ。」
「どうかしら?
風味はこちらの方が豊潤なのだわ。」
「これは良い出来じゃな。
この香りが私は好きじゃ。」
「シヴァ様、こっちの方が甘めで飲みやすいっしょ。」
「パイロ、お酒は少し辛口の方が飲みやすいのだわ。」
「いえ、サラ様。お客様のその時のご気分次第で
飲みたいお酒は変わるものです。
どれも絶品のお酒でございます。」
「おおっ!カーラ!
このホルス神のお供え用ビールは
美味いぞ!
今まで飲んだことがない味わいだ!
どんな作り方をしたのだ?」
「お師匠様、それは聞いてはいけないのです。
情熱の結晶がお酒なのです。
美味しく頂くのです。」
ありえない面々も利き酒というか、
飲み歩きをしているのを見かけたセブンは、
他人の振りをしながらそおっとその場を離れようとしていた。
「なんで主神様とか、サラ達まで来てるんだ?
でも、ホルス神のビールも気になるなぁ。」
ホルス神の戦士達の酒蔵の前には人だかりが出来ている。
異界でもこの星にはない技術が盛り込まれているようで、
闇人族、獣人族、魔族、人族と巨人族の杜氏が唸っていた。
獣人族の酒蔵では果実酒が多く、
魔族の方では香りが独特のもの、
人族は闇人族から教えを受けただけあって
濃度の濃いお酒が多かった。
ホルス神の戦士達はこの酒蔵で永住することを決めて
付近で麦の栽培をしたいと闇人族に頼み込んでいた。
付き添ってきたメフィストとルシファーも身元を保証すると
契約を交わして、無事永住の地を手に入れられたようだ。
(いやいや、闇人族の皆さん、いいのかな?
悪魔と契約って・・・、まぁ悪い奴らじゃないか。)
巨人族は巨大船内で作っている作物で引き続き
酒蔵を借り受けることになって喜んでいた。
セブンは闇人族からギルド経由で依頼を受け、
この地下の酒蔵空洞の拡張を始めていた。
「ただ土を収納して、水が出てきたら壁を錬成して固めて
の繰り返しか。
酒蔵作るだけあって地下水が豊富だな。」
「セブン、こんなところにいたのね。
これからイシュタルと出来立ての神酒を
頂こうと思うのだけれど、あなたも一緒にどうかしら?
地下の拡張なら私の力ですぐに出来るから
後で力になってあげるのだわ。」
「あーエレシュキガルさん。。イシュタルさんもか。。
(何か二人していい顔してるのは怖いな。
ヤバイ、断ったら死ぬパターンだ。
助けて、ネルガルさん!)
いやー、えーっと。。」
「セブン、もうお酒造りは終わったのでしょ?
何をしているの?私へのお供え忘れてない?
あら、エレシュキガル様、イシュタル様、
ご機嫌よう。
よろしければあちらで酒宴を開きますので、
ご一緒に如何?」
(スクルド様、あなたが神か。
確かに女神だな、うんうん。)
「あ、それじゃあ、俺もご一緒させていただきますね。
スクルド様、お供え用のお酒は
パイロに渡していましたので
貰ってきますね。」
「あら、それなら大丈夫よ。
さっきサラに声をかけておいたから
シヴァ神と一緒に来るわよ。
お姉様達も来るから、土埃は綺麗に払ってから
席についてよね。」
「「御相伴に与りますわ。」」
異界の女神姉妹も同席する神率の高い酒宴が催されるようだ。
主神に続いてロキ、ウルズ、ベルザンディ、スクルド、
シヴァ、ルシファー、メフィスト、ブリュンヒルド、カーラと
一緒に座らされている。
パイロ、サラ、カイは給仕に専念するそうだ。
何故か3人ともメイド服に身を包んでいる。
(この3人のメイド服ってなんだか新鮮だな。
サラもパイロも大人しいメイドさんに見えてしまう。
カイもこの姿だとやっぱり女の子だなって思えるな。)
「セブン、何か失礼なことを考えている目線なのだわ。
後でじっくり聴かせてもらうわね。」
怖い笑顔でそんなことを言われたセブンは背中に冷たいものを
感じつつも、危険な目線を投げかけてくる女神姉妹から離れて
悪魔の二人の間で大人しく酒宴を楽しんでいた。
両隣から、女神様達にお酌をして来いと悪魔の囁きを受けながら。




