世界大会 開幕
ついに巨大大陸の中央平原で
世界大会が開催される日がやってきた。
戦闘会場は神気の壁で覆われた500m立方の
空間内で行われる。
その立方体を取り囲むように円形の観覧席が
設けられ、東と西には高さ100mの神殿も
設置されている。
神々も出場しようとしていたが、
世界が滅びかねないので諦める代わりに
直に見れるようにと顕現できる神殿を
設置することになったからだ。
東西どちらの神殿も神界、冥界に繋がっており、
分け隔てなく顕現できることになっている。
「これはタルタロス神、久しいですな。」
隻眼の主神オーディンが挨拶したのは、
冥界の神タルタロスだ、
顕現したその体は主神の倍はあろうかという巨漢だ。
声をかけられると同時に、主神と同じ大きさになり
大きくうなづきながら大理石の椅子に腰掛けた。
「そうであるな。
まさかこのような面白い試みの席で
相見えるとはな。」
後ろにはハーデスとルシファーが腰掛けており、
その横にトールとロキが座っている。
さらにその後ろにはヘルが紅茶を入れた
ティーカップを持ってくつろいでいる。
「気に入らぬな、何故あの悪魔だけが
参加できるのだ。」
「そう言うな、ルシファー。
彼は元の体が人族なのだから、
資格があると言えばあるだろう。」
どうやらメフィストだけは参加できるようだ。
「スルトは剣の部で出たかったようだけど、
一番弟子を鍛えて代わりに出すことで
納得したようだね。」
「あの男のあんな剣を振るわれたら
世界が何度焼き滅ぼされるかわかったものではない。
我らも我慢して当然と言えよう。
ところで、フェンリルはこの世界でかなり太っていると
聞いておるが、どういうことなのだ?」
「あー、美味しいものの食べ過ぎですよ。」
「な、なんだと。なんだその美味しいものとは。」
「パティシエの街のスイーツですよ〜。
ちょうどここにもありますよ〜。
お一つ如何ですか〜。」
ヘルからマロンケーキを分けて貰ったトールが目をむいて
うまいと連呼している。
この大会の後、パティシエの街の神殿に行くことが
決定したようだ。
ロキもヘルも少しお腹周りがやばくなっている。
トールのメタボ指数が上がるのは時間の問題のようだ。
パティシエの街でパイロが作るスイーツは
このところパイロの神力が上がっていることもあって、
美味しさがこの世のものと思えないレベルになっていた。
病みつきになっても仕方のない魔性のスイーツだ。
大会主催者の森人族のギルド長が開幕の宣言をし、
剣の部から始まった。
予選は各ギルド支部内で行われており、
各ギルドの代表として戦うような形式となっている。
初戦から熱いカードが組まれている。
東のギルド支部から人族の騎士団長テュール対
中央支部の代表ネコ獣人族の戦士ファーラだ。
テュールの大剣と雷撃の連続攻撃を
ファーラは火と風の魔法の混合詠唱で生み出した
アフターバーナーのような加速で掻い潜りながら、
レイピアで突き返す動きで翻弄している。
雷撃を拳に纏わせたテュールの雷撃拳を受けて、
ファーラは気絶し戦闘終了となった。
負けたとは言え、善戦を見せた娘に
暖かな眼差しを向けるフェイズの満足した顔があった。
第二戦は龍人族同士の試合となった。
東の入場門から、赤い龍人族ブライが
炎の巨人スルトから気合を入れられ、
会場に上がってきた。
西の入場門前に影が差した。
見上げると空に巨大な龍神の影があった。
神龍が黒い龍人族の戦士長ベンゼルの戦いぶりを
観戦に来たようだ。
ベンゼルが神龍に一礼し会場に上がってきた。
両サイドの神殿からも神々の視線が熱くなっている。
いつの間にかタルタロスは移動し、スルトの横に
腰掛けて一緒に観戦するようだ。
試合が始まると両者の剣が激しくぶつかり合う音が
響いてきた。
どちらも一歩もその場を動いていないように見える。
だが、その剣の動きは全く見えない。
音だけが響いている。
しばらく打ち合った後、ブライが動いた。
後ろに飛びながら、剣に炎を纏わせてゆく。
その動きを見たベンゼルはそこにいるままで、
剣に青い光を纏わせてゆく。
次の瞬間、ブライが突き放った炎の刃が
ベンゼルに向かって一直線に伸びてゆく。
ベンゼルは手首を返して捻るような剣の動きで
突き返すと、流水のうねりとなってブライの
炎の刃に纏わり付きながら、ブライに向けて進み始めた。
ベンゼルの放った水のうねりの方が勝ったのか、
炎の刃が消えてしまい、水のうねりがブライに迫っていた。
ブライは左の掌を水のうねりに向けると炎の丸い盾を
作り出した。
そこに水のうねりが直撃し煙を上げて
押し止められたと思われたが、うねりが大きくなって
その盾を回り込むように膨らみ、盾を越えた瞬間に
細い水の剣となってブライを刺し貫いた。
神殿から観戦していたスルトの拳に力が入った。
刺されたダメージで反応が遅れたブライに
ベンゼルの剣が当たっていた。
流血しながらも、ブライは後ろに下がり、
剣を地面に真っ直ぐ突き立てて手を離し、
片膝をつき、右手を胸に当て
敗北を受け入れる姿勢をとった。
ベンゼルも同じ姿勢をとって、両者の戦いは終わった。
見るとベンゼルは無数の切り傷を負っていた。
斬られながらも流血を止め、戦っていたようだ。
剣の腕はブライが優っていたと
後にベンゼルは語っている。
自分の剣は浅く届かなかった、修行をやり直すと
ブライは敗者の弁を述べて会場を後にしていた。
過去からの因縁もあるかもしれないが、
二人はいいライバルとなったようだ。
「鍛え直す。」
スルトもそう言い残して会場を後にしていた。
剣の部は決勝でベンゼルとテュールがあたり、
雷撃をものともしなかったベンゼルが圧倒し、
初代王者となっていた。
弓の部が始まるようだ。
初戦は因縁のある森人族対闇人族のカードだ。
試合場の雰囲気が変わっていく。
立方体の中に木が乱立し、鬱蒼とした森の姿になっていた。
闇人族の戦士は丸い輪の武器を使うようだ。
それを見て険しい顔になった森人族の族長グランだった。




