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磨きをかけるもの

電脳兵のセブンは電脳化人という種族になってから

以前の体との違いに戸惑いがあった。


以前の旧型電脳兵の体は皮膚はお飾り程度であるだけで

ほぼ武装装備のためのオプションパーツの取り付け台の

役目程度のものだった。


動力は反応炉によって供給されるので補給は不要で、

武装類の補給、整備が必要な程度だった。


当然食事は不要で食欲もなく、

性別もないため性欲もない。


だが、ある時のバージョンアップで変化が起きた。

一般兵に混ざって食事をすることで

見分けにくくする偽装改造を施されたのだ。


これによって銃口だった口の場所に

味覚センサーを兼ね備えた舌の類似物がつき、

飲み込んだものを乾燥させて水分を抜いて

残りを燃焼させる装置がついた。


燃焼残渣は脚部のスラスター噴射時に

一緒に排出される構造だ。



それが新型の電脳化人になると大きく変化していた。


皮膚は一般兵と同じ弾力性のあるものになり、

食べたものを分別し、水分は今まで通り

反応炉の冷却用に、

油脂類は燃焼用の備蓄が可能となり、

腹部周りにストック出来る。


反応炉は小型化高性能化され、開いたスペースには

女性型は子供を産めるユニットが、

男性型は子供を作れるユニットが

埋め込まれていた。

その卵細胞と精細胞が誰のコピーなのかは不明だ。


そう、性別が存在している。

となると、性欲も・・とはいかない。

これは電脳の内部で制御できていない部分だ。

戦闘に不要な機能は、出資もされず研究が進んでいない。


逆に食欲の方は味覚感知能力の向上につれて

研究が進み、パイロの元の新機種では

設定した一定時間で空腹感が生じるほどの

機能が確立されていた。



 「パイロもシヴァ様もずるいのです!

  皮下脂肪を任意で燃やす能力は

  カーラにこそ必要なのです!」


パティシエの街の神殿の奥で

パイロとシヴァが全身に青い炎を纏っている。

神気の炎で体内の脂肪も燃やせるようだ。


何その能力!作者も欲しいんですけど。。


 「そんなこと言われても、あたいも

  シヴァ様に教えてもらわなかったら

  これは流石に出来なかったっしょ。


  カーラも練習するといいっしょ。」


 「無理すぎるのです。

  そんな風に体を燃やそうものなら

  ホルモン焼き並みに炎が上がって

  網に焦げ付くのです。」


 「いや、何を燃やそうとしてるのだ?

  そもそもその腹は鍛錬が足りぬからだと

  言っておろう!

  行くぞ、カーラ。」


 「いやなのです、師匠。

  このケーキの後の紅茶が脂肪分を

  完全に燃やしてくれるのです。

  欠かせないのです。」


 「そんなもので完全燃焼出来るものか!

  鍛錬あるのみだ!

  まず、そのパウンドケーキをテーブルに戻せ!

  いつまで食べておるのだ!行くぞ!」


悲鳴と共にカーラがブリュンヒルド師匠に

連れられて神殿裏に行ってしまった。


 「いつ見てもお二人のその姿は神々しいですね。

  熱くないのですか?紅茶入りました。」


紅茶を持ってきた蓮が結跏趺坐の姿勢で

燃える二人を見てそう声をかけた。


 「うむ、今日はこのくらいで。」


 「お肌にもいい感じで、

  磨きがかかった感じっしょ。」


 「いーなーその力。

  私も欲しいです。」


 「いや、蓮さん全然脂肪ついてないっしょ?

  それ以上痩せる必要ないっしょ?」


 「ううん、私は基本ベジタリアンだから

  どちらかというお肌がかさつくのを

  何とかしたいの。

  その艶々のお肌が羨ましいわ。」


 「これきっと試作ケーキとかの試食で

  クリーム類食べ過ぎな感じなんで

  そのせいっしょ。」


 「パイロ、紅茶を頂いたら

  精霊と精神統一の鍛錬をするぞえ。」


 「うん、分かったよ。

  でもいいタイミングで精霊さん達

  帰って来てくれてありがたいっしょ。」


パイロとシヴァは精霊と同化する精神統一の

鍛錬で心の澱みを払い、内面からの美化に

励んでいるようだ。


 「うん、それも普通の人間には出来ないわ。

  普通ならそのまま向こうに行って

  帰って来れなくなるって

  ブリュンヒルドさんが言っていたわ。」



街には新しく各種族の貴族の屋敷が立ち並んでいる。

その中の立派なお屋敷の中では、

魔族の元王城でメイド長をしていたご婦人が

マナー教室を開催している。

女王カミュールも苦手とする元メイド長だそうだ。


 「なんですか、その所作は!

  カミュール様、そこはこうです!」


今はテーブルの上で食事のマナーを叩き込まれていた。

勝手気ままにマナーを蔑ろにしてきたカミュールも

横に座るサラとカイと共に厳しい指導を受けている。


たまたま街の屋台で買ったホルモン焼きの串を

豪快に歩き食べしている時に、この元メイド長に出会ったのが

運の尽きだったようだ。


その場からすごい力で屋敷まで連行され、

そのまま女王としてどこに出しても恥ずかしくないように

一からマナーを叩き込まれることになっていた。


運悪く、カミュールと一緒に食べ歩きしていたサラも、

串をたくさん買って手に持っていただけのカイも

食べ歩きは持ってのほか、買ったものも器に入れて持ち帰るくらい

当然でしょうと叱責され、ここに至っている。


最初は死んだ魚の目をしていた3人であったが、

服の着こなし、歩き方、食事の作法と進むにつれて

今までにない自分を磨くいい機会かもと思い、

真剣に取り組み始めている。


大陸一美女を決めるコンテストのことは当然、

この元メイド長、マインも知っており、

カミュールは当然こちらで大陸一を目指すこととして

武道の世界大会はキャンセルさせられていた。


本人もセブンが審査員につくと聞いて

サラの方を見やり、勝った方がセブンをもらうという

妙な賭けを持ちかけられ、サラも引くに引けなくなって

受けてしまった次第だ。


 「マイン先生の指導は正確で自分の未熟さが

  身にしみて分かります。」


カイはこの世界ならではの作法や着こなしの指導を受けて

目を輝かせながら習得に励んでいる。

カミュールから見ても、この数日でカイの女子力が

格段に上がったと思える程だ。


 (案外カイのような純粋な女の方がセブンを

  落とせるのやも知れぬな。

  負けるわけにはいかんな。)





大陸中の街で同じように磨きをかけているものが増えている。

美女が増えれば、よからぬ事をする輩も増えてくる。


薄暗い人族の港街の裏手で、十数人の美女達が涙を流していた。

肌が綺麗になるエステのようなものだと称して

怪しげな薬を嗅がせて気を失わせ、拐われてきた娘達だ。


 「いつまでピーピーピーピー泣いてやがんだ!

  ほらさっさと立て!あの船に乗り込みやがれ!」


どうやら娘達はこの港街から船でどこかに連れて行かれるようだ。

娘達の瞳が絶望の色で黒く染まった時、

娘達の影から何かが飛び出してきた。


 「なんだテメェ!魔族かっ!」


ふわりと空に浮かぶ相手を見て人攫いの男は

魔法を打とうと火魔法の魔石のついた杖を差し向けた。


ボッ!という音と共に赤く燃える火球が空に浮かぶものに

飛んで行った。


空に浮かぶものはニヤリと笑うとその火球を避けずに

口を開けて吸い込むように飲み込んでしまった。


 「この程度の火球では腹は満たせぬな。

  君の魂で腹を満たさせてもらおうか。」


そんな恐ろしいこと空に浮かぶ男が口にした次の瞬間、

人攫いの男はその場に倒れ込んで動かなくなった。


 「うむ、やはり悪人の魂ほどうまいものはない。

  そこの娘達よ、私は君たちのような善人に興味はない。

  どこにでも行くが良い。」


硬直していた娘達は助かったことを知ると、

男の体をわざわざ踏み締めてから路地の先へ逃げ出し始めた。


路地の角には同じような姿で倒れている男達の姿があったが、

娘達はそのもの達に一瞥も向けず、逃げていった。


 「ふむ、これだけ上質な悪人の魂を食らえば、

  私の力もまた上がっていよう。

  だが、まだまだ足りぬな、もっとだ。

  幸いこの大陸は悪人が多くいる。

  大会までにもっと食らわねば。」


ルシファーはそう言って黒い翼を翻すと、

その身はそこにいなかった如く消えてしまっていた。


好物の悪人の魂を喰らい、己の力に変えているようだ。

結果として善行を重ねていることに気づかぬままに。

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