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研鑽するものたち

ここは東のダンジョン。

視覚認識を惑わす木の魔物が多く出没する。

ここで研鑽を積む者達がいる。


両目を閉じて片手剣を持ち、

器用に木立の間を歩きながら

時折気合を発することなく、

木の魔物を倒し続けている。


 「今のも遅かった。

  もっと早く気付いて

  動けるようにならないと。」


心眼の能力に磨きをかけているようだ。




そこから離れたところでは弓を手にした者がいた。

目は開いているが、目の前を見ている感じではない。

どこか遠くを見通しているような不思議な目線をしていた。


 シュッ!


不意に矢を放った。

いつの間に弓を引いたのかもわからない速さであった。

いや、わからないのは放たれた矢の動きだ。

木立の間を誘導ミサイルの如くうねりながら飛んでいる。


 サクッ!


木の枝にしか見えない木の蛇の頭を見事に打ち抜いていた。


 「うーん、今の矢の流し方はもう一つだな。

  もう少し早く到達できるはずだ。


  もう一度だ。」


この者は耳が特徴的な森人族のようだ。

どうやら意識を飛ばして、森の中にいる獲物を探し出し、

そこに向けて矢を風魔法で操作して打ち込んでいるようだ。




北のダンジョンには氷系の魔法を放つ霊体系の魔物が

多く出没する。

彼らには物理攻撃が通用しないため、魔法を得意する者達が

戦いを挑んでいる。

放ってくる氷の刃を火や風の魔法で防ぎ、

回復魔法やポーションをぶつけて倒すという戦法だ。

中にはひたすら防御に徹するものもいる。

最小限度の火の魔法を拳に纏わせて叩き落しまくっている。

立ち耳がかっこいい狼人族のようだ。


 「そこだ!」


そう叫ぶとブレスレッドが嵌っている左手で

髑髏の魔物を殴りつけた。

少し後ろに殴り飛ばされた魔物は

少しして小さな光の粒子となって消えていった。


 「まだ浅かったか。

  次だ。」


どうやら左手のブレスレッドは

回復系の魔法アイテムのようだ。




そのダンジョンの奥の階層で

燃える剣を手にした赤い龍人族の戦士がいた。


魔石を切らない限り倒せない雪だるまの集団攻撃を

凄まじい剣戟で凌ぎ、打ち倒している。


 「クッ!」


右の脇腹に氷の礫が直撃していた。

120体以上の魔物を倒していたが、

最後の最後で一撃入れられたようだ。


 「まだ甘いな。

  時間もかかり過ぎている。

  もう一度入り口に戻ってやり直しだ。」


どうやらこの階層までのタイムアタックをしているようだ。




その階層の奥で巨大な剣を振るう大男がいた。


  「ふんっ!」


雷撃を纏った大剣を振り回しながら、

樹氷群からの猛攻を凌いでいる。

人族の騎士団長テュールであった。


鬼気迫る眼光を放ちながら、

ひたすら氷の針を叩き落としている。

この攻撃は6時間ほどで一度止まる。

そこまで耐え続けるつもりのようだ。


セブンでも防ぎ切れなかった

殺意を感じない攻撃を見事に防ぎ切っている。


 「ふぅー。

  小休止か。


  よし、さらに負荷をかけるとするか。」


何と全身に纏っているのは防寒具ではなく、

魔鉛石という魔力を含んだ、

とてつもなく重い石で作られた鎧だったようだ。

そこにさらに魔石のプレートを載せていく。

重量挙げの選手が限界のその先を目指しているかのようだ。

もはや、人族の力で耐えられる重さではない。

テュールらしい人外の鍛錬法のようだ。




西のダンジョンはこの世界では珍しい機械の兵士が出没する。


その硬い機械の兵士に素手で挑むものがいる。

炎を拳に纏わせて猫耳を揺らしながら

機械の兵士を殴り倒し続けている。

ネコ獣人族の戦士、ファーラだ。


そこから少し離れた場所で腕組みをして

険しい顔をしているのはフェイズだ。


 「ファーラ!

  今のも打撃点がずれていたぞ!

  もっと集中して相手の動きを見極めろ!

  そんなことでは戦場で死ぬぞ!

  気を抜くな!!」


 「はいっ!!」


大声でゲキを飛ばされても、

すぐに大声で返事ができるくらいの余裕がまだあるようだ。

どうやら彼女は美女コンテストではなく世界大会に出るようだ。

この戦い方からすると、接近戦の剣の部か、

何でもありの総合の部になるだろう。


出るからには勝て、と言ってフェイズの指導の元で

鍛錬をしているようだ。

あまりの戦闘の激しさに周りには冒険者の姿はない。

フェイズの背中から近寄るなというオーラが

立ち上っているからかもしれない。



その奥の階層では、まず普通の剣では歯が立たない

高強度のミスリルゴーレムの軍団がいる。

連中はミスリルに魔力を通すことでさらに硬さを上げて

さらに加速もして破壊力を増した攻撃をしてくるため

かなりの冒険者が犠牲になっている。


倒した時の高額の素材が魅力的過ぎて

己の実力も考えずに挑むものが後を立たないからだ。


そのゴーレムを殴っているものがいる。

・・・おかしい。殴ろうという思考も、

その絵面もおかしい。

その者は笑いながら殴っているのだ。

獣王ドゥルガーだ。


彼女の拳は何で出来ているのだろうか?

ファーラのような炎を纏わせている風でもない。

・・・気にしない方が良さそうだ。

楽しそうに戦っているので

そっとしておいてあげましょう。


後ろではお付きの者達がせっせとミスリルゴーレムを

運ぶ作業に追われている。

国の財源に回すのだそうだ。




南のダンジョンには世界樹の森から入り込んだ

ヒクイドリや狼系の魔物が大型化して群れをなしている。


大型のヒクイドリに挑むものがいた。

森人族の族長グランだ。


無殺気の獄炎を浴びせられると命を落としかねない、

厄介な相手だ。慎重に移動しながら、

気配の探り合いをしている。

先に見つけた方が勝つ戦いのようだ。


連日ダンジョンに潜るようになって

生命感知能力が高まっていると実感していた。


 「いた、終わりだ。

  お前も皆の糧になってもらうぞ。」


シュッ!


いつの間にか肩にかけていた弓を手に持って

矢を放っていた。

矢はほぼ真っ直ぐ上に上がると急激に角度を変えて

さらに加速をして目標に向かっていった。


ザクッ!


木立の中に潜んでいたワイバーンよりも

大型のヒクイドリの後頭部に矢が突き立ち、

グァっという叫びを放つと地表に落下してきた。


見事なナイフ捌きで見る見るうちに解体し、

腰につけたポーチのような物にかざした。


すると切り分けられた肉類と一緒に羽毛類も

消えていった。アイテムボックスのような

空間魔法のかけられた魔道具のようだ。


自らの鍛錬と集落への土産もできる一石二鳥の

美味しいダンジョンだ。




その奥の階層には黒で統一された服装の男達がいた。

炎を纏い、集団で襲いかかってくる炎狼がいるエリアだ。

この数日で炎狼が進化した魔獣が出没するようになっていた。


上位の冒険者でも倒せない相手らしく、

ギルドには高難度の依頼として貼り出されている。


その進化種の一つ、光の炎のようなものを纏う

残像が目に焼き付く光炎狼の相手をしているのは

黒い龍人族の戦士長のベンゼルだ。黒い甲冑を纏い、

巨大な双刃の斧がついたハルバードを振るっている。


振るった先の挙動が残像が残るような感じになっている。

どうも一撃ではなく何度か往復して斬っているようだ。


そのバイブレーションのような動きで

光炎狼の体内にある魔石を斬り潰しているようだ。

倒されると弱い光を放つ小さな粒子となって消えてゆく。


数百匹に及ぶ群れと対峙しながら、微動だにせず

倒し続けている。



そこから離れたところでは、

黒い靄を纏った影炎狼という種類の群れがいた。

その群れには場違いな飾り襟のついた黒いコートを

羽織った頭に小さな巻きツノがついた男が対峙していた。

黒い手袋をつけた右手を上げて

人差し指だけを突き立てると、

影炎狼の体の中から黒いトゲが無数に飛び出してきて、

弱々しい光の粒子となって消えていく。


それを見た他の狼は、すっと自身の影の中に消えていく。


 「ほぅ、そうくるのか。

  面白い、この私と闇の中で戦おうとは。

  よろしい、その手に乗ろうではないか。」


少し笑みを浮かべつつ、その男、メフィストも

自身の影の中に沈んでいく。


 「これはいい。

  楽しませて貰おうか。」


闇の中で影となった狼達は、影を合わせて集合体となり、

巨大な狼の姿の影となってメフィストに襲いかかってきた。

その大きさはフェンリルより少し小さいくらいの小山サイズだ。


当然破壊力も上がっているが、俊敏性も上がっているようだ。

メフィストの放つ、体の中からのトゲの攻撃をかわし続けている。


 「古来より闇を撃つのは光とされるが、

  私はあえて闇の力でお前達を屠るとしよう。

 

  影よりも闇の方が深く、より暗いと知るがいい。」


そう言い放つと、吸い込まれそうな闇が真っ直ぐに

狼達の体に向かって走り、切り裂いていた。

切り裂かれた影炎狼の影の体は、その闇の刃の中に

吸い込まれるように消えていくのだった。


 「ほぅ、これを見ても怯まぬか。

  その戦意の高さには敬意を示そう。


  来るがいい、最高の切れ味を振るわせて頂こう。」


いつの間にかメフィストの周りを囲むように、

影炎狼の群れが沸き起こっていた。


メフィストは闇の刃を奮い続け、

やがて殲滅を確認すると、胸に手を当てて、

片足を後ろに引きながら綺麗な礼をして

その場から消えていった。


 「ふむ、やるものだな、彼も。

  あれは闇の次元を切る刃か。

  面白い、彼とは是非とも手合わせ願いたいものだ。」


闇より黒いマントを羽織ったハーデスが

そう言ってその場から消えると、

ふんっと鼻を鳴らして黒い羽の男も姿を消していった。

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