一線を越えしもの
電脳兵のセブンは魔物討伐の依頼を受け、
サンドワームとの戦闘を開始していた。
「卜伝さんの光の刃はいいよな。
俺もできるようになれるといいんだけど。
・・・周りに人はいないし、練習台になって
もらおうかな。悪いな、サンドちゃん。」
(卜伝さんの話はメモリーに永久保存かけてるけど、
出来るかな、俺に。
もう一度じっくりと聞いてみるか。)
『刀で斬れるのは刃先3寸、
これは間違いない。じゃがな、
それは直接斬るのであれば ということじゃ。
刀を振るうと生じる刃の切れ味、力じゃな。
それを離れた相手に叩きつけるように放つのじゃ。
当たる頃合いでもう一押しの力を伝え、
押し切るような刃を解き放つのじゃ。
これは言われて出来るものではないのじゃ。
頭ではなく、己の体で覚えるものじゃ。
古臭いと言われようが、こればかりは
鍛錬のみとしか言えんのじゃ。
あのような刀が通らぬ硬い体の魔物であっても、
この力の刃であれば斬れるのじゃ、
いや、斬らねばならん。
そのために鍛錬を重ねておるのじゃ。
この技は間違いなく己の体と心で放つものじゃ。
刀は直接斬り合えば、すぐに切れ味が落ちるものじゃ。
じゃが、この力の刃は己の身一つで放てるもの、
切れ味は己次第なのじゃ。
お前さんは基本は出来ておる、あとは己の体に
この技を覚えさせるまでじゃよ。
そうじゃな、お前さんなら居合抜きの要領で
鍛錬してみるのが良いかもしれぬ。」
(居合抜きか、やってみるか。)
セブンは荒れ狂うサンドワームから少し離れて、
右腕のスペースチタンブレードを左の腰のあたりに
ブレードの背を当てると、腰を少し落とし、
タメを作り始めた。
無の境地の心で精神集中を高めていく。
届かない、いや、これではない。
そう感じたセブンは一度軽く居合抜きのイメージで
ブレードを振って仕切り直すことにした。
今度はさらにサンドワームから離れて、
磁鉄鉱の砂の上に正座をし、右腕のブレードを
先ほどと同じ左の腰のあたりに据えた。
視覚センサーを落とし、黙想の状態からためを作り始めた。
これも違う、そう思うと同時に、セブンは正座の姿勢を崩し、
足を組んで結跏趺坐の体勢になった。
さらに集中を高め、体内のチャクラを意識して回し始めた。
セブンの頭の周りに神気が少しずつ溢れて
頭の後ろで後光のように輪を描いて回り始めた。
(見える!いや、刃が放てる!)
ブレードの周りにも神気が渦を巻いて絡みついていた。
(これだ!これを放つんだ!
むんっ!!)
座禅を組んだ姿勢のままでセブンは、
ブレードを見にも止まらぬ速さで振ったようだ。
振り抜く時にセブンは頭の後ろの神気も
ブレードに込めて、同時に押し出すイメージで
やってみたのだった。
ズルッ!
と言う嫌な音がしたと思ったら、
サンドワームの体が上下に分かれていったのだった。
(まだまだだな、これでは実戦で使えない。
もっと鍛錬を積み上げないと。)
意外にもセブンはあっさり一線を越えて
力の刃を放ってしまった。
普通の人の一線を越えたようだ。
いや、とっくに人ではなくなっているので
っここであれば、メタルゴーレムの一線を
越えた存在になったと言えるだろう。
それからしばらくの間、セブンは
この北の砂漠地帯一帯の魔物を狩り続けていた。
ギルドに持ち込んだ素材が武器の店に
大量に出回ることになり、冒険者たちの生還率アップの
効果に寄与していたのだった。
「むんっ!」
直立した体勢から抜刀する勢いでブレードを振り抜き、
キラキラと煌く光の刃を放ち、サンドワームをあっさりと
上下に切り分けた。
(うん、いい感じだ。普通の姿勢からでも
放てるようになってきたな。
でも、まだ押し込むような力を加えて、
力の刃の後押しが出来ていない。
まだまだ未熟だな。
頑張るとするか。)
拠点に戻らず鍛錬という名の討伐をやり続けるセブンの姿は、
時間を忘れて友達たちと遊び回る子供のように見えた。
その頃、拠点では少し込め髪がひくついているサラの姿があった。
何となく背筋に冷たいものが流れる気がするセブンであった。




